障害者雇用の業務切り出し方法
- 公開日:
- 2025.03.17
- 最終更新日:
- 2025.04.23

障害者雇用で考えなければならないのが業務の切り出しです。障がいのある方を採用しようと思っても「任せる仕事がない」「どう業務を切り出していいかわからない」という方は多くいらっしゃいます。
そこで、本記事では障害者雇用における業務の切り出し方法について解説をしていきます。
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障害者雇用の業務切り出し手順
障害者雇用で業務を切り出す時の手順についてみていきましょう。
1.障がい者雇用も業務から考える
障がい者雇用の場合、法定雇用率達成のための人数重視の採用となり、雇用後に「業務と障がい特性があってない」「対応してもらう業務がない」といった問題が生じ、雇用後に休職や早期離職につながることが少なくありません。
そのため、まずは一般採用と同じように業務を先に決めてその業務に従事できるのはどのような人材か要件を定めるのが基本です。
「自社にとって必要な人材はどのような人か」「雇い入れた人にどんな業務を頼みたいか」を話し合い、障害者雇用で求められるスキルを洗い出していきます。
2.各部署に業務のヒアリングをおこなう
対象業務のある部署を選定します。
適した業務がなさそうか各部署にヒアリングを行い可能性を探っていきます。この時点で詳細に洗い出しする必要はありません。
3.割り振る業務を洗い出す
次に、割り振る業務を洗い出します。
このときに大切なのは、「障がい者に託す業務」として洗い出しを行うのではなく、「部署全体の業務」をしっかりと洗い出すことです。
それによって託したい業務や人手が足りていない業務がわかりますし、どれを頼めばいいのかもよりわかりやすくなります。
4.タスクを細かく分けて、見える化する
業務の洗い出しが終わったら、「しなければならないタスク」を細かく分けて、見える化しましょう。仕事においてはしばしばTODOリスト作成の重要さが唱えられますが、タスクの見える化は障がいを抱える人にとっても、そうではない人にとっても、非常に有用です。
なおこのときは、「書類業務」などのようにまとめるのではなく、
①日付順に並べる
②一度ファイリングする
③確認が必要な書類を確認して、各確認者に回す
④確認が終わったものを閉じる
⑤ファイルを棚に、種類別に入れていく
などのように細かく分けることが重要です。
5.マニュアルの作成
まったく知識がない人であっても読むだけで実践できるマニュアルを作成します。
マニュアルを作成しておくことで、障がい者従業員が業務で迷わず作業可能になったり、新人新人社員の育成工数削減にもなります。
また、社内業務全般の効率化にも繋がります。
業務切り出し後のポイント
ここからは、業務を切り出したあとのポイントについても解説をします。
指導者による丁寧な支援が不可欠
障がい者雇用では、丁寧な支援が必要不可欠です。
指導・支援を行うときは、「分かりやすく」「何度でも」「容易な言葉で」説明していく姿勢が求められます。
なお障がい者を5名以上雇用する事業者では障害者職業生活相談員を置くことになるので、相談員の手助けやアドバイスを受けるのもよいでしょう(糖該当資格は、資格認定講習を受けることで取得可能)。
分かりやすく明確な切り出し方で業務を依頼
業務の依頼はどのようなときでも、「わかりやすく、数字をもって、具体的に」行うことが求められます。障がい者雇用においては、特にこれが重要です。
「この仕事を早めに片付けて」などのような指示は、主観的な解釈を含みやすく、混乱も生じさせやすいものです。また、「今やっている仕事はどうすればいいの?」と考え込み、そこで業務の手が止まってしまう人もいるでしょう。
そのため、指示を切り出すときには「この仕事を明日の12時までに終わらせたいから、今の仕事をストップして、これにとりかかって」などのように具体的な指示を出すことが大切です。
コミュニケーションと面談を行う
数字などによる具体的な指示やこまめな作業確認と合わせて意識したいのが、「コミュニケーションと面談」です。
「何か困っていることはないか」「仕事面で難しいところはあるか」などを聞き出す機会を、定期的に設けましょう。
なお「人と話すのが難しい」という場合は、面談で直接接する人の人数を少人数とするなどの工夫を行います。
業務を切り出すときの注意点
ここまで、業務切り出しの流れについて解説してきました。
最後に、「業務切り出しの注意点」について解説します。
気を付けるべきところは、以下の5つです。
・障がいの程度や特性は人それぞれであると理解する
・業務タスクを可視化することは必須
・相談しやすい環境づくりを行うことも重要
一つずつ見ていきましょう。
障がいの程度や特性は人それぞれであると理解する
障がい者の雇用率は法定雇用率によってある程度数値化して計られますが、当然お一人おひとりの障がいの程度や特性は、数字のみによって決められるものではありません。身体・精神・知的でそれぞれ障がいの出方は違います
。また、たとえば同じ「身体障害者1級」であっても、「四肢にはなんら異常は認められないが、両方の視力の和が0.01以下(目の障がい)」である人もあれば、「両足が欠損(太腿の2分の1以上)している」という人もいます。
障がい者雇用を行うときは、「障がい者が働きやすいように配慮を」といわれますが、それぞれの障がいによって行うべき配慮が違うこと、それによって職場環境の整備が変わってくることは、しっかり押さえておかなければなりません。
業務タスクを可視化することは必須
業務のタスクを可視化することは、ほぼ必須です。このときには、下記の6つの項目で書き出していくとよいでしょう。
・業務のカテゴリー
・具体的な業務内容
・行う場所
・〆切
・優先度
・必要なマニュアルがどこに置いてあるか、迷った際の相談先
なおこれはスプレッドシートを利用すると非常に管理しやすくなります。社員がリアルタイムで更新することもできますし、見た目にもわかりやすく、「迷っている時間」「混乱による精神的負担」を大きく軽減できます。
相談しやすい環境づくりを行うことも重要
障がい者の離職率は、障がいを抱えていない人のそれに比べて、高いという統計結果があります。
厚生労働省の出したデータでは、「離職率は(業種によって異なるが15.0パーセント」というものがあります。
対して障がい者の1年後の離職率は、もっとも定着率が高い発達障がい者であっても28.5パーセント、もっとも低い精神障がい者の場合は50.7パーセントとなっています。
仕事のノウハウや知識を伝えてきた人に辞められてしまうと、そこにかけた人件費や時間がマイナスになってしまいます。また、障がい者雇用への理解や知識、経験の積み重ねにもなりにくくなります。早期の離職は、雇用される側にとっても雇用する事業所側にとっても、リスクが大きいものです。
そのため、「困ったことがあればすぐに相談できる環境」「分からない点があれば、何度でも聞ける環境」をしっかり作り、「離職させない職場」にしていくことが大切です。
出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」p1
まとめ
これまで障がい者雇用と業務の切り出しについて解説をしてきました。
障害者雇用において自社の業務を障がいのある方にどう切り出すかは多くの企業が悩まれる点ですが、手順に沿って細かくタスクを洗い出すことができれば、業務を創出できることは往々にしてあります。
任せる仕事がないという状態にならないためにも、今一度業務を洗い出してみてはいかがでしょうか。
衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。
サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。
