障がい者雇用のトラブル事例とは?トラブル理由や対処法、相談先を解説
- 公開日:
- 2026.01.30
- 最終更新日:
- 2026.02.06
「従業員の増加によって障がい者の雇用義務が生じたが、トラブルがおきないか心配」「障がい者雇用を前向きに検討しているが、気をつけるポイントを知りたい」といった悩みや心配を抱えている企業は多いでしょう。
今回は、障がい者を雇用した際に発生したトラブル事例を対処法と共に紹介します。
障がい者雇用のトラブル事例
障がい者を雇用してスムーズに働いてもらうためには、職場の環境を整えて従業員の理解を深めると同時に、障がい者を雇用した際に起こったトラブルの事例を把握しておくと役立ちます。
ここでは、障がい者雇用のトラブルの事例をいくつかご紹介します。

障がい者の症状が悪化した
就職をきっかけに「期待に応えなければ」「周囲に迷惑をかけてはいけない」と無理を重ねてしまい、結果として体調や症状が急に悪化してしまうケースは少なくありません。
最初は問題なく勤務できていたものの、ある時期を境に急に調子を崩し、遅刻や欠勤が増えていくことがあります。
中には、連絡のない遅刻や欠勤が続いた後、突然退職の意思を伝えてくるといった事例も見られます。
周囲からは、仕事に慣れてきた頃に気が緩んだ、あるいは怠けているように受け取られてしまうこともありますが、実際には障がい特性や体調の変化が背景にある場合も多いのです。
コミュニケーションがうまくいかない
障がいの特性によっては、自分の気持ちや考えを相手にうまく伝えられず、意思疎通が難しくなるケースがあります。また、その場の空気や相手の立場を踏まえた対応ができず、周囲との認識にズレが生じてしまうことも少なくありません。
職種によっては、こうしたコミュニケーションの行き違いが原因で、お客様とのトラブルに発展する場合もあります。また、上司に対して同僚と同じ感覚で接してしまったり、異性の同僚との距離感を誤り、行き過ぎた親しさを示してしまうケースも見受けられます。
そのため、職場によっては「どこまで仕事を任せてよいのか分からない」「指導の仕方に悩んでしまう」と、教育担当者が対応に苦慮することもあるでしょう。
教育担当者の通常業務に影響がでた
障がい者を職場で受け入れる際、教育担当者の負担が想定以上に大きくなり、通常業務に支障をきたすことがあります。
例えば、業務説明に時間がかかったり、繰り返しの指導が必要になったりするケースがあります。コミュニケーション方法の工夫や作業環境の調整など、個別配慮への対応にも多くの時間を要します。
特に人員に余裕のない職場では、教育担当者が通常業務と指導業務を同時に抱え込み、残業の増加や業務遅延が生じる場合があります。その結果、教育担当者自身の離職やモチベーションの低下につながり、さらに人手不足に陥るケースも考えられるでしょう。
合理的配慮の不足によって業務が停滞した
障がい特性に合わせた業務調整や環境整備がなされず、業務の遂行が困難になるケースがあります。
例えば、発達障がいのある従業員に対して、配慮のない伝え方をしたことで、本人が情報を処理しきれずに業務を遂行できないといったトラブルが発生することがあります。
会議や指示で一度に多くの情報を伝えるなど、障がい特性を考慮しない対応は、業務の停滞を招く要因となります。
人間関係の悪化・ハラスメントが発生した
障がいの特性や必要な配慮について職場内で適切に情報共有されていない場合、上司や同僚の無理解から偏見が生じ、本人が職場で孤立してしまうことがあります。
また、上司や同僚からの心ない言動やいじめ、身体的・精神的なハラスメントを受けるといった事例も報告されています。こうした人間関係の悪化は、障がい者本人の心身に大きな負担となり、離職につながる深刻な問題となります。
労働条件・待遇に対する不満が発生した
労働条件や待遇が合わず、不満が出たり、離職につながったりするケースがあります。
例えば、長年勤務し重要な立場を担っているにもかかわらず、雇用形態が嘱託のままであったり、昇給がなかったりするなどは、不当な賃金や待遇と判断される場合があります。
障がいの有無にかかわらず、適切な評価と待遇が提供されない場合、従業員のモチベーション低下や離職を招く原因となります。

