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障害者雇用枠とは?一般枠との比較やメリット・デメリットについて解説

公開日:
2026.01.16
最終更新日:
2026.01.30

障がいのある方が就職活動を行う際、自身の特性に合わせた働き方を選ぶための重要な選択肢の一つが「障害者雇用枠」です。障害者雇用枠とは、障害者雇用促進法に基づき、企業などが障害のある方を雇用するために設けた専用の採用枠のことを指します。

一般の採用枠(一般枠)とは異なり、障害に対する理解や配慮を前提とした働き方が可能となるため、無理なく長く働き続けたいと考える方にとって大きなメリットがあります。しかし、具体的な仕組みや一般枠との違い、給与面などが分からず、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、障害者雇用枠の基礎知識から、メリット・デメリット、必要となる障害者手帳の条件、そして実際の就職活動に役立つ情報を網羅的に解説します。ご自身の状況に合った最適な働き方を見つけるための参考にしてください。

障害者雇用枠の仕組みと一般枠との決定的な違い

障がいのある方が就労を目指す際、大きく分けて「一般枠」と「障害者雇用枠」という2つの入り口が存在します。この2つは単に応募の窓口が違うだけでなく、採用後の働きやすさや求められる役割、そして職場からのサポート体制に大きな違いがあります。

障害者雇用枠は、文字通り障害のある方を対象とした特別な採用枠であり、障害特性に応じた「合理的配慮」を受けながら働くことが前提となっています。

一方、一般枠は障害の有無にかかわらず全ての人が対象となり、基本的には配慮を求めずに業務を遂行することが求められます。

法律で定められた「障害者のための採用枠」

障害者雇用枠は、企業の善意だけで設けられているものではありません。「障害者雇用促進法」という法律によって、一定規模以上の企業や国、地方公共団体に対して、従業員の一定割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています。

この割合を「法定雇用率」と呼びます。例えば、民間企業の法定雇用率が2.5%の場合、従業員を40人以上雇用している企業は、少なくとも1人の障害者を雇用しなければなりません(2025年時点)。この義務を果たすために企業が用意するのが、障害者雇用枠なのです。

この制度の目的は、障害のある方が地域で自立した生活を送れるよう、職業生活における機会を確保することにあります。そのため、この枠での採用は、企業が社会的な責任を果たすための重要な取り組みとしても位置づけられています。

一般枠との比較:合理的配慮と業務内容

一般枠と障害者雇用枠の最も大きな違いは、「合理的配慮」の有無にあります。一般枠(クローズ就労を含む)では、他の社員と同じ条件で成果を出すことが求められ、障がいを理由とした業務量の調整や特別な配慮は、基本的には期待できません。あくまで「自助努力」で環境に適応する必要があります。

対して障害者雇用枠では、採用の段階から障がいがあることを企業側が認識しています。そのため、「定期的な通院のために休暇を取りたい」「聴覚過敏があるため静かな環境で作業したい」「手順書がないと混乱するためマニュアルを用意してほしい」といった、個々の障害特性に応じた環境調整(合理的配慮)を受けることが可能です。

業務内容についても違いがあります。一般枠では幅広い業務や責任あるポジションを任されることが多い一方、障害者雇用枠では、本人の能力や適性を見極めつつ、負担が大きすぎない範囲での業務切り出しや、補助的な業務からスタートするケースが多く見られます。

障害者雇用枠で働くメリットとデメリット

「障害者雇用枠で働くと、具体的にどのような生活になるのか」という点は、求職者にとって最も気になる部分でしょう。専用の枠である以上、働きやすさが確保されている一方で、一般枠と比較した際の課題も存在します。

自分に合った働き方を選択するためには、良い面ばかりを見るのではなく、現実的な側面もしっかりと理解しておくことが大切です。ここでは、実際に障害者雇用枠で働くことのメリットとデメリットを、公平な視点で解説します。

