新卒障がい者雇用の動向と採用する時のポイント
- 公開日:
- 2025.04.22
- 最終更新日:
- 2025.05.20

企業が障がい者の新卒採用を進める場合、いくつかの準備をしておく必要があります。
準備ができていない状態で障がいのある方の新卒採用を進めてしまうと、自社に合った人材獲得ができず早期退職につながる可能性も高いです。
当記事では、障がいのある方の新卒採用で理解しておくべき基礎知識や採用する時のポイントについて詳しく解説します。
障がいのある方の新卒採用を行うメリット・デメリット、採用後に離職率を下げるポイントまで紹介するので、ぜひ参考にご覧ください。
目次
障がい者の新卒採用における基礎知識
はじめに、障がいのある方の新卒採用における基礎知識について詳しく説明します。
ニーズや動向、スケジュール間、選考時の配慮などを解説するので、ぜひチェックしてください。
新卒障がい者雇用のニーズ
障がい者雇用採用に取り組む企業は以前から存在していましたが、全体的には少ない傾向にありました。しかし、現代では各業界で人材不足が大きな課題となっており、障がいのある方を戦力として積極的に採用しています。
障がいのある方・健常者に関わらず、企業として若い人材を採用・育成する方針を持っている企業は新卒採用に着手しています。
将来的に社内で活躍していた中高年層の退職を考慮し、若年層の障がい者採用・育成に着手しながら長期定着へとつなげようと考える企業は多いです。
新卒障がい者採用市場の動向
発達障がい者は年々増加傾向にあり、独立行政法人 日本学生支援機構が公表している「平成30年度(2018年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査」によると、発達障がいの学生は10年で7倍に増えています。
メディアでも発達障がいに関する情報が公開されており、社会的認知も高まりを見せています。
障がい者雇用枠で就職する新卒の発達障がい者は今後も増加していくと予想されるため、企業側は市場傾向とのミスマッチが課題となっていくでしょう。
また、法定雇用率の引き上げもあり、ますます新卒の障がい者雇用のニーズも増えてくると予想されます。
一般的な新卒生と同じスケジュールで就職活動が進む
前提として、障がいのある方は特別なスケジュールで就職活動をしているわけではなく、一般的な新卒生と同じスケジュールで就職活動が進みます。
障がいのある方の中には、一般募集枠のみで就職活動をおこなっている人も存在します。
一般募集枠と障がい者枠の両方を併用している学生も多く、1つの枠のみで就職活動を進めている人は少ないです。
そのため障がいのある方の学生であっても、一般的な新卒生と同じタイミングで就職活動を進められます。
選考では合理的配慮が必要なシーンも存在
障がい者雇用の選考は一般的な選考と同じように進みますが、障がい種別や特性、程度に合わせて合理的配慮が必要なシーンも存在します。
障がいのある方の種類によって選考方法や選考を行う環境を工夫する必要があるため、配慮が必要になります。例えば精神障がい者を雇用する場合、面接官や場所を変えながら複数回の面接から安定して勤務できるか正確にチェックすることが大切です。
障がいのある方の種類や特性によって配慮すべきポイントは異なるので、障がい者雇用の選考では一人ひとりに合わせた合理配慮をおこなって準備を進めるようにしましょう。
障がい者の新卒採用を行う3つのメリット
障がいのある方の新卒採用を行うことで、以下のような3つのメリットがあります。
- 企業のイメージアップにつながる
- 職場環境に合った人材を採用できる
- 企業文化が浸透しやすくなる
それでは順番に説明します。
1.企業のイメージアップにつながる
障がい者雇用を積極的に進めることは、企業にとって単なる法的義務ではなく企業イメージの向上や社会的評価の向上につながります。
現在では世界的にダイバーシティ(多様性)が注目されており、障がい者雇用に取り組む企業は多様性のある人材雇用によって社会的貢献を世間にアピールできます。
社会的責任(CSR)を果たしている点でも評価されるため、顧客や投資家などのステークホルダーに好印象を与えることが可能です。
2.職場環境に合った人材を採用できる
障がいのある方の新卒採用をおこなえば、職場環境に適応しやすい人材を採用できます。新卒の学生は大学生活を経験しているため、幅広い人とのコミュニケーションを通じて社会性を身につけています。
もちろん人によって差はありますが、一定レベルのコミュニケーション能力がある障がいのある方を雇用できるので、入社後も新しい環境に適応が可能です。
そのため職場環境に合った人材を採用できる点は、障がいのある方の新卒採用をおこなうメリットの1つです。
3.企業文化が浸透しやすくなる
新卒で初めて入社する学生は、他社の就業経験がないので企業文化が浸透しやすいです。
会社や職場への帰属意識を高めることができるため、中途入社と比べて早期退職を防げるようになります。
中途採用では前職のやり方に固執しやすいので、新しい職場の文化に馴染めないケースがあります。
職場に順応できなければ退職へとつながってしまい、企業としても不要なコストがかかってしまいます。
そのため自社の企業文化が浸透しやすい点は、新卒の障がいのある方を雇用するメリットといえるでしょう。
障がい者の新卒採用を行う2つのデメリット
障がい者の新卒採用を行うことで、以下のような2つのデメリットもあります。
