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障害者トライアル雇用とは?メリット・デメリットや対象者・期間など詳しく解説

公開日:
2025.03.10
最終更新日:
2025.05.28

障がいのある方を初めて雇用する際、求職者だけでなく企業側にとっても不安を覚えやすいものです。

「障がいのある方を雇用しなければならないが、他の従業員とうまくやっていけるだろうか」「障がいのある方を雇用した結果、職務が滞るならば納付金を支払ったほうがメリットが大きいかもしれない」と考える経営者もいるかもしれません。

障害者雇用の不安を解消し、ミスマッチを防ぐために推奨されているのが「障害者トライアル雇用」です。本記事で、障害者トライアル雇用の概要や申請の流れ、利用するメリット・デメリットを解説します。

また、これから障害者雇用について知識を深めたい方のために入門向けの資料もご用意しています。基本的な障害者雇用の知識や採用のポイントについて知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

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内容

・障害者を雇用する準備
・募集の方法 / 応募が殺到する企業の特徴
・障害者を雇用する際の選考、面接のポイント
・入社後の定着率を向上させるポイント
・多くの企業がつまずいてしまう、「適性に応じた業務の切り出し」 「配属部門の負担増加」などへの対策法

開催日時

2025-06-06 (金) 11:00-11:45
2025-06-13 (金) 11:00-11:45
2025-06-18 (水) 11:00-11:45

おすすめの対象の方

  • 障がい者雇用に関わる担当者
  • 障がい者雇用がうまくいくポイントを知りたい方
  • 業務切り出しや定着率の向上などの対策方法に関心がある方

障がい者トライアル雇用とは?

障害者トライアル雇用とは、約3〜6ヵ月の間の試行雇用を通じて働きたい障がいのある方と企業の間で相互理解を深め、不安を解消して継続雇用を目指すことを目的とした制度です。

身体障がいのある方や知的障がいのある方は原則3ヵ月、精神障がい者は6ヵ月〜1年の間、試行雇用が可能です。

ここでは、障害者トライアル雇用の概要や対象者を紹介します。

障害者トライアル雇用の対象者は?

障害者トライアル雇用の対象者は、原則として以下のいずれかに該当する方です。

  1. 紹介日の時点で就労経験のない職業に就くことを希望している
  2. 紹介日の前日まで2年以内に2回以上転職している
  3. 紹介日の前日まで離職期間6ヵ月以上ある
  4. 重度身体障がい、重度知的障がい、精神障がいのいずれかに当てはまる方

なお、重度身体障がい、重度知的障がい、精神障がいのいずれかに当てはまるならば、1〜3の条件を満たしていなくてもトライアル雇用の対象になります。

    また、障害者雇用は障がいのある方手帳を持っている方が対象ですが、障害者トライアル雇用は障害者手帳を持っていなくても利用できる場合があります。

    対象者に当てはまるかどうかは、最寄りのハローワークの窓口で確認が可能です。障害者手帳を持っていないが、できることできないことの幅が大きく、就業に困難を抱えている方も利用できるのが大きな特長です。

    採用経路と雇用条件

    障害者トライアル雇用を実行してみたい企業は、ハローワークに「障がいのある方トライアル雇用の求人」を出します。民間の求人サイトも利用が可能です。ただし、民間の求人サイトでは対応が難しいところもあるので、求人を出したい場合は事前に問い合わせるとスムーズです。

    一方、トライアル雇用を利用したい障がいのある方の方は、ハローワークや民間の求人サイト経由で求人に申し込みが必要です。ハローワークは最寄りの施設のほか、インターネット経由でも利用が可能です。

    また、選考に関しては書類選考だけでなく必ず面接を受けて合否が決定されます。そのため、「トライアル雇用に申し込んだが、書類審査だけで断られた」といったことはありません。

    障害者トライアル雇用の期間

    トライアル雇用の期間は、障がいのある方と雇用側の話し合いで決められます。

    精神障がいのある方以外は原則3ヵ月まで、精神障がいのある方の場合は最長で1年までトライアル雇用が可能です。

    障害者雇用トライアル雇用と障害者短時間トライアル雇用の違い

    障害者トライアル雇用とは別に障害者短時間トライアル雇用があります。

    障害者短時間トライアル雇用は、長時間働くことが難しい精神障がいのある方や発達障がいのある方が週10以上20時間未満の就業からはじめ、6ヵ月〜1年の間に週20時間以上の就業を目指す制度です。

    障害者トライアル雇用は、原則として週20時間以上の就業が決まりです。身体障がいのある方および知的障がいのある方で、週20時間以上の就業が難しい場合はほかの方法を検討してください。

    ちなみに就業方法はテレワークでも認められています。そのため、「障がいの程度により毎日の出社は難しい」といった方も企業が認めてくれれば家でトライアル雇用が可能です。

    試用期間とトライアル雇用の違いは?