障がい者雇用におけるトラブルの相談先一覧
障がい者雇用を進める上で生じる疑問やトラブルに対応するため、企業が活用できる公的な相談窓口について解説します。
▼相談窓口一覧はこちら
「障害者雇用の相談窓口はどこにある?企業と求職者向け別に解説」
ハローワーク
ハローワークでは、障がい者雇用における採用や定着、助成金に関して相談しやすい環境が整っており、トラブル相談も受け付けてもらえる可能性があります。
障がい者雇用に不慣れな企業の採用担当者にとって、最も身近で利用しやすい相談先の一つです。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障がい者雇用に関する専門的なサポートを受けられます。
事業主からの相談も幅広く受け付けており、障がい者の職場適応を促進するためのジョブコーチ(職場適応援助者)による支援など、具体的かつ実践的な解決策を提案してくれます。
トラブル対応を含め、継続的な雇用を実現したい企業にとって、心強い味方となってくれるでしょう。
障がい者雇用でトラブルが起こる理由とは?
ここからは、障がい者を雇用した際にトラブルが起こる理由を紹介します。障がい者を雇用する会社同様、雇用される障がい者もさまざまな不安を抱えています。トラブルが発生する理由がわかれば、対処法も立てやすくなるはずです。
障がい者が抱える不安が解消されない
障がい者雇用におけるトラブルの背景には、就労前後を通じて障がい者本人が抱える不安が十分に解消されていないことがあります。
不安を誰にも相談できず、無理を重ねてしまった結果、体調不良や精神的な負担が表面化し、遅刻・欠勤の増加やコミュニケーションの行き違いといったトラブルにつながることがあります。また、企業側が「問題が起きていない=不安はない」と判断してしまうと、支援や配慮のタイミングを逃してしまうこともあるでしょう。
障がい者本人の不安を早い段階で把握し、安心して相談できる環境を整えられていないことが、トラブル発生の一因となるのです。
賃金や労働に関する不満がある
障がい者の中には、賃金や労働に関する不満を抱えているケースもあります。例えば、「専門知識を活かせる職場に就職したのに、雑用ばかりやらされる」「別の業者に委託した農作業が業務だった」「同じ仕事をしているのに、健常者よりも給与が安い」といった事例もあります。
賃金や労働に不満があれば、離職率が高まりがちです。特に、障がいの程度が軽く、高いスキルを持っている方ほど賃金や労働条件に不満があったら改善を求めずに転職活動を検討する方もいるでしょう。
また、不満をうまく言葉にして職場の方々に伝えることができず、ストレスを貯めて仕事が続けられないケースもあります。
仕事内容が障がい特性に合っていない
会社によっては、法定雇用率を高めるために障がい者を雇用したものの、任せられる仕事を創出できず、比較的容易な仕事や会社の主要な業務には関係ない仕事に従事させるケースもあります。
障がい者の能力や特性に合っていない仕事を任せた結果、本人が業務をうまく遂行できずに困難を感じることもあるでしょう。障がい者によっては、かつては同種の仕事に就いて第一線で働いていた経験を持つ方もいます。
仕事に対して正当な評価をされなければ、仕事に対するモチベーションを失ってしまいます。
リソースが不足している
障がい者を職場で受け入れる際は、職場の環境を整えてサポートを行う人員を配置する必要があります。障がい者を雇用するにあたって、障がいへの理解を深めるための教育を実施するケースも多いでしょう。
しかし、教育や支援に十分な人材や費用、時間を割けない会社は珍しくありません。障がい者に仕事を覚えてもらい、障がいに配慮しつつスムーズに仕事をしてもらうには時間だけでなく経験も大切です。
会社の経営者がその点に理解が薄いと「健常な方の新人教育同様、数ヵ月で仕事を覚えさせてほしい」といった無茶な要求をすることもあります。リソースが不足していると、教育担当者の負担が大きすぎて離職やモチベーションの低下につながります。

障がい者雇用のトラブルを防ぐための対処法
最後に、障がい者雇用でトラブルを防ぐための対処法を紹介します。障がい者を雇用したものの早期離職に悩んでいる担当者の方にも参考になるはずです。

