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特例子会社とは?設立方法やメリット・デメリットをわかりやすく解説

公開日:
2025.03.11
最終更新日:
2025.04.17

「特例子会社とは何?」
「特例子会社のメリット・デメリットを知りたい」
「特例子会社を設立する手順とは?」

法定雇用率の達成のためであったり、障がいのある方の働く環境を整えるために特例子会社を設立しようとお悩みの方もいるかと思います。

そこで、本記事では特例子会社とはどういったものか概要や、メリット・デメリット、設立方法などをわかりやすく解説していきます。これから特例子会社を設立しようと考えている企業のご担当者様はぜひご参考にしてください。

特例子会社とは

特例子会社とは、障がい者の雇用を行うことを大きな目的として作られる子会社のことです。

親会社と提携をはかって運営されるものであり、特例子会社で雇い入れた障がいを持つ方の人数を親会社などの法定雇用率としても算定することができる仕組みです。

この特例子会社を設立するためには、条件を満たしたうえで(条件については後述)、厚生労働省からの認定をうけなければなりません。

特例子会社と一般企業での障がい者雇用との違い

特例子会社と一般企業での障がい者雇用の違いは、主に雇用環境や支援体制にあります。特例子会社は、障がい者雇用を目的に設立され、法定雇用率を本社と合算できる仕組みが特徴です。

専門スタッフの配置や業務の配慮が充実しており、障がい者が働きやすい環境が整っています。一方、一般企業では、通常の職場で他の従業員と共に働くことが多く、合理的配慮は求められるものの、特例子会社ほどの支援体制が整っていない場合があります。

どちらも障がいのある方の能力を活かすことが求められますが、職場環境やサポートの違いが大きなポイントです。

特例子会社設立のための条件

特例子会社を設立するための条件は以下の通りです。

①親会社と緊密な人間関係が保たれていること
②障がい者が相当数雇用されていること
③障がい者にとって、適切な労働環境が作られていること
④その他

①親会社と緊密な人間関係が保たれていること

親会社との連携を行っていることを証明できなければ、特例子会社の設立はできません。「まったく関係ないところに、まったく親会社の社員と関わることなく、運営していく名前だけの子会社」は、特例子会社とは認められていないのです。

ちなみにこの要件を満たす方法のひとつとして、「親会社から役員が派遣されている」などが挙げられます。

②障がい者が相当数雇用されていること

特例子会社として認められるためには、

  • 雇用されている障がい者の数が5人以上
  • かつ、全従業員中の20パーセント以上が障がい者であること
  • 重度の身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の割合が30パーセント以上

であることが求められます。

つまり、「100人以上の子会社だが、軽度の重度肢体障がい者が3人雇っているのみ」などの場合は、特例子会社の要件を満たしていないと判断されます

③障がい者にとって、適切な労働環境が作られていること

たとえば、必要とされるバリアフリー工事が施されていたり、専門的な知識がある指導員が専任で指導に当たっていたりすることなどが、この3の項目にあたります。

④その他

その他としては、障がい者の採用と、安定した働き方がきちんと達成できると判断されることという条件があります。

また特例子会社はあくまで「子会社」であることもあり、親会社が子会社の意思決定機関を掌握していなければなりません。子会社の議決権を、半分以上親会社以外が持つことなどは認められていません。

出典:「特例子会社」制度の概要

特例子会社は何社設立されている?

2024年6月1日現在における特例子会社の設立数は、全国的にみても614社と、決して多くはありません。現在の日本の企業などの数が370万件近いということを考えれば、この数字の小ささが分かります。

ただ、少しずつその数は増えていっています。またこの特例子会社の考え方は、実はかなり昔から存在していました。

日本で初めて特例子会社として認められた子会社の誕生は、45年以上も前に遡ることができます(名称:シャープ特選工業株式会社。シャープ株式会社の特例子会社)。

特例子会社の設立に向いている企業

特例子会社の設立に向いている企業は、一定数の障がい者を安定的に雇用できる規模の企業や、グループ全体で法定雇用率を満たしたい企業です。

特に、業務を切り出しやすい業種(事務、清掃、軽作業、ITサポートなど)を持つ企業に適しています。また、障がい者の長期雇用やキャリア支援を重視し、専門スタッフを配置できる体制がある企業も向いています。

