トップ障がい者就職・転職Tips障害者雇用で事務は難しい?理由と就職に求められる3つのポイント

障害者雇用で事務は難しい?理由と就職に求められる3つのポイント

公開日:
2026.01.29
最終更新日:
2026.01.29

「障害者雇用で事務職に就くのは難しい」という話を耳にし、就職活動に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。実際、身体的な負担が少ない事務職は非常に人気が高く、競争率が激化しているのが現状です。特に、障害者雇用枠での事務職は「狭き門」と言われることも少なくありません。

しかし、決して就職が不可能なわけではなく、事務職で就職できている方も多くいらっしゃいます。事務職が難しいと言われる背景や市場動向を正しく理解し、適切な対策を講じれば、採用のチャンスは十分に広がります。

この記事では、なぜ障害者雇用の事務職が難しいのかその理由を深掘りし、企業が求めるスキルや採用を勝ち取るための具体的なポイントを解説します。

障害者雇用で事務職が難しいと言われる主な理由

障害者雇用において、なぜ事務職への就職や転職が「難しい」と言われるのでしょうか。その背景には、単に求人数が少ないというわけではなく、構造的な需給バランスの不均衡が存在しています。

多くの求職者が事務職を希望する一方で、企業が用意できる事務のポジションには限りがあります。ここでは、事務職の難易度を高めている「高い倍率」と「業務内容の変化」という2つの主要な要因について、詳しく解説していきます。

人気職種のため倍率が高く競争が激しい

身体的負担が少ないため応募が集中する

障害者雇用を目指す方の中には、体力的な不安を抱えている方が少なくありません。立ち仕事や肉体労働と比較して、オフィス内で座って作業ができる事務職は、身体への負担をコントロールしやすい職種です。

そのため、障害の種類や程度に関わらず、非常に多くの方が事務職を第一希望として就職活動を行います。この傾向は、特に身体障害や内部障害のある方だけでなく、精神障害のある方においても同様に見られます。

結果として、1つの事務職求人に対して数十人、場合によっては百人単位の応募が殺到することも珍しくありません。この圧倒的な応募者数が、事務職への就職を「難しい」ものにしている最大の要因です。

限られた求人枠を巡る厳しい競争環境

一般的に、企業の障害者雇用における求人は、清掃や軽作業、そして事務補助などが中心となるケースが多い傾向にあります。しかし、すべての企業が事務職のポジションを大量に用意できるわけではありません。

特に、大手企業の特例子会社や有名企業の事務職は、安定した雇用環境や充実した福利厚生が魅力であり、人気が沸騰します。求人票が公開された直後に応募を締め切ることもあり、情報のキャッチアップも含めて競争は激化しています。

このように、限られた「椅子」を巡って多くの求職者が競い合う構造になっており、未経験者やスキルの浅い方にとっては、書類選考を通過するだけでもハードルが高いのが現状です。

自動化・効率化による単純事務作業の減少

IT技術の進化と事務業務の変化

かつての障害者雇用における事務職といえば、書類のファイリング、郵便物の仕分け、単純なデータ入力といった、定型的で繰り返しの多い業務が主流でした。これらは「切り出し業務」として、障害のある方にも任せやすい仕事として位置づけられていました。

しかし、近年のIT技術の急速な進化により、状況は大きく変わりつつあります。ペーパーレス化が進み、紙の書類を整理する業務自体が減少しました。また、AI(人工知能)やOCR(光学文字認識)技術の向上により、手書き文字のデータ化なども自動で行われるようになっています。

その結果、かつては人が行っていた「単純作業」としての事務仕事が、システムによって代替されるようになり、求人数自体にも影響を与えています。

RPAの導入で求められる判断業務

さらに、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が多くの企業で進んでいます。これにより、手順が決まっているパソコン上の処理業務は、ロボットが高速かつ正確に行うようになりました。

その分、人間の事務職員に求められるのは、イレギュラーな事態への対応や、複数の部署との調整、あるいはRPAが処理したデータの内容確認といった、より高度な判断力を要する業務へとシフトしています。

