障害者雇用調整金・納付金の仕組みとは?金額や対象企業、計算方法、手続きを解説
- 公開日:
- 2026.02.27
- 最終更新日:
- 2026.02.27
企業の持続的な成長において、障害者雇用の推進は欠かせない要素となっています。しかし、法定雇用率の達成は単なる義務ではなく、実務面での負担や調整が必要な場面も少なくありません。その経済的なバランスを図るために設けられているのが、障害者雇用調整金や障害者雇用納付金の制度です。
これらの制度は、障害者を雇用するために必要な環境整備や管理コストを事業主間で公平に負担し合う「相互扶助」の仕組みに基づいています。法定雇用率を達成している企業には「調整金」が支給され、未達成の企業からは「納付金」が徴収されます。
本記事では、経営者や人事担当者が正しく理解すべき、制度の対象企業、金額の計算方法、そして申請手続きの流れをわかりやすく解説します。
目次
障害者雇用調整金・納付金制度の仕組みと対象企業

障害者雇用納付金制度は、障がいのある方を雇用する企業と、そうでない企業の間の経済的負担を調整することを目的としています。
障がいのある従業員を雇い入れるには、バリアフリー設備の導入や専任スタッフの配置、業務プロセスの見直しなど、一定のコストがかかります。こうした努力を行っている企業が不利益を被らないよう、社会全体で雇用を支えるのがこの制度の根幹です。
制度の適用対象となるのは、常時雇用している労働者数が100人を超える企業です(2026年現在)。以前は対象範囲が異なっていましたが、法改正により適用範囲が拡大されました。対象となる企業は、毎年の申告が義務付けられており、法定雇用率の達成状況に応じて、「お金を納める」か「お金を受け取る」かが決まります。
支給対象となる企業の条件と金額
この制度では、企業の規模と雇用の達成状況によって、適用される名称や金額が異なります。大きく分けて、常用労働者数が100人を超える企業に適用される「調整金・納付金」と、100人以下の企業に適用される「報奨金」があります。自社がどの区分に該当するかを正確に把握することが第一歩です。
各区分の条件と金額の目安は以下の通りです。
| 項目 | 常用労働者数 100人超 | 常用労働者数 100人以下 |
|---|---|---|
| 法定雇用率 達成時 | 障害者雇用調整金 超過1人につき月額 29,000円 ※支給対象数が月10人(年120人)を超える部分は23,000円 | 報奨金 超過1人につき月額 21,000円 ※支給対象数が月35人(年420人)を超える部分は16,000円 |
| 法定雇用率 未達成時 | 障害者雇用納付金 不足1人につき月額 50,000円 | 徴収なし (納付金の支払い義務はありませんが、雇用義務はあります) |
このように、100人を超える企業が法定雇用率を未達成の場合、不足人数に応じて月額5万円(または特例で4万円)の納付金を支払う必要があります。
一方で、法定雇用率を超えて雇用している場合は、その超過人数分に対して調整金が支給されます。この仕組みにより、積極的に障害者雇用を行う企業へのインセンティブが働いています。
支給額の計算方法とシミュレーション
障害者雇用調整金の支給額は、単純に「障がいのある方の総数」で決まるのではなく、「法定雇用率を超過している人数」に基づいて計算されます。これを正確に算出するためには、まず自社の「法定雇用障害者数(雇用義務数)」を割り出す必要があります。
計算の基本ステップは以下の通りです。
- ステップ1:常用労働者数 × 法定雇用率(2.5% ※2026年2月現在) = 法定雇用障害者数(小数点以下切り捨て)
- ステップ2:実雇用障害者数 - 法定雇用障害者数 = 超過人数(調整金算定基礎数)
- ステップ3:超過人数 × 支給単価(原則29,000円) = 調整金支給月額
ここでは、従業員数150人の企業を例にシミュレーションしてみましょう。
【シミュレーション例】
企業規模:常用労働者数 150人
現在の雇用状況:障害者 5人を雇用(重度障害者等はいないものとして計算)
1. 法定雇用障害者数の計算
150人 × 2.5% = 3.75人
→ 小数点以下を切り捨て、「3人」がこの企業の雇用義務数となります。
