トップ障がい者就職・転職Tips障害者雇用は転職回数が多いと不利?企業の懸念や退職理由の書き方・伝え方を解説

障害者雇用は転職回数が多いと不利?企業の懸念や退職理由の書き方・伝え方を解説

公開日:
2026.02.27
最終更新日:
2026.02.27

障害者雇用枠での就職・転職活動において、「これまでの転職回数が多いと選考で不利になるのではないか」と不安を感じている方は少なくありません。一般的に、日本企業は長期雇用を前提とすることが多く、履歴書の職歴欄が埋まっていると、それだけで「定着性に欠ける」と判断されるリスクがあるのは事実です。

しかし、障害者雇用の現場では、回数そのものよりも「なぜ退職に至ったのか」という理由や、現在の体調の安定性が重視される傾向にあります。

適切な伝え方や対策を講じることで、転職回数の多さをカバーし、企業に安心感を与えることは十分に可能です。この記事では、障害者雇用における転職回数の影響や、企業が抱く懸念点を詳しく解説します。

また、ネガティブになりがちな退職理由を前向きに伝える書き方のコツや、自身の障害特性を整理してアピールにつなげる方法など、採用を勝ち取るための具体的な対策をご紹介します。

障害者雇用で「転職回数が多い」と不利になる?判断基準と実情

一般枠と同様に、障害者雇用においても転職回数が極端に多い場合、選考で不利に働く可能性はゼロではありません。採用担当者は、長く安定して働いてくれる人材を求めているため、短期間での離職を繰り返している応募者に対して慎重になるのは自然なことです。

しかし、障害者雇用では、障がいの発症や受傷、あるいは自分に合う環境を見つけるまでの試行錯誤など、やむを得ない事情が背景にあることが理解されやすい側面もあります。

そのため、「転職回数が多い=即不採用」という単純な図式ではありません。重要なのは、企業がどの程度の回数や期間を「多い」と判断するのか、その基準を知り、実情に合わせた対策を練ることです。ここでは、一般的な目安と企業の視点について解説します。

企業が「転職回数が多い」と感じる回数と期間の目安

企業が転職回数を気にする際、明確なガイドラインがあるわけではありませんが、年齢やこれまでのキャリアに応じた一般的な目安が存在します。一般的には、20代であれば3回以上、30代であれば4〜5回以上転職を繰り返していると、「転職回数が多い」という印象を持たれやすくなります。

特に、年齢に対して職歴の数が多すぎると、一つの職場での経験が浅いとみなされ、スキル定着への懸念にもつながります。

年代別にみる許容範囲の傾向

20代の若手層では、まだキャリア形成の途中であると見なされる一方で、忍耐力や適応力を厳しく見られる傾向があります。そのため、初めての就職から短期間で2回以上の転職をしていると、警戒されることが多くなります。

一方、40代以降のベテラン層であれば、ある程度の転職回数はキャリアの積み重ねとして許容される範囲が広がりますが、それでも一貫性のない転職を繰り返している場合はマイナス評価となるでしょう。年齢相応のスキルや経験が蓄積されているかが、判断の分かれ目となります。

短期離職の連続性が与える影響

転職の回数以上に企業が注目するのは、それぞれの在籍期間です。例えば、転職回数が3回あったとしても、それぞれの職場で3年以上勤務していれば、「一定の継続力がある」と評価されることがあります。

逆に、数ヶ月から1年未満での退職が連続している場合は、注意が必要です。特に「試用期間での退職」や「半年未満の離職」が続いていると、採用してもまたすぐに辞めてしまうのではないかという「早期離職リスク」が高いと判断されやすくなります。

回数そのものよりも「退職理由」と「一貫性」が重視される

障害者雇用の選考において、採用担当者が最も知りたいのは「自社で長く活躍できるかどうか」という点です。そのため、転職回数という数字そのものよりも、それぞれの退職に至った経緯や理由が重視されます。

