障がい者雇用にはどんな職種がある?仕事の種類や雇用形態を解説
- 公開日:
- 2025.05.21
- 最終更新日:
- 2025.06.03

「障がい者を雇用することになったが、どの仕事を任せていいか迷っている」「障がい者雇用で働いている方々はどのような仕事に就いているか知りたい」と悩みや疑問を持っている方は多いでしょう。
障がい者雇用で働く方は、健常者と同じように働くことが難しいケースが大半です。だからこそ、企業側が特性を理解して過度なストレスを感じず長く働ける仕事を考えることが大切です。
本記事では、障がい者が企業に雇用された場合に就く職種の種類や雇用形態を紹介します。
障がい者雇用が多い職種とは?

障がい者雇用の状況は、厚生労働省が毎年「障害者雇用実態調査結果報告書」で発表しています。ここでは、「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」を元に、障がい者が多く働いている職種を紹介します。障がい者別の割合も解説するので参考にしてください。
製造業
製造業は、身体障がい者の21.3%、知的障がい者と発達障がいを含む精神障がい者の15.4%が就業しています。製造業は仕事の工程が多く、一度作業のやり方を覚えてしまえば同じ作業の繰り返しとなる仕事もたくさんあります。
障がいの程度によっては新しいことや複雑なことを覚えるのは難しいが、一度やり方を覚えてしまうと同じ作業を続けるのは得意、といった方います。
また、物づくりの作業だけでなく、検品やピッキングなどの作業もあって得意分野や障がいの程度に合せて職種を選ぶことも可能です。このほか、製造業にはバックオフィス業務として事務作業や清掃業務などもあります。
このような特徴が「障がい者が働きやすい職場環境」を整えているといえるでしょう。
小売業
小売業は店舗の販売スタッフ、商品管理、接客などの仕事があります。小売業には身体障がい者の21.2%、知的障がい者の32.9%、発達障がいを含む精神障がい者の25.8%が就業しています。
小売業は数が多く製造業と同じくルーチンワークな業務もたくさんあります。一度仕事を覚えれば臨機応変に対応する必要も少なく、障がい者にとっては安心して働ける仕事が多いのが特徴です。
事務的な仕事
事務職には、身体障がい者の26.3%、知的障がい者の5%、発達障がいを含む精神障がいの29.2%が就いています。事務的仕事とは、総務・経理・人事・営業等多岐にわたる業務です。仕事内容も、パソコンへの入力、書類整理、電話、集計など種類が豊富です。
経理をはじめとする専門的な知識や経験が必須な仕事もあれば、定期的に行う必要があるものの、ルーチンワークな仕事もあります。
事務的な仕事のうちルーチンワークを障がい者に担当してもらい、他の従業員が他の業務に集中することで業務の効率化が図れた企業もあります。また、事務的な仕事は基本的にデスクワークなので、体が不自由な身体障がい者でも、働きやすいといった特徴もあるため、身体障がい者の割合が高めです。
専門職
専門職は、身体障がい者の11%、知的障がいの2.3%、発達障がいを含む精神障がい者が15.6%が就業しています。SE(システムエンジニア)やwebデザイナーなどパソコンを用いて専門的な仕事をしている方が多い傾向です。
特に発達障がいを持っている方は、コミュニケーション能力などある分野の能力に難がある一方、自分が得意とする分野では高い能力を発揮できます。その特性を活かして、専門職で活躍している方も珍しくありません。その一方で、専門職は高い理解力が求められるので、障がいの種類による差があります。
清掃業
清掃業はサービス業の一種のため、サービス業として集計されます。身体障がい者の14.9%、知的障が者の13.2%、発達障がいを含む精神障がい者の11.2%が従事しています。
清掃業はコミュニケーションを求める機会がほかの業務に比べると少なく、仕事もルーチンワークが大半です。安全に働けるように対策をたてれば、障がいの種類に関係なく働きやすい仕事といえます。
障がい者が働きやすい雇用形態とは

