障害者雇用 5年ルールとは?無期転換の対象・注意点・助成金まで解説
- 公開日:
- 2026.01.30
- 最終更新日:
- 2026.01.30
企業が障害者を雇用する際、長期的な雇用の安定は重要な課題です。その中で必ず理解しておかなければならないのが、労働契約法に基づく「無期転換ルール」、いわゆる「5年ルール」です。障害者雇用 5年ルールとは、有期労働契約が通算5年を超えた場合に、労働者の申し込みによって無期労働契約へ転換できる制度のことです。
このルールは障害者雇用枠で働く従業員にも等しく適用されますが、運用を誤ると「雇い止め」などの法的トラブルに発展するリスクがあります。
本記事では、無期転換ルールの仕組みや対象条件、企業が注意すべきポイント、さらに無期転換時に活用できる助成金について詳しく解説します。
目次
障害者雇用における「5年ルール(無期転換ルール)」の基礎知識

障害者雇用を進める多くの企業では、当初は有期契約社員(契約社員やパートタイマーなど)として雇用契約を結ぶケースが一般的です。しかし、契約更新を繰り返して一定期間を超えると、法的な「無期転換申込権」が発生します。これが通称「5年ルール」と呼ばれるものです。
この制度は、有期契約労働者の雇用の安定を図るために設けられました。障がい者であるか否かに関わらず、すべての有期契約労働者が対象となります。人事担当者は、このルールの法的背景と仕組みを正しく理解し、適切な雇用管理を行う必要があります。
無期転換ルールが適用される条件とタイミング
無期転換ルールが適用されるには、いくつかの具体的な要件があります。単に5年働けば自動的に無期契約になるわけではなく、法律で定められた条件を満たした上で、労働者側からの申し込みが必要です。
有期労働契約の通算期間とカウント方法
最も基本的な要件は、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新されていることです。この「通算5年」のカウントは、2013年4月1日以降に開始された契約からスタートします。
契約期間が1年の場合は5回目の更新後(6年目の契約開始時)、契約期間が3年の場合は1回目の更新後(4年目の契約開始時点ではまだ5年を超えていないため、次回更新時)など、契約期間によって権利発生のタイミングが異なります。
間に6ヶ月以上の空白期間がある場合、それ以前の契約期間は通算されないというルールもあります。
申し込み権の発生と行使手続き
通算契約期間が5年を超えた時点で、労働者には「無期転換申込権」が発生します。重要なのは、5年を超えた瞬間に自動的に正社員や無期契約社員になるわけではないという点です。労働者が会社に対して「無期契約に転換したい」という意思表示(申し込み)をした場合に、初めて会社側はこれを承諾したものとみなされます。
会社側はこの申し込みを拒否することはできません。申し込みがあった時点で、次回の契約から無期労働契約への転換が法的に成立します。そのため、企業は事前に対象者を把握し、就業規則等の整備を進めておくことが求められます。
例外となるケース(除外認定など)
原則としてすべての有期契約労働者に適用される5年ルールですが、特定の条件を満たす場合には例外措置が設けられています。これを「無期転換ルールの特例」と呼びます。特例を適用するには、事前に都道府県労働局へ申請し、認定を受ける必要があります。
定年後再雇用における特例
多くの企業に関連するのが、定年後の再雇用に関する特例です。定年を迎えた正社員を、嘱託社員などで継続雇用する場合、その期間については無期転換申込権が発生しないとする特例があります。
この特例(第二種計画認定)を受けることで、定年後の再雇用者が5年を超えて働いた場合でも、無期転換の対象外とすることが可能です。ただし、これはあくまで定年後再雇用者に限った話であり、通常の障害者雇用枠の契約社員には適用されない点に注意が必要です。
高度専門職の特例について
もう一つの例外は、高度な専門的知識を持つ有期雇用労働者に関するものです。プロジェクト単位で雇用される研究者や、年収要件などの厳しい条件を満たす一部の専門職については、一定期間(上限10年など)無期転換権が発生しない特例があります。