    トライアル雇用とよく似た制度で試用期間があります。試用期間は、入社が決まった方が実際に働いてみて仕事が合っているかどうか確認するための期間です。そのため、試用期間と名前はついているものの、雇用し続けることが前提です。

    そのため、「この仕事が向いていないのではないか」と企業側が思っても、よほどのことがなければ解雇は難しい場合もあります。

    一方、トライアル雇用は3ヵ月で1度雇用が終了します。その後、あらためて企業と求職者が雇用の継続について検討し、雇用継続を決める形です。平成28年度の調査では、利用者の雇用継続は86.1%となっています。試用期間と比べると雇用継続する割合は低めです。

    しかし、障がいのある方が就業する際は障がいの状態や職場の受け入れ態勢によって、雇用継続が難しくなるケースも健常者より高くなっています。無理して雇用を継続して体調が悪化し、結局退職することになれば、企業側も障がいのある方の雇用により慎重になるでしょう。

    トライアル雇用を利用すれば企業と求職中の障がいのある方との間でミスマッチが起こっても、最長で1年で雇用契約を終了できます。

    求職者は「まずは働いてみよう」と手軽にチャレンジでき、企業側は「障がいのある方が働きやすい環境が整っているか確かめたい」「自社の仕事がスムーズにできる障がいの種類や程度を知りたい」といった場合に役立ちます。

    障害者雇用トライアルで助成金が活用できる

    障害者トライアル雇用を利用すると以下のような助成金が利用できます。

    • 障がいのある方1人につき月額最大4万円の助成金を最長3年間支給
    • 精神障がいのある方を雇用した場合、最初の3ヵ月は最大8万円を支給、その後最長3ヵ月は最大4万円支給
    • 精神障がいのある方を雇用した場合、助成金の支給は最長6ヵ月

    助成金を利用すれば、「障がいのある方の雇用を前向きに検討したいが、資金に余裕がない」と悩む企業もチャレンジしやすくなるでしょう。

    障がいのある方トライアル雇用を利用する際の注意点

    ここでは、障害者雇用を利用する際に企業側が注意するポイントを紹介します。通常の求人と異なる点も多いので、確認したうえで求人を出してください。

    求人数を事前に定める必要がある

    障害者トライアル雇用を利用する場合、事前に求人数を定めておく必要があります。通常の求人のように「実際に求人をしたら思ったより応募が多く、受け入れ態勢も整ったので採用者を増やす」といったことはできません。

    トライアル雇用を利用する前に、自社に就業を希望している障がいのある方の人数を調査する、自社が受け入れられる人数を正確に把握する等の対策をしておくと、ミスマッチが起こりにくくなります。

    原則として面接が必須

    障害者トライアル雇用を実施する際は、原則として面接で選考を行います。「募集をかけたら思った以上に応募があったので、書類選考をして人数を絞りたい」といったことはできないので、注意しましょう。

    特に、小売りなど障がいのある方が比較的チャレンジしやすい職種、障がいのある方を雇用した実績が多い、障がいのある方が働く環境が整っているといった職場は応募者が多くなる傾向があります。

    また、地域によっては障がいのある方が働ける職場が少ないため、1つの求人に応募が殺到する可能性もあるでしょう。

    応募が多く見込まれる場合は、面接官を多くする、応募の条件をやや厳しめにするなど対処が必要です。また、面接回数を多くして応募者を絞っていく方法を検討してもいいでしょう。

    すでに障害者雇用枠で雇用している方をトライアル雇用に切り替えはできない

    すでに障害者雇用枠で働いている障がいのある方をトライアル雇用に切り替えることはできません。雇用契約を結んでいる従業員はもちろんのこと、通常の障害者雇用枠での求人に応募してきて内定を出した障がいのある方も対象になるので、注意しましょう。

    障がいのある方の雇用に関する取り組みは、短期間で新しい制度ができたり現在の制度が変わったりします。障害者雇用を検討している企業は、常に最新情報をチェックしておきましょう。