<この資料でわかること>
・障がい者雇用の基礎知識
・雇用が必要な障がい者人数の計算方法
・障がい者採用の流れとポイント
定期面談を実施して早期に不安を発見する
定期面談を通じて、就業上の不安がないかを確認することが重要です。日々のコミュニケーションを工夫することで、不安を早期に発見し解決につなげられます。
面談の頻度は1ヵ月に1回、5分程度で構いません。確認内容としては、本人の健康状態に問題がないか、業務上の不安がないかなどを丁寧にヒアリングします。こうした定期的なコミュニケーションにより、小さな問題が大きなトラブルに発展する前に対処することが可能になります。
障がい特性に合わせた対応方法を学ぶ
障がい者を雇用してトラブルを防ぐために最も重要なことは、障がいへの理解を深めることです。
一口に障がい者といっても「身体障がい」「知的障がい」「精神障がい」「発達障がい」などさまざまな種類があり、特性や1人ひとりの個性に応じて対応方法は異なります。
最も重要なのは、まず本人の困りごとや希望を丁寧にヒアリングすることです。本人の話を丁寧に聞くことで、必要な配慮や支援が明確になります。
特に「見えない障がい」への配慮が必要です。発達障がいや精神障がい、脳血管疾患による高次脳機能障がいなど、外見から分かりにくい障がいには特に注意が必要です。情報処理の苦手さ(情報過多でフリーズするなど)や感覚過敏など、特性に応じた具体的な配慮が求められます。
また、業務を「見える化」し、具体的な手順を示すことも効果的です。業務を細分化し、手順を明確にすることで、作業の円滑化が図れます。これは障がい者だけでなく、他の社員にとっても働きやすい環境づくりにつながります。
テレワークを導入する
テレワークを希望する障がい者の方は多くいます。通勤の負担が軽減されるだけでなく、自分に合った環境で働けることは、障がい者にとって大きなメリットとなります。
企業側にとっても、環境整備のためにオフィス改装をするには多くの予算が必要となるため、テレワークはコストを削減しつつ、障がい者の方に最適な環境を用意できる有効な選択肢です。
テレワーク環境を提供できる雇用形態としては、サテライトオフィス勤務も注目されています。サテライトオフィスでは、専門のスタッフが業務サポートやメンタルケア、勤怠管理を行うため、障がい者の方が長く働きやすいのも特徴です。
▼サテライトオフィスについて詳しくはこちら
「障がい者雇用向けサテライトオフィスとは?メリット、費用、おすすめサービスを紹介」
障がい者への教育はチームで対応する
障がい者雇用では、雇用後に丁寧な教育が必要です。一般的な社員の教育に実績が豊富な従業員でも、障がい者の方への教育は難しいケースもあるでしょう。障がい者への教育はチームで対応するのがおすすめです。
チームで対応すれば適切な対応を話し合って決められるだけでなく、誰か1人に責任が集中せずにすみます。1人に責任がかかってしまうと、負担が大きすぎて教育担当者の離職につながる恐れもあるでしょう。
また、だれか1人に障がい者教育の役割を任せきりにしてしまうと、障がい者が「その人でないと仕事の指示が受けられない」「その人が休みだと仕事がうまくいかない」といったことになるケースもあるでしょう。
必要ならば外部へ相談する
障がい者の雇用は、国や自治体が推進しています。そのため、地域によっては会社に対するサポートも手厚く、精神福祉士や社会福祉士などの相談サポートを受けられる仕組みが整っていることもあります。
また、民間企業の中にも障がい者雇用をサポートしてくれるところもあり、企業だけでは対応できない部分を担当してくれるところもあるでしょう。したがって、すべてを企業で対応しようとはせず、必要ならば外部に相談をし、サポートを依頼しましょう。
まとめ
本記事では、障がい者雇用を進める中で発生するトラブルについて解説しました。障がい者と健康な方が共に同じ職場でサポートしあいながら仕事をするのが理想です。
しかし、職場によっては障がい者への理解が進まなかったり仕事と障がいの特性とのマッチングがうまくいかなかったりするケースもあるでしょう。
障がい者雇用におけるトラブルが発生したら、放置せず可能な限り早く対応することが大切です。必要ならば外部からのサポートも受けましょう。そのほうが解決が早まることもあります。

この記事を書いた人
サンクスラボ編集部
サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。