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知的障がい者の雇用ガイド | 雇用状況や向いている仕事も解説 

公開日:
2025.05.12
最終更新日:
2025.05.21

「障がい者雇用の枠で知的障がい者を雇用したが、職場としてどのようなサポートができるか知りたい」「知的障がい者を雇用する場合、どのような仕事を任せればいいのか、悩んでいる」 

このような悩みを抱えている企業の担当者は多いかと思います。常時雇用している労働者が40名以上いる企業は「障害者雇用促進法」に基づき、最低1名以上の障がい者を雇用する義務が課せられています。

知的障がいを持つ方は、障がいの程度によって、指示が入りにくかったりできることとできないことの幅が大きかったりするのが特徴です。 

この記事では、障がい者雇用で知的障がい者を雇用する場合、会社が知っておくべきことや向いている仕事等を紹介します。 

知的障がいの基礎知識 

知的障がいとは、おおむね18歳までの発達期に知的機能に障害を認められた人です。日常生活や社会生活において、さまざまな困難を抱えているケースが多く、継続的な支援を必要としています。知的障がい者が抱える困難については、以下のようなものが挙げられます。 

  • 知能の遅れ:同年代とくらべて知能に遅れがあり、記憶、推論、判断、問題解決などの能力が弱い傾向がある。 
  • 適応機能が低い:コミュニケーションや、自己管理能力、学習能力等が弱く、社会生活を送るのに困難が生じやすい
  • 発達の遅れ:知能だけでなく身体的な発達が遅れるケースもある 

知的障がいが原因は病気や遺伝子の影響など先天性のもの、病気やケガ由来の後天性のものなど複数あります。また、発達障害の一種である自閉症と知的障害の両方を持っているケースもあります。 

近年は障がいを持った方への理解も広がり、幼少期から支援を受けられる機会も増えました。そのため知的障がいを持っている方でも、支援によって健康な方と同様に生活したり就業したりしているケースもあります。 

知的障がいの区分 

知的障がいには、程度によって以下のように区分されています。 

軽度:IQ51~75・基本的な生活習慣は問題なくできる。ただし、読み書き、計算、抽象的な思考、対人コミュニケーション、長期的な計画を立てることなどが苦手 

中度:IQ36~50・基本的な生活習慣は時間をかけて指導すればできるようになる。読み書きや計算の能力は小学生程度。判断能力や言語能力も遅延が見られ、意思疎通がうまくいかないケースも多い 

重度:IQ35以下・身辺の自立は介助なしでは難しい。療育をしていれば絵カードなどを利用して限られた範囲でコミュニケーションを取ることは可能 

知的障がい者を雇用する場合は、障がいの程度に合った仕事を任せる必要があります。 

知的障がい者の就労状況 

「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」によると、令和5年6月時点で回答があった6,406社において、雇用されている知的障がい者は5,964人です。 

職種別では卸売業、小売業が32.9%と最も多く、次いで製造業の15.4%、サービス業 の13.2%と続きます。34 歳以下の割合が高く、35 歳以上の割合が低くなっているのも特徴です。 

障害の程度は重度が 11.8%を、重度以外が 81.0%となっています。職種によっては中度・重度の知的しょうがい者でも就業が可能です。また、「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年度)によると、1年後の定着率は75.1%となっています。 

知的障がい者に向いている仕事 

知的障がい者の方は、向いている仕事と苦手な仕事があります。向いている仕事を任せれば、サポートが必要な場合もありますが、長期間真面目に働いてくれる可能性が高いです。 