過去の退職理由に納得できる事情があり、現在はその課題が解決されている、あるいは対処法が確立されているのであれば、回数の多さは決定的な不採用理由にはなりません。

やむを得ない事情がある場合の評価

例えば、障がいの発症により以前の職務が困難になった、通院の配慮が得られず体調が悪化した、といった障がいに起因するやむを得ない事情は、正直に伝えることで理解を得やすくなります。

また、企業の倒産や事業所閉鎖など、本人の責任ではない会社都合の退職も、ネガティブな評価には直結しません。大切なのは、過去の退職理由を隠すことなく、かつ他責に終始しない形で説明できるかどうかです。

キャリアの一貫性と前向きな姿勢

転職を繰り返していても、そこに「スキルアップのため」「自分にできる業務を模索するため」といった一貫した目的があれば、評価は変わります。障がい特性と向き合いながら、自分に合った働き方を探求してきたプロセスとして説明できれば、むしろ自己理解が深いというポジティブな印象を与えることも可能です。

過去の経験を糧に、次は長く働きたいという強い意志と根拠を示すことが、回数の多さをカバーする鍵となります。

企業が転職回数の多さを懸念する3つの理由

採用担当者が転職回数の多い応募者を前にしたとき、具体的にどのようなリスクを懸念しているのでしょうか。大きく分けると、「ストレス耐性への不安」「職場定着への懸念」「採用コストの損失リスク」の3点が挙げられます。これらの懸念は、企業が安定した組織運営を行う上で無視できない要素です。

応募者側としては、これらの懸念を先回りして払拭できるような説明を準備する必要があります。ここでは、特に障害者雇用において重視される2つのポイントについて深掘りします。

ストレス耐性への不安と早期離職リスク

企業が最も恐れるのは、採用した人材が早期に離職してしまうことです。

転職回数が多いということは、何か嫌なことや困難な壁にぶつかったときに、乗り越えようとするのではなく、環境を変えることで解決しようとする傾向があるのではないか、と推測されがちです。特に障害者雇用においては、業務上のストレスや環境変化が体調に与える影響が大きいため、ストレス耐性に対する不安はより一層強くなります。

障がい特性と体調管理への懸念

「体調を崩して退職」という経歴が多い場合、企業は「自社でも同様に体調を崩して休職・退職してしまうのではないか」と懸念します。これは、本人の努力不足というよりも、自身の障がい特性に対する理解や対処(セルフケア)が不十分なのではないかという見方をされることがあります。

したがって、単に「ストレスに強い」とアピールするのではなく、自分のストレスサインを把握し、適切に対処できる準備ができていることを示す必要があります。

問題解決能力と忍耐力の評価

仕事には予期せぬトラブルや、相性の合わない業務が付きものです。転職を繰り返していると、こうした課題に直面した際の「問題解決能力」や「忍耐力」に疑問符がつくことがあります。すぐに辞めるという選択肢を取るのではなく、上司に相談したり、業務フローを改善したりといった努力ができる人物かどうかが問われます。

過去の退職理由の中で、改善に向けたアクションを起こした経験があれば、それを伝えることで懸念を和らげることができます。

職場への定着性や人間関係構築への懸念

組織で働く以上、周囲との協調性や人間関係の構築は不可欠です。転職回数が多い理由として、「人間関係のトラブル」が多い場合、企業は「協調性に欠けるのではないか」「チームの輪を乱すのではないか」と警戒します。

職場への定着性は、業務スキル以上に重視されることが多く、特に障害者雇用枠では、周囲のサポートを受けながら働く場面も多いため、良好な関係性を築けるかは重要な採用基準となります。

組織への適応能力と協調性

新しい職場環境やルールに馴染むまでには、一定の時間とエネルギーが必要です。短期間での転職が多いと、その組織の文化ややり方に適応する前に辞めてしまっていると判断されます。企業側としては、教育コストをかけて指導しても、組織に馴染めずに辞められてしまっては大きな損失となります。