しかし、一般的な事務職や軽作業などで採用されることが多い障害者雇用の現場では、この高度専門職の特例が適用されるケースは極めて稀です。基本的には「障害者雇用においては例外なく5年ルールが適用される」と考えて準備を進めるのが安全でしょう。
企業が注意すべき「雇い止め」リスクと法的対応
無期転換ルールの適用が近づくと、企業側には「無期雇用にすると人件費が固定化されるのではないか」「業務適性が十分でないまま長期雇用になるのは不安だ」といった懸念が生じることがあります。しかし、この不安から安易に契約終了を選択することは、極めて高い法的リスクを伴います。
特に、無期転換申込権が発生する直前で契約更新を拒否することは、いわゆる「無期転換逃れ」と見なされる可能性が高く、労働契約法や過去の判例に照らしても無効と判断されるケースが少なくありません。
無期転換回避目的の雇い止めの違法性
企業が意図的に無期転換を避けるために行う雇い止めは、社会通念上相当であると認められない限り、違法となる可能性が高いです。特に障害者雇用においては、合理的配慮の観点からも慎重な対応が求められます。
期待権の侵害と法的リスク
労働契約法第19条では、有期労働契約であっても、反復更新されており実質的に無期契約と同視できる場合や、労働者が契約更新を期待することに合理的な理由がある場合(期待権)、使用者は客観的・合理的な理由なく更新を拒絶できないと定めています。
これまで特に問題なく更新を繰り返してきたにもかかわらず、「通算5年になるから」という理由だけで雇い止めをすることは、この「更新への期待権」を侵害するものとして、裁判等で解雇権の濫用と同様に無効と判断されるリスクがあります。
直前の更新拒絶のリスク管理
通算4年目や4年半の時点で契約を終了させようとする場合、それが純粋な業務上の理由(事業縮小や能力不足など)であれば正当性が認められる余地はあります。しかし、その理由が曖昧であったり、実態として「無期転換逃れ」が目的であると推測されたりする場合、トラブルの原因となります。
障害者雇用の場合、業務遂行能力の評価には障害特性への配慮も必要です。適切な指導や配慮を行わずに能力不足として雇い止めを行うことは、障害者差別解消法などの観点からも問題視される可能性があります。
トラブルを防ぐための適切な契約更新判断
法的トラブルを未然に防ぐためには、契約更新の基準を明確にし、透明性のある運用を行うことが不可欠です。無期転換のタイミングが来てから慌てるのではなく、採用時や毎回の更新時から計画的に対応することが求められます。
客観的で合理的な更新基準の策定
就業規則や雇用契約書において、契約更新の有無や判断基準を具体的に明記しておくことが重要です。「会社の経営状況により判断する」「勤務成績、態度により判断する」といった一般的な文言だけでなく、具体的な評価項目を設けることが望ましいでしょう。
特に障害者雇用においては、担当業務の達成度や勤怠状況など、客観的に測定可能な指標を設けることが、双方の納得感を高めることにつながります。基準が曖昧なままだと、更新拒絶時に不当な扱いと受け取られかねません。
定期的な面談とフィードバックの実施
契約更新のタイミングごとに面談を行い、評価結果を本人にフィードバックするプロセスを確立しましょう。もし業務改善が必要な点があれば、その都度具体的に伝え、記録に残しておくことが重要です。
突然の契約終了通告はトラブルの元凶です。日頃からコミュニケーションを取り、本人が自身の評価を正しく認識できる環境を作ることで、更新時や無期転換時のミスマッチを防ぐことができます。これは障害者の定着支援としても有効な手段です。
無期転換時に活用できる助成金と支援制度

障害者を無期雇用(正社員や無期契約社員)へ転換することは、企業にとって雇用の固定化という負担に見えるかもしれません。しかし、国は障害者の雇用の質を向上させるため、無期転換を行う企業に対して手厚い助成金制度を用意しています。
これらの制度を上手に活用することで、人件費の負担を軽減しながら、意欲ある人材を長期的に確保することが可能になります。ここでは、代表的な支援制度である「キャリアアップ助成金」を中心に解説します。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の活用