ここでは、知的障がい者に向いている仕事を紹介します。 「自社の仕事の中で知的障がい者に任せられるものはあるのか?」と悩んでいる方も参考にしてください。 

製造業 

製造業は、同じ作業を繰り返す仕事がたくさんあります。一例を挙げると以下のような仕事が挙げられます。 

  • 工場での組み立て作業 
  • 製菓やお弁当などの製造業
  • 検査作業 
  • 包装・仕分け作業 

製造業にはいろいろな仕事があります。雇用した知的障がい者の程度や得意分野によって任せられる仕事を選べるのもメリットです。 

知的障がい者は一つの仕事を覚えるのに時間がかかる方が多い一方、一度仕事を覚えたら長時間取り組める方もたくさんいます。同じ作業の繰り返しならば仕事も覚えやすく、落ち着いて仕事に取り組めるでしょう。最初はサポーターをつける、作業量を減らすなど工夫が必要です。 

時期によって仕事の内容が変わる場合は、早めに仕事を教え始めるなどの工夫が必要です。 

小売業 

小売業も、知的障がい者が働きやすい職場です。小売業で知的障がい者に任せやすい仕事は以下のようなものが挙げられます。 

  • 在庫管理・品だし 
  • 商品の在庫管理 
  • ネットショッピング用の商品の梱包・発送作業 
  • 接客作業 
  • 店内の 

小売業の仕事内容は、工場と同様に同じ作業の繰り返しです。一度仕事を覚えれば、自信をもって仕事ができるでしょう。また、障がいの程度が軽度ならば接客作業や、レジ打ちなどを任せられるケースもあります。ただ、接客は臨機応変な対応が求められることもあります。

接客の中でも商品の説明をするだけ、お客様を所定の場所に案内するだけといった限定されたものならば、安心して任せられるでしょう。 

清掃業 

清掃業は人と接する時間が少なく、同じ仕事の繰り返しなので軽度な知的障がい者はもちろんのこと、仕事内容を選べば中度、重度の知的障がい者で勤まる可能性があります。 

清掃は、オフィス・工場・お店と幅広い場所で必要です。金融業をはじめとして知的障がい者が仕事をするには難しい仕事をする会社でも、バックオフィス業務の一環として清掃業を任せるといったケースもあります。 

ただし、清掃業に使う道具の中には正しい使い方をしないとケガをする可能性があるものも多いです。また、清掃場所によっては危険度が高いところもあります。安全に掃除ができる場所、道具を選んだうえで仕事を任せるなどの工夫が必要です。 

事務の軽作業 

事務作業の中にも、書類の電子化や整理、決まった数値の入力、ファイリングなどルーチンワークならば知的障がい者に任せられます。障がいの程度のよっては、会議室の予約、オフィスの備品発注、管理、メールの配布などを任せられる方もあるでしょう。 

また、ルーチンワークを知的障がい者に任せることで、一般の従業員がより高度な仕事に集中できるメリットもあります。

近年は様々な事務作業が電子化されていますが、間違った数値を入力すると即エラーが出るなどのシステムを作っておけば障がい者でも仕事を覚えやすいでしょう。 

知的障がい者にスムーズに働いてもらうためのポイント 

ここでは、知的障がい者の方を雇用した際にスムーズに働いてもらうために、会社ができることや注意すべきことを紹介します。 

知的障がいに関する理解を深めるのはもちろんのこと、知的障がい者が仕事をしやすいように職場の環境を整えることも大切です。国は法律で障がい者を雇用する義務を法律で定めている一方で、障がい者が一般企業で働きやすいようにさまざまなサポートを作っています。

障がい者を受け入れる企業も、利用できるサポートをフル活用すれば、初めて障がい者を雇用する場合でも雇用後に長く働いてもらえる環境を整えられるでしょう。 

外部のサポート支援機関を活用する 

知的障がい者を雇用し、スムーズに仕事を覚えてもらうためには外部のサポート機関も積極的に活用しましょう。 

知的障がい者は仕事を覚えるのに時間がかかる、暗黙の了解が理解できない、言葉によるコミュニケーションが取りにくいといった特性がある方も珍しくありません。 

障がい者を雇用するにあたり、会社の従業員も勉強をして障がい者への理解を深めているでしょう。しかし、障がい者のサポートには専門的な知識や経験が必要です。 

健康な方の新人研修のような対応ではうまくいかない可能性もあります。 厚生労働省では、障がい者が職番なじめるように「職場適応援助者(ジョブコーチ)事業」や「地域障害者職業センター」などの支援事業を行っています。 