    助成金には申請期限がある

    障害者トライアル雇用を利用して助成金を申請する場合、申請期限は雇用終了日の翌日から2ヵ月以内です。また、助成金は障がいのある方が出勤した日数によって変動するため、雇用中は申請できません。

    トライアル雇用が終わり、雇用を継続しない場合でも助成金は受け取れます。ただし、申請期限を過ぎた場合は受給資格を失うので、トライアル雇用期間が終わったら、すぐに申請をしてください。

    障害者トライアル雇用のメリット

    障害者トライアル雇用のメリットには、以下のようなものが挙げられます。

    • 障がいのある方が職場や仕事に合っているか適性が見極められる
    • 障がいのある方が働きやすいように職場環境を整えられる
    • 助成金を利用できる
    • 従業員の障がいに対する理解を深められる

    一口に障がいといっても人によって程度は異なります。肢体が不自由であったり目や耳に障がいがあったりするなど分かりやすい障がいがある一方で、発達障がいや精神障がいなど見ただけでは分からない障がいを抱えた方もたくさんいます。

    また、少し工夫すれば健常者と同じように働ける方もいれば、どうしても特定の仕事ができない方もいるでしょう。

    トライアル雇用を利用すれば、障がいのある方が働きやすい環境を整えられるだけでなく働いている従業員が障がいに対する理解を深められます。障がいの程度にもよりますが、従業員の理解があれば働きやすさが格段にあがります。

    通常の障がいのある方雇用の場合、「働きやすいように試行錯誤をしているうちに軋轢が生じ、結局障がいのある方が退職してしまった」といったケースもあるでしょう。トライアル雇用を利用すれば、「とりあえずできることをやってみよう、その結果で雇用が続けられるか判断しよう」と考えることもできます。

    障がいのある方を雇用するハードルが下がれば、経験を重ねることで障がいのある方が働きやすい職場が整っていきます。

    障害者トライアル雇用のデメリット

    一方、障害者トライアル雇用のデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

    • 受け入れる企業側の余裕が重要
    • 人的リソースが必要

    特に、はじめて障がいのある方を雇用する場合は、受け入れる側の企業に時間と人手の余裕が必要です。障がいのある方とコミュニケーションをとり働き方をすり合わせたくても、仕事をするので手いっぱいならば、雇用継続が難しくなるでしょう。

    また、「手の空いている人が障がいのある方に仕事を教えて」といった受け入れ態勢では責任の所在が分からず、障がいのある方とのコミュニケーションがうまくいかなくなる可能性もあります。トライアル雇用であっても、障がいのある方に仕事を教え、職場の環境を整えるチームを組み、対応しましょう。

    トライアル雇用を成功させるには、受け入れる時期も重要です。繁忙期と通常期の差が激しい職場の場合、可能な限り通常期に実施するなどの工夫が必要です。

    トライアル雇用の流れ

    トライアル雇用の基本的な流れは、以下のとおりです。

    1. ハローワークで求人票の提出
    2. 求職者の面接選考
    3. 障がいのある方トライアル雇用開始
    4. 実施計画書の提出
    5. 助成金の「支給申請書」の提出

    基本的な雇用までの流れは一般的な求人と同じです。今までハローワークを利用してこなかった企業は、まず窓口で「事業者登録」を行いましょう。トライアル雇用が2回目以降の場合は、インターネット上で手続きができるところもあります。

    トライアル雇用独自の手続きは、実施計画書の提出と助成金の「支給申請書」の提出です。

    実施計画書とは、「障害者トライアル雇用」を開始した日から2週間以内に、雇用契約書などの労働条件が確認できる書類を添付して、求人を行った機関に提出します。ハローワーク以外にも提出が必要なので注意してください。

    なお、トライアル雇用の結果雇用継続につながらなかったからといって、ペナルティはありません。助成金の申請だけは忘れないようにしてください。

    まとめ

    障害者トライアル雇用を利用すれば、通常の雇用とは異なり、雇用期間に期限はありますが、雇用継続につながる可能性も高い制度です。また、障がいのある方を初めて雇用する企業は、ミスマッチを防ぎ、障がいのある方が働きやすい環境を整えるうえでも有効な制度です。

    また、障がいのある方から見ても、就業のハードルが下げられて前向きな気持ちで応募できます。可能ならば、利用を検討してみましょう。

    この記事を書いた人

    サンクスラボ編集部

    サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。

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