2. 超過人数の計算
実雇用数 5人 - 義務数 3人 = 「2人」が超過分となります。
3. 調整金の計算
2人 × 29,000円 = 58,000円(月額)
年間では、58,000円 × 12ヶ月 = 696,000円 が支給される見込みとなります。
この計算は毎月行い、年度ごとの合計額を算出します。月によって従業員数や障害者の雇用数に変動がある場合は、月ごとに正確にカウントする必要があります。
障害者雇用調整金の申請手続きとスケジュール

障害者雇用調整金を受け取るため、あるいは納付金を申告するためには、決められた期間内に正確な手続きを行う必要があります。この手続きは「申告申請」と呼ばれ、対象となるすべての事業主(常用労働者数100人超)が行わなければなりません。
申請期間は、毎年4月1日から5月15日までと定められています。この期間内に、前年度(4月1日~翌年3月31日)の雇用実績を報告し、それに基づいて計算された調整金の支給申請や納付金の申告を行います。
もし期限を過ぎてしまうと、調整金を受け取ることができなくなるだけでなく、納付金の申告漏れとして追徴金が発生するリスクもあるため、スケジュール管理は非常に重要です。
提出先は、各都道府県にある「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」の支部となります。近年では窓口への持参や郵送に加え、電子申告による手続きも普及しており、業務効率化のために電子申請の利用が推奨されています。
申請に必要な書類と提出の流れ
申請にあたっては、複数の書類を作成し、根拠資料とともに提出する必要があります。初めて手続きを行う場合や、担当者が変わった場合は、早めに準備を始めましょう。主な必要書類と申請のステップは以下の通りです。
主な提出書類
- 障害者雇用納付金申告書:納付金の額を計算・申告するための書類。
- 障害者雇用調整金支給申請書:調整金の支給を申請するための書類(該当する場合のみ)。
- 障害者雇用状況等報告書(Ⅰ・Ⅱ):各月の労働者数や障害者の雇用状況を記載する詳細な報告書。
- 添付書類:障害者手帳の写しや、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳など、雇用実態と障害の確認ができる書類のコピー(初回申請時や変更があった場合に必要)。
申請のステップ
- データの集計(3月~4月上旬)
前年度の各月ごとの「常用労働者総数」と「雇用している障害者の数・労働時間」を集計します。 - 申告書の作成(4月上旬~中旬)
機構から送付される申告書用紙、または電子申告システムを使用して、集計データを入力・記入します。法定雇用率に基づき、不足数または超過数を算出します。 - 書類の提出(4月1日~5月15日)
作成した申告書と必要書類を、管轄のJEED支部へ提出します。納付金が発生する場合は、この期間内に納付も済ませる必要があります。 - 審査と通知(提出後数ヶ月)
機構による審査が行われ、問題がなければ調整金の支給決定通知書が届きます。支給は通常、申請から数ヶ月後の10月頃に行われます。
よくある間違いと注意点
障害者雇用調整金の申請では、労働者数のカウント方法や障がい種別の取り扱いでミスが発生しがちです。誤った申告を行うと、後から返還を求められたり、指導の対象となったりすることがあります。ここでは、実務担当者が迷いやすいポイントをQ&A形式で解説します。
Q1. 週20時間以上30時間未満のパートタイム従業員はどのようにカウントしますか?
A. 原則として「0.5人」としてカウントします。
短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上30時間未満)の場合、障がいのある方であっても常用労働者であっても、1人を0.5人分として計算するのが基本ルールです。
ただし、精神障害者に関しては特例措置があり、要件を満たす場合は短時間でも「1人」としてカウントできる場合があります。また、重度身体障害者・重度知的障害者の短時間労働者も「1人」としてカウントされます。
Q2. 2024年4月から始まった「週10時間以上20時間未満」の取り扱いは?