「マニュアル通りに入力すればよい」という仕事は減りつつあり、状況に応じて自分で考えて動くことが求められるため、事務職に採用されるためのスキル要件が以前よりも高くなっているのです。これが、事務職への就職をより一層「難しい」ものにしています。

事務職として採用されるために求められるスキルと適性

前述の通り競争率が高く、業務レベルも上がっている障害者雇用の事務職において、採用担当者はどのような人材を求めているのでしょうか。単に「パソコンが使える」というだけでは、採用を勝ち取ることは難しくなっています。

企業が重視するのは、業務を遂行できる「ハードスキル」と、組織の一員として円滑に働ける「ソフトスキル」の両立です。ここでは、事務職の実務で具体的に必要とされるスキルと、職場定着に不可欠な適性について解説します。

実務で必要なPCスキルとコミュニケーション能力

即戦力として評価されるWord・Excelのレベル

事務職においてパソコンスキルは必須ですが、「文字入力ができる」程度ではアピールとして不十分な場合があります。企業が求めているのは、業務を効率的に進めるための実践的な操作能力です。

具体的には、Wordであればビジネス文書の作成や書式設定がスムーズに行えること、Excelであれば四則演算だけでなく、SUM関数やVLOOKUP関数、ピボットテーブルなどの機能を活用してデータ集計ができるレベルが好まれます。

また、最近ではチャットツールやWeb会議システム(ZoomやTeamsなど)の使用頻度も増えています。これらのデジタルツールに抵抗がなく、基本的な操作を習得していることも、採用選考においてプラスの評価につながる重要な要素です。

組織で働くための「ホウレンソウ」の実践

事務職は一人で完結する仕事ばかりではありません。上司からの指示を正しく理解し、同僚と連携しながら業務を進める必要があります。そこで重要になるのが、報告・連絡・相談、いわゆる「ホウレンソウ」のスキルです。

特に障害者雇用の場合、体調の変化や業務上の困りごとを、適切なタイミングで周囲に伝える能力が重視されます。我慢して抱え込み、結果として体調を崩して長期欠勤になってしまうことは、企業にとっても避けたい事態だからです。

わからないことがあればすぐに質問する、ミスをした際は隠さずに報告する、業務の進捗を定期的に伝える。こうした基本的なビジネスコミュニケーションが確実にできるかどうかが、採用の可否を分ける大きなポイントとなります。

安定して働き続けるための自己管理能力と柔軟性

長期就労の基盤となる体調管理と勤怠の安定

企業が障害者雇用で最も懸念するのは、「採用してもすぐに辞めてしまわないか」「体調を崩して休みがちにならないか」という点です。どれほど高いPCスキルを持っていても、勤怠が不安定であれば事務職として採用されるのは難しいでしょう。

そのため、自分の障害特性を正しく理解し、服薬管理や生活リズムの維持、ストレス対処などを自律的に行える「自己管理能力」が極めて重要視されます。面接の場でも、体調が悪くなった時の対処法や、普段気をつけていることについて具体的に説明できることが求められます。

安定した出勤実績は、最大の信頼の証です。就労移行支援事業所などを利用している場合は、そこでの通所実績が勤怠安定の証明として有効なアピール材料になります。

変化や突発的な業務に対応できる柔軟性

事務職の現場では、急な来客対応や電話応対、優先順位の変更など、予期せぬ出来事が日常的に発生します。マニュアル通りの業務だけでなく、こうした変化に対して柔軟に対応できる適性も求められます。

特に精神障害や発達障害のある方の中には、急な予定変更に強いストレスを感じる方もいるかもしれません。しかし、職場では「今、この資料を急ぎで作ってほしい」といった依頼が入ることもあります。

そのような場面でパニックにならず、一度手を止めて指示を確認したり、優先順位を上司に相談したりできる「柔軟性」があるかどうかもチェックされます。完璧に対応できなくても、「変更があるかもしれない」と心構えを持っておくことが、事務職として長く働くための秘訣です。

難関の事務職への就職を成功させる具体的な対策

高い競争率と求められるスキルの高度化により、障害者雇用での事務職就職は確かに難しい道のりです。しかし、戦略的に準備を進めることで、採用の確率は確実に高めることができます。

