障害者トライアル雇用で活用できる助成金は?注意点も解説!
- 公開日:
- 2025.12.26
- 最終更新日:
- 2026.02.06
障がいのある方を初めて雇用する際、求職者だけでなく企業側も不安を覚えやすいものです。
「障がいのある方を雇用しなければならないが、他の従業員とうまくやっていけるだろうか」「障がいのある方を雇用した結果、職務が滞るならば納付金を支払ったほうがメリットが大きいかもしれない」と考える経営者もいるかもしれません。
障がい者雇用の不安を解消し、ミスマッチを防ぐために推奨されているのが「障害者トライアル雇用」です。今回は、その申請の流れ、利用するメリット・デメリットを解説します。
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<この資料でわかること>
・障がい者雇用の助成金の種類
・申請しやすい助成金
・助成金の申請方法と手順
障害者トライアル雇用とは?
障害者トライアル雇用とは、ハローワークが企業と障害のある求職者をマッチングし、約3~6ヵ月間の試行雇用を通じて本採用につなげる仕組みのことをいいます。働きたい障がいのある方と企業の間で相互理解を深め、不安を解消して継続雇用を目指すことが目的です。
身体障がいのある方や知的障がいのある方は原則3ヵ月間、精神障がいのある方は6ヵ月間から1年の間、試行雇用が可能です。労働局へ申請をすれば、助成金も受けられます。

ここでは、障害者トライアル雇用の概要や対象者を紹介します。
出典:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」
対象者
障害者トライアル雇用の対象者は、原則として以下のいずれかに該当する方です。
1.紹介日の時点で就労経験のない職業に就くことを希望している
2.紹介日の前日まで2年以内に2回以上転職している
3.紹介日の前日まで離職期間6ヵ月以上ある
4.重度身体障がい、重度知的障がい、精神障がいのいずれかに当てはまる方
なお、重度身体障がい、重度知的障がい、精神障がいのいずれかに当てはまるならば、1~3の条件を満たしていなくてもトライアル雇用の対象になります。
また、障がい者雇用は障がい者手帳を持っている方が対象ですが、障害者トライアル雇用は障がい者手帳を持っていなくても利用できる場合があります。
対象者に当てはまるかどうかは、最寄りのハローワークで確認できます。障がい者手帳を持っていないが、できることできないことの幅が大きく、就業に困難を抱えている方も利用できるのが大きな特長です。
雇入れの条件
障害者トライアル雇用制度を利用し、助成金を受給するためには、以下の2つの条件を満たす障がい者を雇い入れる必要があります。
1.ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
2.障害者トライアル雇用などの期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
この制度は、あくまでハローワークなど公的な機関を通じた紹介による採用に限定される点に注意が必要です。
雇用期間
トライアル雇用の期間は、障がいのある方と雇用側の話し合いで決められます。
精神障がいのある方以外は原則3ヵ月間、精神障がいのある方の場合は原則6ヵ月間から最長1年までトライアル雇用が可能です。

障害者トライアル雇用と障害者短時間トライアル雇用の違い
障害者トライアル雇用とは別に障害者短時間トライアル雇用があります。
障害者短時間トライアル雇用は、長時間働くことが難しい精神障がいのある方や発達障がいのある方が週10以上20時間未満の就業からはじめ、6ヵ月間から1年の間に週20時間以上の就業を目指す制度です。
障害者トライアル雇用は、原則として週20時間以上の就業が決まりです。身体障がいのある方および知的障がいのある方で、週20時間以上の就業が難しい場合は他の方法を検討してください。
ちなみに就業方法はテレワークでも認められています。そのため、「障がいの程度により毎日の出社は難しい」といった方も企業が認めてくれれば家でトライアル雇用が可能です。