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等の正社員化や処遇改善に取り組む事業主を助成する制度です。その中に設けられている「障害者正社員化コース」は、障害者雇用において非常にメリットの大きい仕組みとなっています。
助成金の概要と対象となる措置
このコースは、障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者(正社員)または無期雇用労働者に転換した場合に助成金が支給されるものです。単に契約期間を無期にするだけでなく、就業規則等に基づいて正社員として登用する場合に、より高い支給額が設定されています。
具体的には、「有期契約から正規雇用への転換」「無期契約から正規雇用への転換」「有期契約から無期契約への転換」の3つのパターンが対象となります。5年ルールに基づき無期転換を行う際、合わせて正社員化を行えば、この助成金の対象となる可能性が高いです。
支給額と申請の要件
支給額は企業の規模や転換の種類によって異なりますが、例えば中小企業が有期契約の障害者を正規雇用に転換した場合、1人あたり最大で120万円(2期合計、生産性要件を満たす場合)などが支給されるケースがあります(※金額は年度により改定されるため、最新情報の確認が必要です)。
申請にあたっては、転換後の賃金が転換前と比べて一定割合(例:3%以上)上昇していることや、転換後6ヶ月以上の継続雇用などの要件があります。事前に「キャリアアップ計画書」を労働局へ提出し、認定を受けておく必要があるため、無期転換のタイミングを見越した早めの準備が不可欠です。
障害者雇用の無期転換後における定着支援

障害者雇用において、5年ルールに基づく無期転換はゴールではなく、長期的な安定就労に向けた新たなスタートです。無期契約になったからといって、障害の特性や必要な配慮が変わるわけではありません。企業は法的な契約変更だけでなく、実質的に働き続けられる環境を整える必要があります。
長期雇用を前提としたキャリアパスを提示することで、本人のモチベーション向上にもつながります。ここでは、無期転換後に求められる具体的な支援について解説します。
職場環境の整備と合理的配慮の継続
無期転換後も、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務は続きます。加齢や障害の状況変化に合わせて、必要な配慮の内容を見直す柔軟性が重要です。例えば、業務量の調整や休憩時間の確保、支援機器の導入などが挙げられます。
また、定期的な面談を実施し、体調や業務上の悩みを早期に把握する体制を維持しましょう。現場の管理者だけでなく、産業医やジョブコーチなどの専門家と連携し、組織全体でサポートする仕組みを作ることが、離職防止と定着率向上への近道です。
障害者雇用5年ルールに関するよくある質問

Q. 本人が無期転換を希望しない場合でも、転換させる必要がありますか?A. いいえ、強制ではありません。無期転換は労働者からの申し込みがあって初めて成立します。本人が有期契約の継続を希望する場合は、そのまま有期契約を更新することも可能です。
Q. 契約期間の間に空白期間がある場合、通算期間はどうなりますか?A. 契約がない期間(無契約期間)が6ヶ月以上ある場合、それ以前の契約期間は通算されずリセットされます。これをクーリング期間と呼びます。
まとめ
障害者雇用の5年ルール(無期転換ルール)は、有期契約労働者の雇用安定を図る重要な制度です。企業にとっては、雇い止めリスクや人件費の固定化といった課題もありますが、適切な運用を行えば、経験豊富な人材を確保し、組織の多様性を高める好機となります。
無期転換逃れのような法的リスクの高い対応は避け、キャリアアップ助成金などの支援制度を有効活用しながら、計画的に正社員化や無期転換を進めることが賢明です。障害者が安心して能力を発揮できる環境を整えることは、結果として企業の持続的な成長にもつながります。
記事監修者:衛藤 美穂
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。
■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得