このほか、民間企業でも障がい者の就労支援、障がい者を雇用する企業のサポートを行っているところも増えてきました。 

民間企業が実施しているサポートの中には、国や自治体が実施していない種類もあります。 知的障がい者を雇用することが決まったら、どのようなサポートを企業が受けられるか調べておくと安心です。 

分かりやすいマニュアルを用意する 

知的障がい者に仕事を覚えてもらうときには、イラストや写真などを多用したわかりやすいマニュアルを用意してください。知的障がい者は軽度であっても抽象的な話を理解するのが苦手です。 

例えば機械操作ならば、「メモリが8のところにいったら機械を止める」包装ならば、「7つずつ製品を箱につめる」といったように指示は具体的かつ分かりやすいようにしてください。 

健康な方に仕事を教える場合、一通り仕事の仕方を教えた後で「わからなかったら聞きにきてください」と指示することもあるでしょう。製造業ならば、「先輩の作業を見て覚えてください」といった会社もあります。 
しかし、知的障がい者の方にこのような仕事の教え方をしても仕事を覚えてもらえない可能性があります。 

マニュアルを作っておけば「わからなくなったら見直せる」といった安心感も得られます。マニュアルを作成する際は難しい漢字やカタカナ用語を使わず、一文はできるだけ短くなるように注意してください。

「お客様が希望したら、臨機応変に対応する」といった指示も知的障がい者は理解できない可能性があります。指示は具体的に行いましょう。 

得意分野の仕事をしてもらう 

就労に意欲的であったり、就労支援を受けていたりする知的障がい者のなかには、得意分野がはっきりしている方もいます。就業の際は時間をかけてヒアリングを行い、どのような仕事ができるのか、得意な仕事は何か等を明確にすると任せる仕事を選びやすいでしょう。 

就労支援を受けている方ならば支援で学んだ仕事を任せるのも1つの方法です。 

得意分野の仕事ならば、自信をもって落ち着いて取り組めます。新しい仕事も覚えやすく、スムーズに職場に溶け込める可能性も高まります。 

得意分野以外では、仕事に慣れるまでは時短勤務を許可するなど失敗しにくい環境を作る等も有効です。例えば、最初の1ヵ月は1時間仕事をしたら10分間休んで気持ちをリセットできる仕組みを作るなどしてもいいでしょう。 

相談しやすい環境を作る 

知的障がい者の方が仕事をしやすい環境を整える際は、困ったことや希望を相談しやすい環境も一緒に作ることが大切です。知的障がい者の中には、自分の気持ちをうまく他者に伝えるのが難しい方も珍しくありません。不満や悩みを抱え込んだ結果、仕事に行けなくなり離職してしまうケースもあります。 

「困ったことがあったら言ってくれればよかったのに」と済ませるのではなく、月に1度時間をかけてヒアリングをする、困ったことがあったらすぐに相談できる担当者を作っておくなどすると、障がい者も話しやすくなるでしょう。 
会社の従業員では対処が難しい場合は、障がい者の相談を受け、企業と共に対応を考える外部サポート機関を利用する方法もあります。 

まとめ 

本記事では、企業の知的障がい者を雇用する企業が知っておくべきことや、注意点を紹介しました。知的障がい者の中には日常的な会話だけならば健康な方と変わらない方もいます。だからこそ、仕事をなかなか覚えない、同じ失敗を繰り返すといった場合「やる気がないのでは」と思われがちです。 

知的障がい者にスムーズに仕事をしてもらうには、専門の対応が必要です。マニュアルから指導の方法まで、一般的な新卒者や中途採用者とは異なるものを用意しましょう。 

また、障がいへの理解を深めるために、従業員に研修参加をしてもらったり、ジョブコーチを利用したりといった対応も必要です。 

衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)

サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム

福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。

サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。

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