障がい者を雇用する方法には、健康な方と同じ条件で働く一般就労・障がい者雇用の2種類です。また、正社員のほかパート、アルバイト、特例子会社への就職など働き方も様々です。ここでは、障がい者を雇用する形態と働き方を紹介します。
一般就労
一般就労とは、健康な方と同様のステップで雇用される方法です。障がいがあることを公にして就業する方もいれば、特に配慮を求めないので申し出ずに就職する方もいます。
障害を公にせず就職しても仕事によっては特に問題はありません。ただし、障害を申し出ずに就業すると、就業後に障がいに対する配慮を求めにくくなります。
また、障がい者手帳を所有していなくても、職場に配慮を求めることができます。
正社員のほか、パートやアルバイト・派遣・時短勤務といった複数の働き方が自由に選べるのがメリットです。
例えば、「仕事は問題なくできるが、障がいのために長時間働けない」「しばらく仕事をしていなかったので、短時間から社会復帰したい」と考えている方ならば、一般就労のほうがメリットが大きいケースもあります。
障がい者雇用
障がい者雇用とは、障がいのある方が障がいを前提として採用する方法です。身体障がい者、知的障がい者、発達障がいを含む精神障がい者で、障がい者手帳を所有している方が対象です。
体の一部が不自由だったり、発達障がいの傾向があるが手帳は所有していなかったりする場合は、障がい者雇用の対象にはなりません。
常用雇用の従業員が一定数就業している会社は、障害者雇用促進法によって最低でも1名以上の障がい者を雇用する義務があります。そのため、一般雇用では就職が難しい障がいを持っていても、就職できる可能性が高まります。
また、「特例子会社」をはじめとして、企業側が障がい者が働きやすい環境を整えた状態で雇用してくれるので、障がいの種類や程度によっては障がい者雇用でないと働くのは難しいといったケースもあるでしょう。
その一方で、障がい者雇用は、原則として週20~30時間以上の勤務が必要です。最低で週5日、1日4時間以上の勤務ですが障がいの程度や種類によっては難しい場合もあるでしょう。また、障がい者雇用での求人は職種も限られており採用人数も少ないので、職種によっては競争率が高い傾向があります。
障がい者雇用において活用できる機関

最後に障がい者雇用を検討している企業が活用している機関を2つ紹介します。障がい者雇用は、求職者だけでなく求人を出す企業側にもさまざまなサポートが用意されています。
機関によっては、サポートも依頼できるところもあるので、ぜひ活用してみてください。
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が管轄している公の機関です。障がい者雇用に関するさまざまなサポートや助成金の受付窓口にもなっており、企業向けの研修も実施しています。「障がい者雇用を初めて雇用するが、どのようなサポートや助成金があるか知りたい」「トライアル雇用などを利用したい」といった場合は、まずハローワークに相談してください。
近年は民間の求人サイトや求人会社が増えて、ハローワークはあまり利用しない企業も珍しくなくなりました。しかし、障がい者雇用ならばハローワークが最も情報やサービスが充実しています。
また、初めて障がい者雇用をする会社ならば、窓口の担当者が丁寧にサポートしてくれます。
民間の就職マッチングサイト
民間の就職マッチングサイトも障がい者雇用に対応するところが増えました。中でも、「障がいはあるが、身辺自立は可能。資格も所有している」といった方がエントリーしているケースもあります。自社が利用している就職マッチングサイトがある場合は、担当者に相談してみてもいいでしょう。
なお、ハローワークと民間の就職マッチングサイトは併用も可能です。両方に障がい者雇用の求人を出し、自社に合った人材を探す方法もあります。
このほか、民間の会社の中には、障がい者の斡旋から就職後のサポートまで一貫して行っているところもあります。自社の従業員だけでは障がい者を雇用してもサポートにまで手が回らないといった場合は、民間の会社にサポートを含めて依頼したほうがメリットが大きい場合もあるでしょう。
まとめ
本記事では、障がい者の雇用を検討している会社に向けて障がい者が就業している職種や雇用形態を紹介しました。障がいにも複数の種類があります。障がいを持っていながら資格を取得し働いている方も珍しくありません。
その一方で、会社が障がい者がスムーズに働ける環境を整えておかないと、雇用しても仕事が続かないケースもあります。事前に情報を集めてハローワーク等にも相談し、準備を整えることが大切です。
衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。
サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。