A. 「特定短時間労働者」として「0.5人」または「0.3人」で算定可能になりました。
法改正により、これまで算定対象外だった週10時間以上20時間未満の労働者も実雇用率の算定対象となりました。精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者の場合は「0.5人」、それ以外の身体・知的障害者の場合は「0.3人」として特例的にカウント(算定)できます。
ただし、これは雇用率算定(ポイント)の話であり、調整金の「支給対象人数」としての計算では取り扱いが異なる場合があるため、最新の手引きを確認することが重要です。
Q3. 納付金を支払えば、障害者を雇用しなくても良いのですか?
A. いいえ、雇用義務は免除されません。
障害者雇用納付金は、あくまで経済的な調整を図るものであり、雇用義務の代替措置ではありません。納付金を支払い続けても、法定雇用率が未達成の状態が続けば、ハローワークからの行政指導や「雇入れ計画」の作成命令、最終的には企業名の公表対象となるリスクがあります。
また、申請手続きにおいて見落としがちなポイントとして「除外率」の設定があります。建設業や医療業など、障害者の雇用が実情として困難であると認められた特定の業種については、法定雇用率の計算において一定の率を控除する制度が設けられています。
この除外率が適用される企業では、一般的な計算式よりも雇用義務数が緩和されるため、自社の業種が該当するかどうかを確認しておくことが大切です。
正確な申告を行うことは、企業のコンプライアンス遵守の観点からも不可欠です。不明な点がある場合は、自己判断せずに管轄の労働局や高齢・障害・求職者雇用支援機構へ問い合わせるか、専門家である社会保険労務士のアドバイスを仰ぐことをおすすめします。
障害者雇用の助成金・調整金制度の活用

障害者雇用調整金は、法定雇用率を達成した企業に対して支給されるものですが、障害者雇用に伴う企業の経済的負担を軽減する仕組みはこれだけではありません。特に、新たに障害者を雇い入れる際や、職場環境を改善するための設備投資が必要な場合には、さまざまな助成金制度が用意されています。
これらの制度を調整金や報奨金と組み合わせて効果的に活用することで、採用や定着にかかるコストを大幅に抑えることが可能です。ここでは、近年の法改正で拡充された雇用率の算定ルールや、代表的な助成金について解説します。
週10時間以上20時間未満の雇用に対する算定ルールの変更(2024年4月~)
2024年(令和6年)4月の法改正により、障害者雇用の算定対象範囲が大きく拡大されました。これまで雇用率制度のカウント対象外(※特例給付金の対象)であった、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」について、新たに雇用率の算定対象に含めることができるようになりました。
具体的には、特定短時間労働者のうち「精神障害者」「重度身体障害者」および「重度知的障害者」を雇用した場合、1人あたり「0.5人」としてカウントされます。
この改正により、これまでは算定対象外として「特例給付金」の枠組みで支援されていた短時間労働者が、直接「障害者雇用調整金」や「報奨金」の計算に組み込まれることになりました。
企業にとっては、長時間勤務が難しい障がい者の雇用を促進しながら、法定雇用率の達成と経済的メリット(調整金の受給や不足金納付の回避)を同時に享受しやすくなったと言えます。
特に、体調管理や通院などの理由でフルタイム勤務が困難な人材を積極的に採用している企業にとって、この「0.5人カウント」への移行は大きな後押しとなります。
設備改善や職場定着を支援する各種助成金
障害者雇用調整金や特例給付金は、雇用の「結果」に対して支給される性質が強いですが、雇用の「準備」や「継続」を支援する助成金も多数存在します。これらは主にハローワークを通じて申請するもので、用途に応じて使い分けることが重要です。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
ハローワーク等の紹介により、障害者などの就職困難者を継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に助成されます。この助成金は、障害者の賃金助成としての性格を持ち、雇用初期の負担を軽減するために非常に多くの企業で利用されています。支給額は対象者の労働時間や重度障害の有無によって異なり、一定期間にわたり支給されます。
障害者作業施設設置等助成金
障害者が作業を行いやすくするための施設や設備の設置・整備(バリアフリー化や専用機器の購入など)にかかる費用の一部を助成する制度です。
物理的な環境整備は多額の初期投資が必要となるケースが多いため、この助成金を活用することで、ハードルを下げることができます。スロープの設置やトイレの改修、拡大読書器の導入などが対象となります。
