障がい者雇用の除外率制度とは?計算方法や今後の引き下げについて解説
- 公開日:
- 2025.04.22
- 最終更新日:
- 2025.04.24

日本の企業は、障害者雇用促進法に基づき、常時雇用する労働者が40人以上の場合は原則として障害者雇用の義務があります。しかし、職務の性質や内容によっては障がい者の雇用が難しい場合もあるでしょう。
そのため、政府は業種によっては「除外率制度」を適用し、障がい者の雇用義務を軽減しています。
今回は、障害者雇用の除外率制度の概要や計算方法を紹介します。
目次
障害者雇用の除外率制度とは?概要を解説
障害者雇用の除外率制度とは、障がい者の雇用が厳しい仕事が多い業種に認められている制度です。現在の障害者雇用促進法では、常時雇用している従業員が40人以上いる会社の事業主は実雇用率が2.5%を上回る障がい者を雇用する義務があります。
しかし、職種や仕事の内容によっては雇用率を適用するのが難しいケースもあるでしょう。そのため、職種によって政府は「除外率制度」を適用し、障がい者の雇用義務を軽減しています。
ただし、2002年に行われた障害者雇用促進法の改正によって除外率制度の廃止が決定しているため、現在は徐々に制度の縮小を実施している状態です。
除外率は年を追うごとに低下したりなくなったりしていきます。現在、除外率制度が適用されている職種でも、こまめに除外率のチェックが必要です。
障害者雇用の除外率制度が適用されている職種
2025年4月現在、障害者雇用の除外率制度が適用されている職種は製造業や倉庫業、水運業、高等教育、医療職などです。障がい者が就業すると、安全かつ的確な業務の遂行が難しいとされる職業と考えるとイメージしやすいでしょう。
具体的な職種や除外率の一例は以下の表のとおりです。
業種 | 除外率 |
・非鉄金属製造業・倉庫業 ・船舶製造・修理業、船用機関製造業 ・航空運輸業 ・国内電気通信業 | 5% (2025年4月廃止) |
・採石業、砂・砂利・玉石採取業 ・水運業 ・窯業原料用鉱物鉱業・その他の鉱業 | 10%(2025年4月廃止) |
・非鉄金属第一次製錬・精製業 ・集配配達業以外の貨物運送取扱業 | 15%(2025年4月より5%) |
・建設業 ・鉄鋼業 ・道路貨物運送業 ・郵便業 | 20%(2025年4月より10%) |
・港湾運送業 | 25%(2025年4月より15%) |
・鉄道業 ・医療業 ・高等教育機関 | 30%(2025年4月より20%) |
・林業 | 35%(2025年4月より25%) |
・金属鉱業 ・児童福祉事業 | 40%(2025年4月より30%) |
・特別支援学校 | 45%(2025年4月より35%) |
・石炭・亜炭鉱業 | 50%(2025年4月より40%) |
・道路旅客運送業 ・小学校 | 55%(2025年4月より45%) |
・幼稚園 ・幼保連携型認定こども園 | 60%(2025年4月より50%) |
・船員等による船舶運航等の事業 | 80%(2025年4月より70%) |
引用:厚生労働省「除外率制度について」
この表を見ると、障害者雇用の除外率制度が適用されるのは、「本人や周囲の安全が確保されていないと大事故に発展する可能性がある仕事」「他人をサポートしたり支援したりする仕事」「業務を行うのに資格が必要な仕事」の3種類です。
業務についてより詳しく知りたい方は厚生労働省が公開している「障害者雇用率制度・納付金制度について関係資料」をチェックしてみてください。
障害者雇用の除外率を計算する方法
障害者雇用の除外率を算出するには、「常用雇用者数×除外率」の計算式を用います。例えば、常時雇用者数が50人、除外率が50%の場合は「50×0.5=25」となります。実雇用率が2.5%なので、雇用しなければならない障がい者の人数を算出するには「(50-25)×0.025=0.624」となり、障がい者を雇用する義務が免除されていることがわかります。
なお、障害者雇用の除外率が適用されない場合は「50×0.025=1.25」なので、最低1名は障がい者を雇用しなければなりません。常用雇用者数が多く除外率が高くなるほど除外人数が多くなる仕組みです。
障害者雇用の除外率が適用されている職種は、一度何人の雇用義務が免除されるか確認してみましょう。
今後の除外率制度の引き下げはどうなる?
除外率制度は廃止が決まっている制度です。しかし、廃止される時期は正確に決められていません。2025年4月より、15年ぶりに利率が引き下げられます。
今まで除外率制度を利用してきた会社の中には、雇用しなければならない障がい者の人数が増えて、求人を出しているところもあるでしょう。
ここでは、除外率制度の現状や将来の引き下げについて解説します。
除外率制度は3度引き下げられている
除外率制度は、2002年に廃止が決まって以来2004年、2008年の2回、利率が引き下げられています。以前は、前項に記載している表の職種以外に、「タイヤ・チューブ製造業」をはじめとする6業種が対象になっていました。
しかし、見直しによって対象外になっています。また、2025年4月より10年以上ぶりに3度目となる利率が引き下げられ、倉庫業や採石業、砂・砂利・玉石採取業 などが対象外になりました。
また、他の対象になっている職種の利率も下げられています。
これにより、障がい者を新しく雇い入れる必要が生じたり、人数を増やしたりする必要がある会社もあるでしょう。
また、これからも除外率は引き下げられたり特定の職種を対象外としたりする可能性は十分にあります。管轄は厚生労働省なので、必要ならばホームページの該当箇所を定期的にチェックしておきましょう。
除外率制度にかかわらず障害者でも働きやすいように職場を整えることが大切
除外率制度により、今まで障がい者の雇用を免除されていた会社もこれから雇用義務が生じる可能性が十分にあります。また、いつ除外率制度が廃止されたり除外率が引き下げられたりするのかは未定です。
3回目の除外率の引き下げや職種の減少は前回の改定より10年以上が経っています。しかし、4回目の改定は数年以内にくる可能性は十分にあるでしょう。
障がい者は単に雇用するだけでなく、仕事を任せる必要があります。障がいの特性を理解して無理のない範囲で仕事をしてもらうには、職場全体で環境を整え、従業員が障害を理解することが重要です。
短期間ではできないため、現在除外率制度によって障がい者の雇用を免除されている会社であっても、障がい者を雇用できる環境を整えておきましょう。
まとめ
今回は、政府によって定められた「除外率制度」の概要や適用になる上限、障がい者の雇用義務がどのくらい軽減されるか計算する方法などを紹介しました。
「除外率制度」は、すでに廃止が決まっている制度です。しかし、いつ廃止になるかは明確になっていません。2025年4月より10年以上ぶりに除外率制度が改定され、いくつかの業種が対象外になりました。
また、除外率の引き下げも決定し、改定によって雇用する障がい者が増えたり新しく雇用する必要が生まれたりするところもあるでしょう。
障がい者をスムーズに雇用してストレスないように働いてもらうためには、職場の環境を整えて必要ならば新しい仕事を創出する必要があります。一朝一夕にはできないことなので、今から少しずつ環境を整えておきましょう。そうすれば、いざ雇用義務が生じたときでもスムーズに求人が出せるはずです。
この記事を書いた人
サンクスラボ編集部
サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。