【メリット】安定した環境と理解のある職場

最大のメリットは、障がいに対する理解がある環境で働けることです。周囲が障害特性を知っているため、体調不良時の休憩や通院のための休暇取得などがスムーズに行えます。また、苦手な業務を避けたり、得意な業務に集中させてもらえたりといった業務内容の調整も相談しやすい傾向にあります。

こうした環境は、精神的な安心感につながります。無理をして周囲に合わせる必要がないため、ストレスが軽減され、結果として長く安定して働き続けることができます。実際、障害者雇用枠での就労は、一般枠と比較して定着率が高いというデータもあります。

また、就職活動の面でもメリットがあります。障害者雇用枠の求人は、最初から障害者の採用を目的としているため、一般枠での就職活動に比べて競争率が低いケースがあります。自身の障害について隠す必要がなく、面接でも配慮事項について率直に話し合えるため、ミスマッチが起こりにくいのも特徴です。

【デメリット】職種や給与面の傾向

一方で、デメリットとして挙げられることが多いのが、職種の限定性と給与水準です。障害者雇用枠では、事務補助、清掃、軽作業といった、比較的定型的な業務や補助業務が中心となる傾向があります。そのため、専門スキルを活かしたい方や、幅広い業務に挑戦したい方にとっては、物足りなさを感じる場合があるかもしれません。

給与面についても、一般枠と比較すると低めに設定されることが多いのが実情です。これは、雇用形態が契約社員やパートタイムからスタートするケースが多いことや、業務範囲が限定されていることが影響しています。

もちろん、フルタイム勤務や正社員としての採用であれば一般枠と同等の給与を得られることもありますが、全体的な傾向としては理解しておく必要があります。

また、キャリアアップのスピードも一般枠より緩やかになることがあります。管理職を目指したり、責任の重いプロジェクトを任されたりする機会が限定されるケースもあり、ご自身のキャリアプランとの兼ね合いを慎重に考える必要があります。

対象となる条件と「障害者手帳」の種類

障害者雇用枠に応募するためには、原則として「障害者手帳」を所持していることが必須条件となります。企業が障害者を雇用したとして国に報告し、法定雇用率に算定するためには、公的な証明である手帳の確認が必要だからです。

医師の診断書があるだけや、通院しているという事実だけでは、障害者雇用枠を利用することはできません。ここでは、対象となる具体的な手帳の種類や、等級が採用に与える影響について詳しく見ていきましょう。

必須となる3種類の障害者手帳

障害者雇用枠の対象となる手帳は、主に以下の3種類です。

  • 身体障害者手帳:視覚、聴覚、肢体不自由、内部障害(心臓機能障害など)など、身体機能に障害がある方に交付されます。
  • 精神障害者保健福祉手帳:統合失調症、うつ病、てんかん、発達障害などにより、日常生活や社会生活に制約がある方に交付されます。
  • 療育手帳:知的障害がある方に交付されます(地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など名称が異なる場合があります)。

これらのいずれかの手帳を取得しており、有効期限内であることが応募の条件となります。就職活動を始める前に、ご自身の手帳の種類と有効期限を必ず確認しておきましょう。

申請中や更新中の場合は、応募書類にその旨を記載することで選考が進められるケースもありますが、基本的には手帳の交付を受けていることが前提です。

等級による違いと採用への影響

障害者手帳には、障がいの程度に応じて「等級」が定められています。身体障害者手帳は1級〜6級(7級は単独では交付されない)、精神障害者保健福祉手帳は1級〜3級、療育手帳はA(重度)・B(中軽度)のように区分されます。

求職者側からすると「等級が重いと採用されにくいのではないか」と不安になるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。企業側には、重度障害者を雇用した場合、法定雇用率の算定上、1人を2人分としてカウントできる(ダブルカウント)等の制度があります。

そのため、企業の雇用状況によっては、重度障害者の方を積極的に採用したいと考えるケースもあります。

逆に、軽度の等級であっても、業務遂行能力や安定して出勤できるかどうかが重視されます。等級そのものよりも、「現在の等級でどのような配慮が必要か」「どのような業務なら遂行可能か」を具体的に企業へ伝えられるかどうかが、採用においては重要になります。