CSR(企業の社会的責任)やダイバーシティ推進を重視する企業にとっても、特例子会社は有効な選択肢となります。

特例子会社設立のデメリット

特例子会社を設立する前には、特例子会社設立のメリットとデメリットを知っておかなければなりません。
ここではまずはデメリットから紹介していきます。

  • 管理職に負担が集中しやすい
  • 収益が確保できるかの問題がある
  • 本来の「障がい者雇用」の意味とずれることがある

一つずつ見ていきましょう。

管理職に負担が集中しやすい

障がい者雇用には、障がいを抱えていない人の雇用とはまた異なった負担が生じます。

特に精神に障がいを抱えている人を雇い入れる場合、それぞれの人に合ったツールの導入や、精神面でのサポートが求められます。

特例子会社はその特性上、比率として、障がいを抱えていない人の割合が少なくなりがちです。
そのため管理職(や少数の社員)に負担が集中しやすくなり、その人たちが大きなストレスを抱えてしまいがちです。

収益が確保できるかの問題がある

特例子会社は、設備を整えたり、障がいを持つ人が使いやすいシステムを導入したりする必要があります。そのため経営コストも高くなりがちで、収益<出費 となってしまいがちです。特例子会社もまた営利目的であることを考えれば、これは無視できないデメリットです。

また親会社の経営の影響を受けやすく、親会社の経営不振などによるダメージを受けやすい環境にあります。

本来の「障がい者雇用」の意味とずれることがある

前述のように、特例子会社はもともと「どのような人でも社会で活躍できるように」という法律の下で作られたものです。

しかし障がい者を多く受け入れる特例子会社は、「親会社の法定雇用率を満たすためのもの」「独立化した場所」となってしまいがちであるというデメリットがあります。

このため、親会社の社員の障がい者への理解が進まなかったり、雇用されている側もまたキャリアの限界を感じたりしてしまいがちです。

特例子会社は企業にとってもメリットが大きい

このようにデメリットもある特例子会社ですが、その設立には多くのメリットがあります。

「バリアフリー化していて働きやすい」「障がい者も働きやすい環境・設備・待遇が整えられている」「ほかの人と同じレベルで働けるので孤独感が少ない」などの雇用される側のメリットもありますが、事業者側にとっても下記のメリットがあります。

  • 法定雇用率に算定できる
  • 障がい者に合わせた労働環境を整備しやすい
  • 柔軟な働き方の実現も可能
  • 「働きやすい環境」を作ることで、戦力になる人材を育てやすくなる
  • 企業のイメージアップを図ることができ、ESG投資の対象にもなりやすい

一つずつ解説していきます。

法定雇用率に算定できる

特例子会社で雇い入れた障がい者の数・割合は、親会社の法定雇用率に算定できます。

そのため、なんらかの理由で親会社で継続的に障がい者を雇い続けることが難しい場合でも、特例子会社で障がい者を雇用することによって、法定雇用率を下回った場合のペナルティを避けることが可能です。

障がい者が働きやすい労働環境を整備しやすい

障がい者を雇い入れるときは、会社の労働環境を整えることが求められます。たとえば、エレベーターを導入したり、車いすでも入りやすいトイレを作ったり、広めの休憩所を作ったりなどの工夫です。

「すでにある事業所をリフォームして、これらの設備を取り入れること」も可能ではありますが、大規模なリフォーム工事をしようとすると場合によっては業務を中断せざるを得なくなります。

また、「これらの設備を初めから織り込んで作る建物」は、当然その設備の導入に最適化しているため、デザイン性も高くなります。

柔軟な働き方の実現も可能

「仕事の能力は高いが、人との対面のやり取りが非常に大きなストレスになる」「体調の波が大きく、9時5時では働きにくい」「電車に乗るのが難しい」などのようなさまざまな事情を抱える人に対して、特例子会社は柔軟な働き方を提案しやすくなります。

