障害者雇用納付金とは?計算方法や申告期限などわかりやすく解説
- 公開日:
- 2025.03.13
- 最終更新日:
- 2025.05.20

現在は法律によって、「障がいのある方を定められた割合以上に雇わなければならない」と決められています。そしてこれを守れなかった場合、障害者雇用納付金を納めなければなりません。
本記事では、障害者雇用納付金とは何かや、計算方法、いつまでに申告が必要かなどをわかりやすく解説をしていきます。
障害者雇用納付金を納める必要がある企業の方はぜひ参考にしてください。
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内容
・ロクイチ報告の基礎知識
・最新の法改正について(除外率変更や2026年以降の法改正予定について)
・法定雇用率の計算方法と、達成に向けた戦略
・法定雇用率の達成に向けた具体的な施策
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障害者雇用納付金とは
障害者雇用納付金とは、企業が障害者雇用の責任を果たせるよう設けられた制度です。
常時雇用労働者が100人超の企業には、一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇う義務があり、法定雇用率未達成の場合は不足人数1人につき月5万円を障害者雇用納付金として納めます。逆に、法定雇用率を超えて雇用した企業には調整金や報奨金が支給されます。
また、各種障がい者雇用のための助成金としても利用されます。この仕組みにより、企業間の負担を調整し、障害者の雇用を増やすことを目的としています。
障害者雇用納付金の金額と計算方法
100人以上の企業が障がい者の法定雇用率を守らなかった場合、1人あたり50,000円の障害者雇用納付金を収めることが求められます。
もっとも重要なのはこの50,000円という数字は、「1年あたりの金額」ではなく、「1か月あたりの金額である」ということです。
つまり法定雇用率から計算して、本来は5人雇わなければならないところを2人しか雇っていなかった場合、1年で、50,000円×3人×12か月=180万円納付が求められる計算になるということです。
ただ、逆に、障害者の雇用の促進等に関する法律では、「100人を超える事業主が、法定雇用率を超えて障がい者を雇用している場合は、1人当たり毎月29,000円を支払う」という制度が設けられています(障害者雇用調整金)。
法定雇用率以上に障がいを持つ人を雇用している企業は積極的に申請を行っていくとよいでしょう。
雇用率の計算方法は「【2025年最新】障害者雇用率の計算の仕方は?カウント方法と早見表で解説」をご参考ください。
障害者雇用納付金の申告期限と申告方法
申告期限
障害者雇用納付金の申告も、障害者雇用調整金の申請も、4月1日から5月15日までとされています。
なお申告対象期間は、前年の4月~今年度の3月です。つまり、2024年の4月~2025年の3月までの申告は、2025年の4月1日~2025年の5月15日までに行うことになります。
申告に必要な書類
障害者雇用納付金の申告・納付には、主に以下の書類が必要です。
- 障害者雇用状況等報告書(様式第6号):常用労働者数や障害者の雇用状況を報告します。
- 障害者雇用納付金申告書(様式第7号):納付金の額を計算し申告します。
- (該当する場合)障害者雇用調整金・報奨金支給申請書:法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に申請します。
これらの書類は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のウェブサイトからダウンロードできます。
手続きの流れ
手続きの主な流れは以下の通りです。
- 書類の準備と作成:必要な書類を準備し、正確に記入します。
- 申告・納付:作成した書類を管轄の都道府県支部へ提出し、納付金を納めます。
申告は電子申請または郵送で行います。電子申請の場合は、JEEDの電子申請システムを利用します。郵送の場合は、必要書類を印刷し、管轄の都道府県支部へ送付します。
なお、具体的な手続きや必要書類は年度によって変更される可能性があるため、必ず最新の情報をJEEDのウェブサイト等で確認してください。
調整金の受給について
徴収された障害者雇用納付金は調整金や各種助成金として支給され、受給するには申請が必要になります。
支給対象を確認し、対象となる企業は申請を漏れなくしておくのが良いです。
調整金にはそれぞれどのようなものがあるのか見ていきましょう。
障害者雇用調整金
障害者雇用納付金制度では、法定雇用率を達成している企業に対して、その超過人数に応じて障害者雇用調整金が支給されます。これは、障害者を雇用する際に生じる経済的負担を軽減し、更なる障害者雇用の促進を目的としています。