障害者雇用調整金を活用した経営戦略とコスト比較

多くの企業において、障害者雇用は「法的義務だから行うもの」という受動的な捉え方をされがちです。しかし、障害者雇用調整金や納付金の仕組みを深く理解し、経営戦略の一部として積極的に取り組むことで、単なるコスト要因ではなく、組織の強みへと転換させることができます。
納付金を支払い続けることの財務的・社会的リスクと、雇用を進めて調整金を受け取ることのメリットを比較検討し、長期的な視点で方針を決定することが求められます。ここでは、コスト面とブランディング面の両面から考察します。
納付金を支払うコストと雇用によるメリットの比較
法定雇用率を未達成のまま放置し、障害者雇用納付金を支払い続けることは、企業にとって二重の損失を生む可能性があります。まず、月額5万円(不足1人あたり)の納付金は、何も生産しない純粋なコストです。年間で数十万、規模によっては数百万円の支出となりますが、これは罰金的な性質を持ち、企業の成長には寄与しません。
一方で、その資金を障害者雇用のための人件費や環境整備に充てた場合、どうなるでしょうか。確かに初期コストや管理の手間は発生しますが、調整金の支給(達成時月額2万9千円など)や各種助成金を活用することで、実質的な負担を大幅に圧縮できます。
さらに、業務の切り出しによって既存社員の業務効率が向上したり、多様な人材が活躍することで組織の柔軟性が増したりといった、金銭換算できないメリットも生まれます。
また、納付金制度には「調整」という目的がありますが、永続的に納付金を支払えば許されるわけではありません。未達成が続けば行政指導の対象となり、最終的には企業名公表のリスクも伴います。
これによる社会的信用の失墜や採用ブランドへの悪影響を考慮すれば、早期に雇用体制を整え、調整金を受け取る側(=法定雇用率達成企業)に回ることが、経済合理的にも賢明な判断と言えるでしょう。
企業の社会的責任(CSR)と障害者雇用のブランディング
現代の企業経営において、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資への関心が高まる中、障害者雇用への取り組みは企業の評価を左右する重要な指標となっています。障害者雇用調整金を受け取れる水準まで雇用を進めている事実は、その企業がダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)を実践している証左となります。
積極的に障害者を雇用し、彼らが活躍できる環境を整備している企業は、投資家や取引先、そして消費者から「社会的責任を果たしている優良企業」として認知されます。
また、こうした姿勢は、障害者雇用の枠を超えて、求職者全体に対する魅力付けにもつながります。「人を大切にする会社」というブランドイメージは、人材獲得競争が激化する中で強力な武器となるはずです。
さらに、中小企業であれば「もにす認定制度」などを取得することで、公的なお墨付きを得ることができ、公共調達での加点や低利融資などのメリットも享受できます。調整金や納付金という金銭的な側面だけでなく、企業価値向上という大きな視点で障害者雇用を捉え直すことが、持続可能な成長への鍵となります。
まとめ:障害者雇用調整金を活用して持続可能な組織へ

本記事では、障害者雇用調整金および納付金制度の仕組みから、具体的な金額の計算方法、申請手続きの流れ、そして関連する助成金の活用までを解説してきました。制度は複雑に見えますが、その根底にあるのは「障害者雇用の負担を社会全体で分かち合い、雇用の促進を図る」という理念です。
企業担当者の皆様には、単に「納付金を避けるために数合わせをする」のではなく、調整金や助成金といった経済的支援を有効に活用しながら、障がいのある従業員が長く安定して働ける環境を作ることを目指していただきたいと思います。法定雇用率の達成はゴールではなく、多様な人材が活躍する組織作りのスタートラインです。
最後に、障害者雇用調整金の申請や各種助成金の手続きには、厳格な期限や細かな要件が定められています。自社だけで判断が難しい場合や、初めて手続きを行う場合は、ハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構、あるいは社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。
正しい知識と適切な計画のもと、制度を最大限に活かした障害者雇用を推進していきましょう。
記事監修者:衛藤 美穂
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。
■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得