たとえば対面での打ち合わせなどは少なくしてメッセージでやりとりするようにしたり、完全フレックス制を導入したり、リモートワークを導入したりといったことです。

これらの「柔軟な働き方の実現」は、下記の「人材育成」とも繋がりがあるものです。

特例子会社の離職率は低い

特例子会社の場合は離職率が低いということがデータから分かっています。

厚生労働省の調べた、障がい者の職場の定着率(1年後)は、もっとも多い層でも71.5パーセントにしか達していません。特に精神障がい者の場合は離職率が高く、1年間勤め続けられる人は2人に1人以下です。

関連記事:障害者雇用が定着しないのはなぜ?離職理由と対策を解説

しかし、特例子会社の場合はまったく異なった状況が見えてきます。

過去5年間の離職率を調べたデータでは、もっとも離職率が高い層(離職率が1人~2人)であっても22.7パーセントに過ぎず、10人以上20人未満および20人以上の離職者が出た特例子会社はぞれぞれ10.0パーセントを切っています。

また、194社数33社(17.0パーセント)は、そもそも離職者を出していません。

特例子会社で雇い入れることで定着率が高まり、そして定着した人材を自社にとって有益な人材に育てることができるようになるのです。


出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「多様化する特例子会社の経営・雇用管理の現状及び把握・分析に関するアンケート調査結果」P35 

企業のCSR・ブランディング向上

特例子会社を設立して障がい者雇用を進めていくことで、「この企業は、社会貢献をしている企業である」「多様な働き方を推進している」として、顧客や取引先にポジティブな印象を抱かせやすくなります。

特にBtoCの企業など、イメージアップを大切にする事業者にとってこれは非常に大きなプラスとなります。

良い企業イメージを持たれている企業は、企業統治ができている企業であるとして、ESG投資の対象にもなりやすいといえます。投資を受けることは企業の成長にとってとても重要です。

特例子会社の設立およびその特例子会社での障がい者の雇い入れは、自社を成長させるきっかけともなるのです。

特例子会社設立までの流れ

最後に、特例子会社設立までの流れについて解説していきます。

  1. 認定要件の確認
  2. 書類の準備~設立のための手続き
  3. 採用準備~採用
  4. 特例子会社認定申請を出す

1.認定要件の確認

下記の条件を満たしているかを確認します。

①親会社と緊密な人間関係が保たれていること
②障がい者が相当数雇用されていること
③障がい者にとって、適切な労働環境が作られていること
④障がい者の採用と、安定した働き方がきちんと達成できると判断されること

2.書類の準備~設立のための手続き

要件を満たしていることが確認できたら、書類の準備を行います。特例子会社を設立するためには、子会社特例認定申請書や、子会社の社員名簿、子会社の図面など多くの書類が必要です。

また定款の作成を行い、官庁への届出を行う必要もあります。

3.採用準備~採用

採用準備を行い、障がい者の採用を行います。
自社に必要な人材はどのような人か、どんな仕事を頼むべきかをまとめたうえで採用をしていくと無駄がありません。

またこのときには、ハローワークの障害者雇用担当者に相談すると、より良いアドバイスを受けることができます。

4.特例子会社認定申請を出す

特例子会社になるための認定申請は、障がいを持つ人を雇い入れて初めて可能になります。
なお申請先はハローワークです。

※必要な書類については、厚生労働省がこちらにまとめています。

まとめ

これまで特例子会社について解説をしてきました。今回の内容をまとめると、以下の通りです。

  • 特例子会社の設立には数多くの書類が必要であり、条件を満たしている必要がある
  • コストがかかりやすく、管理職に負担がかかりやすいので注意が必要
  • しかし特例子会社は、「その子会社で雇い入れた人を、親会社の雇用する障がい者数として算定できる」という特徴を持っている
  • 離職率を低い数字で押さえられることで結果的に自社に有益な人材を育てることが可能になったり、ESG投資の対象として高く評価されやすくなるなどのメリットもある

特例子会社を作る場合は、そのメリットとデメリットをしっかり比較し、検討していくことが求められます。

この記事を書いた人

サンクスラボ編集部

サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。

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