自己流の就職活動では見落としがちなポイントを押さえ、客観的な視点を取り入れることが成功への鍵となります。ここでは、難関を突破するために今日から始められる具体的なアクションプランを紹介します。

障害特性の理解と適切な配慮事項の整理

自分の「得意」と「苦手」を言語化する

就職活動を成功させるための第一歩は、徹底的な自己分析です。自分の障害特性によって、どのような業務が得意で、どのような環境や業務が苦手なのかを具体的に言語化する必要があります。

例えば、「聴覚過敏があるため電話応対は難しいが、静かな環境でのデータ入力なら長時間集中できる」や、「マルチタスクは苦手だが、マニュアルに沿った正確なチェック作業は得意」といったように詳細に整理します。

この「得意」と「苦手」を明確にすることは、自分に合った求人を見極める基準になるだけでなく、面接で企業に対して自分の強みを説得力を持って伝えるための土台となります。

「ナビゲーションブック」で合理的配慮を提案する

企業に対して、自分に必要な配慮をわかりやすく伝えるツールとして「ナビゲーションブック(自分の取扱説明書)」の作成が有効です。これは、自身の障害特性、得意なこと、苦手なこと、そして配慮してほしい事項をまとめた資料です。

重要なのは、一方的に配慮を求めるのではなく、「このような配慮があれば、この程度のパフォーマンスが発揮できる」という建設的な提案として伝えることです。例えば、「指示は口頭だけでなくメモでもいただけると、ミスなく作業できます」といった形です。

企業側も「どのような配慮が必要かわからない」という不安を持っていることが多いため、具体的な配慮事項を提示できる応募者は、採用後のマネジメントがイメージしやすく、好印象を与えやすくなります。

就労移行支援やエージェントなどの専門支援の活用

自分一人での就職活動に限界を感じているなら、専門の支援機関を積極的に活用することをおすすめします。「障害者雇用で事務職は難しい」と言われる現状を突破するためには、豊富なノウハウとネットワークを持つプロのサポートが強力な武器になるからです。

ハローワークや就労移行支援事業所、障害者専門の転職エージェントなどは、それぞれ異なる強みを持っています。これらのリソースを組み合わせることで、情報収集の質を高め、採用される可能性を広げることができます。ここでは、支援機関を利用する具体的なメリットについて解説します。

一般には出回らない「非公開求人」へのアクセス

ハローワークや求人サイトで公開されている求人は、市場全体の一部に過ぎません。特に条件の良い事務職や人気企業の求人は、応募が殺到するのを避けるために、信頼できるエージェントや支援機関だけに紹介を依頼する「非公開求人」となっているケースが多くあります。

専門の支援機関に登録することで、こうした一般には公開されていない質の高い求人情報にアクセスできるチャンスが生まれます。競争率が非常に高い公開求人だけで戦うのではなく、独自ルートを持つ支援機関を経由することで、ライバルが少ない状態で選考に進める可能性があるのです。

企業側も、支援機関を通じて紹介された人材であれば、ある程度のスキルや適性が確認されていると判断し、安心して選考を進められるというメリットを感じています。

プロによる客観的なアドバイスと選考対策

事務職への就職が難しい理由の一つに、応募書類や面接でのアピール不足が挙げられます。自分ではうまく伝えているつもりでも、企業側の視点で見ると「事務処理能力が具体的にイメージできない」「配慮事項が曖昧で不安」といった評価になることがあります。

支援機関のスタッフは、数多くの障害者雇用を支援してきたプロフェッショナルです。彼らから客観的なフィードバックを受けることで、応募書類の完成度を飛躍的に高めることができます。また、模擬面接を通じて、想定される質問への回答を準備し、本番で落ち着いて話せるようトレーニングを受けることも可能です。