障害者トライアル雇用で活用できる助成金
障害者トライアル雇用では、「障害者トライアル雇用奨励金」の支給を受けることができます。
ここでは、支給を受けるための要件と金額について具体的に紹介します。
・障がいのある方1人につき月額最大4万円の助成金を最長3ヵ月間支給
・精神障がいのある方を雇用した場合、最初の3ヵ月間は最大8万円を支給、その後最長3ヵ月間は最大4万円支給
・精神障がいのある方を雇用した場合、助成金の支給は最長6ヵ月間
支給対象となる事業者
障害者トライアル雇用奨励金の支給対象となる事業主は、主に以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
1.雇用保険の適用事業所の事業主であること
雇用保険の被保険者が存在する事業所の事業主であることが求められます。
2.支給のための審査に全面的に協力すること
具体的には、支給または不支給の決定に必要な書類を適切に整備・保管していること、管轄の労働局などから求められた場合にこれらの書類を速やかに提出できること、さらに労働局などの実地調査を適切に受け入れることなどが含まれます。
3.定められた申請期間内に確実に申請を行うこと
基本的な要件に加え、労働保険料の滞納がないことや、過去に雇用関係の助成金について不正受給の処分を受けていないことなど、より詳細な要件も定められています。
詳しい要件については、厚生労働省の「障害者トライアル雇用奨励金支給対象事業主要件票」などの資料で確認できます。
助成額
障害者トライアル雇用奨励金の助成額は、対象となる労働者の区分によって異なります。
一般的な障害者トライアル雇用の対象者を雇い入れた場合、対象者1人当たり、月額最大4万円が支給されます。
期間は、トライアル雇用を開始した日から最長3ヵ月間となります。
精神障がいのある方を雇い入れる場合は、助成額が増額されます。精神障がいのある方のトライアル雇用は原則6~12ヵ月間設けることができますが、助成金の支給対象期間は最長6ヵ月間です。
この期間のうち、最初の3ヵ月間は月額最大8万円、その後の3ヵ月間は月額最大4万円の助成を受けることが可能です。これは、精神障がいのある方の職場適応にはより時間を要することを考慮した支援策といえます。
出典:厚生労働省「「障害者トライアル雇用」のご案内」
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障害者トライアル雇用で活用できる助成金の申請期限
障害者トライアル雇用を利用して助成金を申請する場合、申請期限は雇用終了日の翌日から2ヵ月以内です。また、助成金は障がいのある方が出勤した日数によって変動するため、雇用中は申請できません。
トライアル雇用が終わり、雇用を継続しない場合でも助成金は受け取れます。ただし、申請期限を過ぎた場合は受給資格を失うので、トライアル雇用期間が終わったら、すぐに申請をしてください。
障害者トライアル雇用のメリット
障害者トライアル雇用のメリットには、以下のようなものがあげられます。
・障がいのある方が職場や仕事に合っているか適性が見極められる
・障がいのある方が働きやすいように職場環境を整えられる
・助成金を利用できる
・従業員の障がいに対する理解を深められる
トライアル雇用を利用すれば、障がいのある方が働きやすい環境を整えられるだけでなく、既存の従業員が障がいに対する理解を深められます。障がいの程度にもよりますが、従業員の理解があれば働きやすさが格段に向上します。
通常の障がい者雇用の場合、「働きやすいように試行錯誤をしているうちに軋轢が生じ、結局障がいのある方が退職してしまった」といったケースもあるでしょう。トライアル雇用を利用すれば、「とりあえずできることをやってみよう、その結果で雇用が続けられるか判断しよう」と考えることもできます。
障がいのある方を雇用するハードルが下がれば、経験を重ねることで障がいのある方が働きやすい職場が整っていきます。
障害者トライアル雇用のデメリット
一方、障害者トライアル雇用のデメリットには、以下のようなものがあげられます。
・受け入れる企業側の余裕が重要
・人的リソースが必要
特に、はじめて障がいのある方を雇用する場合は、受け入れる側の企業に時間と人手の余裕が必要です。障がいのある方とコミュニケーションをとり働き方をすり合わせたくても、仕事をするので手一杯ならば、雇用継続が難しくなるでしょう。
また、「手の空いている人が障がいのある方に仕事を教えて」といった受け入れ態勢では責任の所在が分からず、障がいのある方とのコミュニケーションがうまくいかなくなる可能性もあります。トライアル雇用であっても、障がいのある方に仕事を教え、職場の環境を整えるチームを組み、対応しましょう。
トライアル雇用を成功させるには、受け入れる時期も重要です。繁忙期と通常期の差が激しい職場の場合、可能な限り通常期に実施するなどの工夫が必要です。
トライアル雇用の流れ
トライアル雇用の基本的な流れは、以下の通りです。
1.ハローワークで求人票の提出
2.求職者の面接選考
3.障がいのある方トライアル雇用開始
4.実施計画書の提出
5.助成金の「支給申請書」の提出
1.ハローワークで求人票の提出
2.求職者の面接選考
3.障がいのある方トライアル雇用開始
4.実施計画書の提出
5.助成金の「支給申請書」の提出
基本的な雇用までの流れは一般的な求人と同じです。今までハローワークを利用してこなかった企業は、まず窓口で「事業者登録」を行いましょう。トライアル雇用が2回目以降の場合は、インターネット上で手続きができるところもあります。
トライアル雇用独自の手続きは、実施計画書の提出と助成金の「支給申請書」の提出です。
実施計画書とは、障害者トライアル雇用を開始した日から2週間以内に、雇用契約書などの労働条件が確認できる書類を添付して、求人を行った機関に提出します。ハローワーク以外にも提出が必要なので注意してください。
なお、トライアル雇用の結果雇用継続につながらなかったからといって、ペナルティはありません。助成金の申請だけは忘れないようにしてください。