■支給対象
常時雇用労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に支給対象となります。
■支給額
支給額は、法定雇用率を超えて雇用している障害者1人あたり月額29,000円です。
■申請手続き
障害者雇用調整金の申請は、障害者雇用納付金の申告と同時に行います。申告書に必要事項を記入し、管轄の都道府県申告申請窓口に提出します。電子申告申請システムを利用することも可能です。
※詳細については、JEEDのホームページをご確認ください。
報奨金
障害者雇用納付金制度の一環として設けられている「報奨金」は、主に中小企業における障がい者雇用の促進を目的とした支援制度です。法定雇用率の達成状況に関わらず、障がい者の積極的な雇用を行っている小規模事業主に対して経済的な支援を行います。
■支給対象
常用労働者数が100人以下の事業主が対象です。
■支給額
基準を超えた障がい者1人あたり、月額21,000円が支給されます。
■申請手続き
報奨金の申請は、障害者雇用納付金制度に関する申告と同様の手続きの中で行います。
電子申請または各都道府県の窓口への書面提出が可能です。
※詳細については、JEEDのホームページをご確認ください。
在宅就業障害者特例調整金
在宅で働く障がい者や、在宅就業を支援する団体に業務を発注した場合、その対価に応じて企業に特例調整金が支給されます。これは、障がい者の多様な働き方を支援し、企業の障がい者雇用促進を図るための制度です。
■支給対象
常時雇用労働者が100人を超える、以下のいずれかに該当する事業主が対象です。
・障害者雇用納付金の申告義務がある事業主
・雇用調整金の申請を行っている事業主
■支給額
在宅就業障害者特例調整金の額は、以下の計算式で算出されます。
支給額 = 調整額(21,000円) × 年度内に支払った在宅就業障がい者への総額 ÷ 評価額(350,000円)
また、法定雇用率を未達成の企業がこの制度を活用した場合、障害者雇用納付金の減額措置が適用されることがあります。
■申請手続き
申請期間は原則として毎年4月1日から5月15日までです(年度によって多少変動あり)。
申請方法は以下のいずれかとなります。
・電子申請(障害者雇用納付金システム等)
・各都道府県の申請窓口へ申請書を送付または持参
支給の可否および支給日は、支給決定通知書の送付により知らされ、毎年10月~12月頃に支給されます。
※詳細については、JEEDのホームページをご確認ください。
在宅就業者特例報奨金
在宅就業の形態で働く障がい者や在宅就業支援団体に業務を発注した中小企業に対して支給される特例報奨金です。障がい者の多様な働き方を支援し、在宅就業の拡大を促すことを目的としています。
■支給対象
常用労働者数が100人以下の報奨金申請事業主で、かつ在宅就業障がい者または在宅就業支援団体に業務を発注し、対価を支払った事業主が対象です。
■支給額
以下の計算式により、支給額が算出されます。
支給額 = 調整額(17,000円) × 年度内に支払った在宅就業障がい者への支払総額 ÷ 評価額(350,000円)
■申請手続き
申請期間は毎年4月1日から7月31日までです(年度により多少変動あり)。
申請方法は以下のいずれかです。
・電子申請
・各都道府県の申請窓口への送付または持参
支給日は、支給決定通知書の送付によって通知され、毎年10月~12月頃に支給されます。
※詳細については、JEEDのホームページをご確認ください。
障害者雇用納付金の注意点
障害者雇用納付金の申告・納付には、いくつかの注意点があります。
納付期限を過ぎた場合には延滞金がかかる
まず、申告期限と納付期限です。申告対象期間は前年度の4月1日から該当年の3月31日までで、申告・納付期限は原則として該当年の4月1日から5月15日までです。納付期限を過ぎた場合には督促状が届き、その指定期間以内に納付完了すれば延滞金は発生しません。
しかし、督促の指定期間内に納付しなければ、支払いが完了するまでの日数に応じて年14.5%の割合で延滞金が課せられます。
申告義務があるのは常時雇用労働者数が100人を超える事業主
次に、申告義務のある事業主の範囲です。常時雇用労働者数が100人を超える事業主が対象となります。
常用雇用労働者数は、週所定労働時間が20時間以上の労働者で、雇用期間の定めがない、または1年を超えて雇用される見込みがある人を指します。短時間労働者(週20時間以上30時間未満)は0.5人としてカウントします。
障害者雇用納付金に関するよくある質問
最後に、障害者雇用納付金に関するよくある質問について回答をしていきます。
Q1.事業規模によって障害者雇用納付金の納付の義務が変わる?