障害者雇用枠での就職活動と給与の実態

障害者雇用枠での就職を目指す場合、一般枠とは異なる活動の流れや、特有の給与事情を理解しておくことが成功への鍵となります。特に経済的な自立を目指す方にとって、給与の実態は避けて通れないテーマです。

ここでは、実際の就職活動で直面する給与の仕組みや、将来的なキャリアの可能性、そして自分に合った働き方を選ぶための判断基準について解説します。現状を知ることで、より現実的で満足度の高い就職活動を進めることができるでしょう。

給与水準とキャリアアップの可能性

障害者雇用枠の給与については、「最低賃金より安くなるのではないか」と心配されることがありますが、労働基準法などの労働関係法令は一般枠と同様に適用されます。したがって、最低賃金が保証されるのはもちろんのこと、残業代や有給休暇などの権利も守られます。

ただし、前述の通り、雇用形態がパート・アルバイトや契約社員であることが多いため、月給制ではなく時給制の場合があり、結果として年収が一般枠の正社員より低くなる傾向があります。厚生労働省の調査などを見ても、障害者雇用枠の平均給与は一般枠に比べて低い水準にあるのが現実です。

しかし近年では、人手不足やダイバーシティ(多様性)推進の流れを受け、障害者雇用枠でも正社員登用制度を設けたり、最初から正社員として募集したりする企業が増えてきています。また、入社後にスキルを身につけ、業務範囲を広げることで昇給やキャリアアップを実現している事例も確実に増えています。

求人票を見る際は、初期の給与だけでなく、正社員登用の有無や昇給の実績なども確認することが重要です。

自分に合った働き方(オープン就労)を選ぶには

障害者雇用枠を利用して働くことを「オープン就労」と呼びますが、これを選ぶべきか、あえて一般枠(クローズ就労)を目指すべきかは、個人の状況によって異なります。判断の基準としては、「配慮なしで週5日フルタイム勤務が可能か」「体調管理を独力で完結できるか」といった点が挙げられます。

もし、通院や体調の波によって安定した勤務に不安がある場合は、まずは障害者雇用枠で基盤を作り、実績を積んでからステップアップを目指すのも一つの賢明な戦略です。無理をして一般枠に入り、早期離職してしまうよりも、配慮を受けながら長く働き続ける方が、長期的なキャリア形成においてはプラスになることが多いからです。

自分一人での判断が難しい場合は、ハローワークの専門窓口や、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関を活用することをおすすめします。プロの視点から、あなたの特性や希望に合った働き方や求人をアドバイスしてもらえるため、就職活動の心強い味方となってくれるでしょう。

障害者雇用枠の面接で重視されるポイントと伝え方

障害者雇用枠での就職活動において、書類選考と同様に重要となるのが面接です。一般枠の面接では、志望動機や過去の実績、スキルが中心に問われますが、障害者雇用枠の面接では「自身の障害について正しく理解し、説明できるか」という点が非常に重視されます。

企業側は、採用後にどのような配慮を行えばあなたが安定して力を発揮できるかを知りたいと考えています。そのため、障がいの特性や必要なサポートについて、具体的かつ客観的に伝える準備をしておくことが採用への近道となります。ここでは、面接で特に意識すべきポイントを解説します。

自身の障害特性を正しく伝える準備

面接官に対して、自分の障がいについて分かりやすく説明するためには、まず自分自身が障害特性を深く理解している必要があります。これを「自己理解」と呼びます。

例えば、「ストレスがかかると体調を崩しやすい」という曖昧な表現ではなく、「突発的な業務変更があると混乱しやすいため、事前の連絡があれば対応できる」といったように、状況と反応をセットで整理しておきましょう。