障害者トライアル雇用を利用する際の注意点
ここでは、障害者トライアル雇用を利用する際に企業側が注意するポイントを紹介します。通常の求人と異なる点も多いので、確認した上で求人を出してください。
求人数を事前に定める必要がある
障害者トライアル雇用を利用する場合、事前に求人数を定めておく必要があります。通常の求人のように「実際に求人をしたら思ったより応募が多く、受け入れ態勢も整ったので採用者を増やす」といったことはできません。
トライアル雇用を利用する前に、就業を希望している障がいのある方の人数を調査し、自社が受け入れられる人数を正確に把握しておくと、ミスマッチが起こりにくくなります。
原則として面接が必須
障害者トライアル雇用を実施する際は、原則として面接で選考を行います。「募集をかけたら思った以上に応募があったので、書類選考をして人数を絞りたい」といったことはできないので、注意しましょう。
特に、小売りなど障がいのある方が比較的チャレンジしやすい職種、障がいのある方を雇用した実績が多い、障がいのある方が働く環境が整っているといった職場は応募者が多くなる傾向があります。
また、地域によっては障がいのある方が働ける職場が少ないため、1つの求人に応募が殺到する可能性もあるでしょう。
応募が多く見込まれる場合は、面接官を増やす、応募の条件をやや厳しめにするなど対処が必要です。また、面接回数を多くして応募者を絞っていく方法を検討しても良いでしょう。
すでに障がい者雇用枠で雇用している方をトライアル雇用に切り替えはできない
すでに障がい者雇用枠で働いている障がいのある方をトライアル雇用に切り替えることはできません。雇用契約を結んでいる従業員はもちろんのこと、通常の障がい者雇用枠での求人に応募してきて内定を出した障がいのある方も対象になるので、注意しましょう。
障がいのある方の雇用に関する取り組みは、短期間で新しい制度ができたり現在の制度が変わったりします。障がい者雇用を検討している企業は、常に最新情報をチェックしておきましょう。

障害者トライアル雇用の事例
障がい者の雇用を検討する企業にとって、トライアル雇用制度は双方の不安を軽減し、適性を確認できる重要な機会です。
ここでは実際にトライアル雇用を活用して採用に至った2つの事例について解説します。
事例1|半導体メーカーA社/精神障がいのある方を採用
精神障がいのあるCさんは再就職を目指していましたが、半導体メーカーA社側も本人も雇用に対して不安を抱えていました。そこでA社は、3ヵ月間のトライアル雇用制度を活用してCさんを採用することにしました。
トライアル期間中は、本人の体調や障がい特性に配慮し、9時から16時までの短時間勤務から始めました。このトライアル期間を通じて、Cさんは業務内容や職場の雰囲気に慣れることができ、A社側もCさんの仕事ぶりや周囲との協調性を確認できました。
その結果、Cさん自身が「自分に合っている」と感じ、A社側も「安心して任せられる」という判断に至り、本採用(常用雇用)へと移行しました。
事例2|電子機器メーカーB社/知的障がいのある方を採用
電子機器メーカーB社では、知的障がい者の雇用に対して不安を抱えていましたが、障害者トライアル雇用制度を活用することで採用に踏み切りました。
まず職場見学を実施し、応募者の仕事に対する適性や体力面での対応可能性を確認しました。その後、トライアル雇用期間を通じて、求職者の仕事に対する向き不向きや体力的な側面を十分に把握できました。
この丁寧なプロセスにより、双方にとって納得感のある形で採用を決定し、3ヵ月後の常用雇用へと移行しました。事前の実習やトライアルが、ミスマッチの防止とスムーズな定着に貢献した好例といえます。

まとめ
障害者トライアル雇用を利用すれば、通常の雇用とは異なり、雇用期間に期限はありますが、雇用継続につながる可能性も高い制度です。また、障がいのある方を初めて雇用する企業は、ミスマッチを防ぎ、障がいのある方が働きやすい環境を整える上でも有効な制度です。
また、障がいのある方から見ても、就業のハードルが下げられて前向きな気持ちで応募できます。可能ならば、利用を検討してみましょう。
記事監修者:衛藤 美穂
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。
■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得