そのため、柔軟性を持って周囲の意見を取り入れたり、自分からコミュニケーションを取ろうとする姿勢があるかどうかが厳しくチェックされます。

サポートを受ける力の有無

障害者雇用において、長く働くためには「受援力(支援を受ける力)」が重要です。人間関係で躓きやすい人は、困ったときに適切にSOSを出せず、一人で抱え込んでパンクしてしまう傾向があります。

企業は、転職回数の多さから「コミュニケーション不足による孤立」を懸念しています。したがって、過去の失敗から学び、これからは報連相を徹底する、支援者と連携するといった具体的な改善策を持っていることが、定着性への信頼につながります。

転職回数の多さをカバーする退職理由の伝え方・書き方

転職回数が多いという事実は変えられませんが、その伝え方を工夫することで、採用担当者の受ける印象を大きく変えることができます。ポイントは、ネガティブな要素をそのまま伝えるのではなく、反省点や改善策、そして将来への意欲といったポジティブな要素に変換して伝えることです。

ここでは、よくある退職理由を例に、具体的な書き方や伝え方のテクニックを紹介します。

【ネガティブ別】体調不良や人間関係を前向きに伝える例文

退職理由として多い「体調不良」や「人間関係」は、そのまま伝えるとマイナス評価になりやすい項目です。しかし、嘘をついて隠すことは信頼関係を損なうため避けるべきです。事実をベースにしつつ、現在はその問題が解消されていることや、働く意欲があることを強調する構成にしましょう。

体調不良による退職の前向きな説明

体調不良が理由の場合、「現在は回復し、安定して就労できる状態である」ことを伝えるのが最優先です。医師の許可があることも併せて伝えると説得力が増します。

【悪い例】
「前職では忙しすぎて体調を崩し、うつ病が悪化したため退職しました。」

【良い例】
「前職では自身の障害特性に対する理解が浅く、過度な業務量により体調を崩し退職いたしました。その後、医師の指導の下で療養に専念し、現在は症状が安定しております。また、自身の適正業務量を把握し、セルフケアを徹底することで、安定して就労できる準備を整えております。」

人間関係のトラブルを改善策として伝える

人間関係が原因の場合、相手を批判するような内容は避け、自分自身のコミュニケーション課題として捉え直し、改善策を提示します。

【悪い例】
「上司が厳しく、パワハラ気味だったため、精神的に辛くなり辞めました。」

【良い例】
「前職では、業務上の不明点を自分一人で解決しようと抱え込んでしまい、結果としてチームとの連携がうまくいかず退職に至りました。この経験を反省し、現在は『早期の報連相』を徹底し、周囲とこまめにコミュニケーションを取ることを心がけております。」

書類選考と面接で意識すべき一貫性と補足説明

履歴書や職務経歴書などの応募書類と、面接での回答には一貫性が求められます。書類には書ききれない詳細な事情がある場合でも、大筋の理由が矛盾していては不信感を与えてしまいます。書類選考の段階では、読み手が疑問に思うであろうポイントを簡潔に記載し、面接でその詳細を補足するという戦略が有効です。

履歴書と職務経歴書の整合性

履歴書の「退職理由」欄には「一身上の都合」と書くのが一般的ですが、転職回数が多い場合は、職務経歴書の備考欄などを活用して、簡潔に理由を添えることをおすすめします。

例えば、「障がいの受容と治療に専念するため」「自分に合った職務環境を模索するため」など、前向きな意図が伝わる一言を添えるだけで、採用担当者の納得感が高まります。この際、すべての退職理由を詳細に書く必要はありませんが、在籍期間が短いものについては理由を記載しておくと良いでしょう。

面接での口頭説明による補完

面接では、書類に書かれた退職理由について深く質問されることがあります。このとき、書類の内容と食い違う説明をしないように注意しましょう。その上で、書類では伝えきれなかった「当時の状況」や「そこから学んだこと」、「現在はどう改善しているか」を具体的に説明します。