また、障害者雇用枠の面接では、現在の体調や通院状況についても詳しく聞かれることがあります。服薬の内容や副作用による眠気の有無、通院頻度などを隠さずに伝えることが大切です。自身の状態を正確に伝えることは、入社後のミスマッチを防ぎ、無理なく働き続けるための第一歩となります。

必要な配慮事項を具体的に提示する

「どのような配慮が必要ですか?」という質問に対して、「できる範囲でお願いします」や「特にありません」と答えてしまうのは避けた方が無難です。障害者雇用枠とは合理的配慮を前提とした働き方であるため、企業側は何を準備すべきか具体的な情報を求めています。

「電話対応が難しいため、メールやチャットでの連絡を中心にお願いしたい」「聴覚過敏があるため、イヤーマフの使用を許可してほしい」「定期通院のために月1回平日に半休が必要」など、働く上で不可欠な条件を明確に提示しましょう。

この際、「配慮があれば業務遂行が可能である」というポジティブな姿勢もあわせて伝えることで、企業側に安心感を与えることができます。

障害者雇用枠についてよくある質問

これまで障害者雇用枠の仕組みやメリットについて解説してきましたが、いざ応募を検討し始めると、細かい疑問が出てくるものです。特に初めて障害者手帳を取得した方や、これから就職活動を始める方から多く寄せられる質問をまとめました。

制度の細かなルールや実務的な側面を知っておくことで、不安を解消し、スムーズに活動を進めることができます。ここでは代表的な3つの疑問について回答します。

手帳を申請中でも障害者雇用枠に応募できますか?

基本的には、障害者手帳の交付を受けてからの応募が原則となります。障害者雇用枠とは、企業が雇用率制度に基づいて障害者を雇用するための枠組みであり、採用時点で手帳を所持していることが要件となるケースが大半だからです。

ただし、既に申請済みで交付の見込みが立っている場合、企業によっては選考を進めてくれることもあります。応募書類の備考欄や面接時に「現在申請中で、〇月頃に交付予定です」と明確に伝えることで、柔軟に対応してもらえる可能性があるため、まずは応募先や支援機関に相談してみることをおすすめします。

新卒でも障害者雇用枠での就職は可能ですか?

はい、可能です。多くの企業が新卒採用において障害者雇用枠を設けており、一般の学生と同様に就職活動を行うことができます。大学や専門学校に在籍している場合、学校のキャリアセンターや就職課に障害者向けの求人が届いていることもあります。

新卒での障害者雇用枠は、ポテンシャル採用の側面が強く、入社後の研修制度が充実している企業も少なくありません。学生時代からインターンシップに参加したり、就労移行支援事業所を併用したりして準備を進める学生も増えています。

障害者雇用枠で就職した場合、副業はできますか?

副業が可能かどうかは、障害者雇用枠であるかどうかにかかわらず、就業規則などの企業の規定によります。近年は副業を解禁する企業が増えていますが、全ての会社で認められているわけではありません。

障がいのある方の場合、本業での疲労が休日の副業によって蓄積し、体調を崩してしまうリスクも考慮する必要があります。まずは本業の業務に慣れ、生活リズムが安定してから検討するのが賢明です。希望する場合は、必ず事前に職場へ確認しましょう。

まとめ

本記事では、「障害者雇用枠とは何か」という基礎知識から、一般枠との違い、メリット・デメリット、そして就職活動のポイントまでを解説してきました。

障害者雇用枠は、障害のある方が自身の特性に合わせて、無理なく安定して働き続けるための重要な制度です。一般枠と比較して給与面や職種の選択肢に課題を感じる場合もあるかもしれませんが、配慮のある環境で長く働けるという安心感は、何にも代えがたいメリットと言えます。

大切なのは、「障害者雇用枠」と「一般枠」のどちらが優れているかではなく、ご自身の障害の状態やキャリアプラン、大切にしたい価値観に合っているのはどちらかを見極めることです。自己分析を行い、必要であれば支援機関の力も借りながら、あなたらしく輝ける働き方を見つけてください。

記事監修者:衛藤 美穂

サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム

アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。

■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得

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