さらに、自分の希望条件と市場の現実とのギャップを指摘してもらい、より現実的で採用されやすいキャリアプランを再構築することも、就職成功への近道となります。

就職後の定着支援による安心感

無事に事務職として採用された後も、新しい環境に適応できるかという不安は尽きません。特に障害者雇用の場合、入社後のトラブルや体調不良により早期離職してしまうケースも少なくないため、企業側も「定着してくれるかどうか」を非常に重視しています。

就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)などは、就職後も定期的に職場を訪問したり、面談を行ったりする「定着支援」を提供しています。仕事上の悩みや人間関係のトラブルを早期に相談できる第三者がいることは、長く働き続ける上で大きな支えとなります。

選考の段階で「支援機関の定着サポートが入る」と伝えることは、企業側にとっても安心材料となり、採用判断においてプラスに働く要素の一つです。

障害者雇用の事務職に関するよくある質問

ここまで、障害者雇用における事務職の難しさや対策について解説してきました。最後に、事務職を目指す方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. 事務の実務経験が全くなくても採用されますか?

未経験でも採用される可能性はゼロではありませんが、経験者に比べてハードルが高くなるのは事実です。特に中途採用が中心となる障害者雇用では、即戦力が求められる傾向にあります。

未経験から事務職を目指す場合は、就労移行支援事業所などでPCスキルの訓練を受け、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などの資格を取得して基礎力を証明することが重要です。また、これまでの職業経験の中で、少しでもPCを使った業務や正確性が求められる作業があれば、それを積極的にアピールしましょう。

ポテンシャル採用を行っている企業や、まずは事務補助からスタートできる求人を探すのも一つの戦略です。

Q2. 事務職に就くために有利な資格はありますか?

事務職において「この資格があれば必ず採用される」というものはありませんが、スキルの客観的な証明として評価されやすい資格はいくつかあります。

代表的なものは、WordやExcelの操作スキルを証明する「MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)」や、経理事務を目指す場合の「日商簿記検定」などです。また、ビジネス全般の知識を問う「秘書検定」なども、ビジネスマナーが身についていることの証明として有効な場合があります。

ただし、資格そのものよりも「その知識を使って実務で何ができるか」が重視されます。資格取得はあくまでスタートラインと考え、実務を想定したスキルの習得を心がけてください。

Q3. 年齢が高いと事務職への転職はさらに難しいですか?

一般的に、事務職は若年層の採用が活発な傾向があり、年齢が上がるにつれて求人の選択肢が狭まることは否定できません。特に未経験で年齢が高い場合、新しい業務システムへの適応力などを懸念されることがあります。

しかし、年齢を重ねているからこそ持っている社会人経験や、落ち着いた対応力、安定した勤怠実績などは大きな強みになります。豊富な人生経験を活かし、周囲と協調しながら堅実に業務をこなせる姿勢をアピールできれば、年齢に関わらず採用に至るケースは十分にあります。

年齢を理由に諦めるのではなく、これまでの経験を事務職でどう活かせるかを具体的に言語化し、自身の強みとして提案していくことが大切です。

まとめ:現状を理解し適切な準備で事務職を目指そう

この記事では、「障害者雇用で事務職は難しい」と言われる理由や、採用されるために必要なスキル、具体的な対策について詳しく解説してきました。

確かに、事務職は身体的負担が少ないため人気が集中しており、高い倍率を勝ち抜かなければならない「狭き門」です。さらに、IT化やRPAの導入により、単なるデータ入力などの単純作業は減少し、より高度な判断力やコミュニケーション能力が求められるようになっています。

しかし、「難しい」ことは「不可能」を意味しません。企業が求めているのは、基本的なPCスキルに加え、自身の障害特性を理解し、安定して業務を遂行できる自己管理能力を持った人材です。自分の得意・不得意を整理し、適切な配慮を提案できるよう準備すること、そして就労移行支援などの専門機関を活用して客観的なアドバイスを受けることで、採用の確率は確実に高まります。

市場の現実を正しく理解した上で、戦略的に準備を進めれば、あなたに合った事務職の職場に出会えるチャンスは必ずあります。焦らず一歩ずつ、必要なスキルと環境を整えていきましょう。

記事監修者:衛藤 美穂

サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム

アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。

■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得

お役立ち資料

download