過去の失敗を素直に認め、それを糧に成長しようとする姿勢を見せることで、転職回数の多さを「経験値」としてポジティブに転換することができます。

転職回数が多くても採用されるための重要な対策

伝え方のテクニックだけでなく、採用されるためには求職者自身が準備しておくべき根本的な対策があります。特に障害者雇用においては、企業側が安心して採用できる材料をどれだけ提供できるかが勝負です。

ここでは、自己理解を深め、第三者の力を借りて客観性を高めるための重要なアクションプランを提示します。

自身の障がい特性と対処法を具体的に言語化する

企業が転職回数の多い応募者に抱く最大の不安は、「また同じ理由で辞めるのではないか」という点です。この不安を払拭するためには、自分自身の障害がい性を深く理解し、それに対する具体的な対処法(セルフケア)と、企業に求める配慮事項を明確に言語化する必要があります。

「頑張ります」という精神論ではなく、論理的な説明が求められます。

自己理解と配慮事項の明確化

まずは、自分の障がいが業務や職場生活にどのような影響を与えるかを洗い出しましょう。例えば、「聴覚過敏があり、電話の音が気になって集中できない」という特性がある場合、対処法として「耳栓を使用する」「静かなスペースで作業する」などが考えられます。

これらを「自分の取扱説明書」のように整理し、企業に提示することで、「自分のことを正しく理解し、管理できている人だ」という評価につながり、定着への期待感が高まります。

安定就労に向けた準備状況のアピール

障がい特性の言語化に加え、就労移行支援事業所への通所実績や、生活リズムの安定性を示すことも有効です。「毎日決まった時間に起床し、週5日通所できている」という実績は、口先だけではない安定就労の証拠となります。

過去に転職を繰り返していた時期とは状況が異なり、今は働くための基礎体力がついていることを数字や実績で示すことで、企業の安心感は格段に増します。

転職エージェントを活用し客観的な添削を受ける

自分一人で対策を練ろうとすると、どうしても主観的になりがちで、企業側の視点が抜け落ちてしまうことがあります。

そこで有効なのが、障害者雇用に特化した転職エージェントの活用です。プロのアドバイザーは、企業の採用担当者がどこを見ているか、どのような懸念を持つかを熟知しています。

客観的な視点での書類添削

エージェントを利用することで、職務経歴書や退職理由の書き方について、客観的な添削を受けることができます。自分では「これで大丈夫」と思っていても、プロの目から見ると「言い訳がましく見える」「具体性に欠ける」といった改善点が見つかることは多々あります。

また、面接対策として模擬面接を行ってもらうことで、退職理由の説明がスムーズにできるよう練習することも可能です。第三者の視点を取り入れることで、選考通過率は確実に向上します。

企業への推薦と事情説明

転職エージェント経由で応募する場合、キャリアアドバイザーが企業に対して推薦状を書いてくれることがあります。この推薦状の中で、転職回数が多い背景にある事情や、現在はその問題が解決していること、本人の人柄や意欲などを補足説明してもらえます。

書類だけでは伝わりにくいニュアンスや熱意を、信頼できる第三者から伝えてもらうことは、不利な条件を覆すための強力な武器となります。

まとめ

障害者雇用において、転職回数が多いことは必ずしも致命的なハンデではありません。企業は回数そのものよりも、退職に至った経緯や現在の体調の安定性、そして長く定着して働けるかを重視しています。ネガティブになりがちな退職理由も、反省点や具体的な改善策をセットで伝えることで、前向きなアピールに変えることが可能です。

採用を勝ち取るためには、自身の障害特性を深く理解し、適切な対処法を言語化して企業に安心感を与えることが重要です。また、転職エージェントなどの第三者の視点を取り入れ、客観的な書類作成や面接対策を行うことも有効な手段となります。

過去の経験を糧に、長く働きたいという意欲と準備ができていることを誠実に伝え、自分に合った職場への就職を目指しましょう。

記事監修者:衛藤 美穂

サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム

アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。

■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得

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