A1.常用労働者100人以上の企業のみ必須
法定雇用率で考える場合、40.0人以上の事業主は1人以上の障がい者を雇用しなければならないと定められています。
しかし、障害者雇用納付金を収める義務があるのは、「100人以上の常用労働者を、5か月以上にわたって雇い入れている規模の事業主のみ」と定められています。そのため、常用労働者の数が100人を切っている事業主の場合、法定雇用率をクリアできていなくても、障害者雇用納付金を収める義務自体はありません。
なお、「常用労働者の数」は、
・週所定労働時間が30時間以上である(※週所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合は、0.5として数えられる。
・週所定労働時間30時間以上の者が60人、週所定労働時間20時間以上30時間未満の者が100人であった場合、60人×1.0カウント+100×0.5カウント=110人)
・雇用期間に定めがないもしくは1年以上にわたって雇用が見込まれている
の要項で求められます。
なお、障がいを持つ方をどれくらい雇い入れているかのカウントは、下記の表から算出できます。
障がいの程度 | 週所定労働時間30時間以上(常用労働者) | 週所定労働時間20時間以上30時間未満 | 週所定労働時間10時間以上20時間未満 |
重度の知的障がい者重度の身体障がい者 | 1人につき2カウント | 1人につき1カウント | 1人につき0.5カウント |
重度以外の知的障がい者重度以外の身体障がい者 | 1人につき1カウント | 1人につき0.5カウント | 算定基準なし |
精神障がい者 | 1人につき1カウント | 原則、1人につき0.5カウント | 1人につき0.5カウント |
※精神障がい者の場合は、重度・重度以外の区別なし
関連:【2025年最新】障害者雇用率の計算の仕方は?カウント方法と早見表で解説
Q2.障害者雇用納付金の納付義務があるにも関わらず申告しなかった、この場合はどうなる?
A2.追徴金が課せられる、差し押さえにいたることも
障害者雇用納付金を収める必要がある事業主であるにも関わらず、これを納付しなかった場合、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が収めるべき金額を決定して、10パーセントの追徴金を上乗せします。
また、「障害者雇用納付金の申告は行ったが、未納になっている」という場合は、督促措置が行われ、延滞金(督促金額の支払い期限×完納までの日数×14.5パーセント)が課せられます。
それでもなお支払われなかった場合は、滞納処分として、財産の差し押さえがなされます。
Q3.収める意志はあるが、金銭的な負担が大きい
A3.分納ができる
障害者雇用納付金の金額は決して小さいものではありません。そのため、「収める意志はあるが、すぐに全額収めることはできない」ということもあるかと思います。
この場合、分納を選択することができます。分納は、5月16日・8月1日・11月30日が期限とされています。ただし分納ができるのは、障害者雇用納付金の金額が100万円以上の場合のときのみで、100万円以下の場合は全納のみの受付とされています。
障害者雇用納付金の支払いをしていなかったときには督促が行われることはすでに述べた通りですが、納付期限をオーバーしていても収められることもあるので、できるだけ速やかに支払いを行いましょう。
Q4.障害者雇用納付金で訪問調査があるって本当?
A4.本当です。ただしすべての事業所に対して行われるわけではない
障害者雇用納付金は基本的には事業主が自ら申告・申請・納付を行うものですが、「障害者の雇用の促進等に関する法律」第52条の規定に基づき、訪問調査が行われることもあります。
ただ訪問調査はすべての事業主に対して行われるものではなく、また事前に「訪問に伺います」という通知がなされます。
なお訪問調査の際には、雇用の実態が分かる資料の提出などが求められることもあります。
Q5.廃業などがあった
A5.廃業後45日以内に申告が必要だが、相談に行くのが良い
年度の途中に廃業・吸収合併をした場合は、事業廃止日から45日以内に申告と申請、また障害者雇用納付金を収める必要があるケースではこれの納付が必要です。ただこのあたりはかなり入り組んでいて、ケースによって判断が難しくなることもあるので、早い段階で一度各都道府県申告申請窓口への相談に行くのがよいでしょう。
なお、「廃業などではないが、自然災害などでばたついていて、障害者雇用納付金を期限内に収めるのが難しい」などのような状況の場合は、国の方で納付期限の延長措置をとります。
たとえば2024年の1月1日に起きた能登半島大震災においては、「大きな被害があった七尾市・羽咋郡志賀町の事業主に関しては2025年の1月31日まで、富山県全域・金沢市や小松市などの事業主に関しては2024年の7月31日まで、障害者雇用納付金の納付期限を延長する」というお知らせが出されました。
Q6.経営悪化による障害者雇用納付金の納付が免除される場合はある?
A6.法律上赤字決算を理由として障害者雇用納付金は免除されません
障害者雇用納付金制度では、経営悪化による赤字決算でも障害者納付金は免除されません。
まとめ
これまで障害者雇用納付金について解説をしてきました。
今回の内容をまとめると、以下の通りです。
- 障害者雇用納付金は、障がい者の法定雇用率の基準を満たさないかつ常用労働者が100人を超える企業に課せられるものであり、「1人分の不足につき、月に50,000円を収めよ」とするもの
- 障害者雇用納付金はいわゆる「罰金」とは性質的に異なるものであり、障害者雇用納付金で徴収されたお金は障害者雇用調整金(法定雇用率を超えて障がい者を雇用している事業主に対して支払われる支援金)に使われる
- 支払いがされていない場合は、追徴金や延滞金、財産の差し押さえが行われる
障害者雇用納付金は、障がいを持つ人を含めて、多くの人が社会で等しく活躍できるようにという理念の下で設立した制度です。もし障害者雇用納付金の申告が必要な場合は、しっかり収めておきましょう。
この記事を書いた人
サンクスラボ編集部
サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。