- 早期退職の恐れがある
- 障がい特性からトラブルが発生しやすい
良い点と悪い点を理解しながら、実施すべきか検討しましょう。
1.早期退職の恐れがある
新卒の障がいのある方は企業の文化を受け入れやすいですが、人によっては早期退職の恐れがあります。
障がいのある方の離職率は一般的な新卒生と比べて高い傾向にあり、職業総合センターが公表している「障害者の就業状況等に関する調査研究」のデータによると就職後1年経過した時点での職場定着率は身体障がい者が71.5%、精神障がい者が49.3%です。
精神障がい者を対象とした場合、入社してから1年以内に2人に1人が退職している計算です。
新卒の障がいのある方は就業経験がないことから、社会人としての基礎知識・業務を教育するためにコストがかかります。
早期退職になると育成コストや採用時のコストが無駄になるため、新卒の障がいのある方が働きやすい環境の整備が必要になるでしょう。
2.障がい特性からトラブルが発生しやすい
新卒の障がい者雇用では、障がいのある方の特性からトラブルが発生しやすいです。新卒の障がいのある方は職務経験がないため、業務のなかで障がいの特性や症状がどのように表れるのか分かりません。
例えば精神障がい者の場合、働く環境にストレスを感じると自分がどのような行動を取るのか把握が難しいです。また、社内の従業員が障がいのある方の特性を理解していなければ、人間関係が悪化する原因にもなります。
ほかにも適切な配慮ができず、業務遂行に支障が出る可能性も高いです。
雇用後のトラブルを防ぐには、大学生活でどんな配慮を受けていたのかチェックしながら自社で対応できるか考えることが大切です。
新卒障がい者採用で理解しておくべきポイント
新卒障がい者採用で理解しておくべきポイントとして、以下の3点があります。
- 中途採用・一般採用との違い
- 採用手法のポイント
- 面接時のポイント
それでは詳しく解説します。
中途採用・一般採用との違い
中途採用は個別の配慮を重視することから有期雇用契約を結ぶことが多いですが、新卒採用では一般採用と同じく正社員であれば無期雇用契約を前提としています。
企業によっては総合職のみを募集していますが、要求する人材の水準も高くなっていきます。
合理的配慮の観点から人材要件に違いを設ける企業もあり、障がいのある方の新卒採用は転勤がない地域社員、一般採用は転勤を伴う総合職など職制の違いを設けて配慮することも多いです。
採用手法のポイント
新卒採用では、就活フェアや就活イベント、就職サイト、人材紹介業者からの紹介などの方法があります。
オフィスで勤務する事務職を希望する障がいのある方は、障がい者雇用専門の就活フェアや就活イベント、障がい者向けの就職サイトを活用しながら就職活動を進めていきます。
工場や店舗のバックヤード系業務などに対応できる知的障がい者を採用したい場合、特別支援学校などの教育機関から紹介を受ける方法も最適です。
特別支援学校からの紹介であれば、採用後に学生の障がい特性を理解している先生と相談しながら支援を受けられるメリットがあります。
学生は就業経験がないことから、障がいの特性がいつ発生しても対応できるように特別支援学校や福祉機関、障がい者採用支援をおこなっている人材紹介事業者からのサポートを受けるようにしましょう。
面接時のポイント
新卒の障がいのある方と面接をおこなう際には、個々の障がい特性を把握しながら必要な配慮事項をチェックしておくことが大切です。
ただし、新卒の学生は就業経験がないため、働いているイメージを掴めず配慮してほしいポイントをうまく伝えられないこともあります。
面接では企業側の経験や知識も必要であり、自社でどのような対応ができるのかを想定しながら進める必要があります。障がいのある方の中途採用に取り組んでいる企業なら、学生からの情報を自社の障がい者雇用の実績に当てはめながら配慮を検討可能です。
支援機関や障がい者専門の人材紹介事業者からの支援を受ければ、新卒の障がいのある方が自分の言葉で伝えられるように支援してもらえるでしょう。
新卒障がい者を採用後に離職率を下げるポイント
新卒障がい者を採用後に離職率を下げるためには、定期的に話を聞ける機会を設けることが重要です。職場で困ったことがないかを聞くことで、人間関係や業務内容に関する問題を解決できるようになります。
とくに障がいのある方は一般的な社員と比べられることが多く、コンプレックスに感じるケースも少なくはありません。
そのため社内全体が障がいのある方への理解を深めながら、個別に配慮できる環境づくりを進めることが大切です。
まとめ
今回は、障がいのある方の新卒採用で理解しておくべき基礎知識や取り組むポイント、新卒採用を行うメリット・デメリット、採用後に離職率を下げるポイントまで詳しく解説しました。
障がいのある方の雇用率は年々増加傾向にあり、多くの企業が積極的に新卒採用に取り組んでいます。企業のイメージアップにつながり、職場環境に合った人材採用や企業文化が浸透しやすくなる点でも新卒の障がい者雇用はメリットが大きいです。
ただし、早期退職の恐れや障がい特性によるトラブルが発生しやすいため、新卒の障がい者雇用を進めるときは環境の整備や社内の理解を深める取り組みをおこなうようにしましょう。

この記事を書いた人
サンクスラボ編集部
サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。
