【2025年】障害者雇用促進法とは?改正・施行内容についてわかりやすく解説
- 公開日:
- 2025.05.21
- 最終更新日:
- 2025.06.17

障害者雇用促進法とは、企業や公共機関に障害者の雇用を義務付ける法律です。「法律の存在は知っているが、内容についてはよく分からない」といった方も多いでしょう。
障害者雇用促進法はすべての企業に関係のある法律です。障がい者の雇用を検討している会社だけでなく、成長過程にある企業は概要を知っておくと何かと役立ちます。
本記事では、障害者雇用促進法の概要や法改正についてなど、企業が知っておくべきことを紹介します。
また、2025年以降の障害者雇用促進法改正についての無料ウェビナーも随時開催しているので、今後の改正について理解を深めたい方はぜひお気軽にご参加ください。
・「障害者雇用促進法」について
・障害者雇用促進法が企業に求めている義務
・2025年以降に予定されている改正内容
・除外率の引き下げに向けて、企業が『いま』行っておくべき事柄
・企業が注意すべきポイント
開催日時
- 2025-06-19 (木) 11:00-11:45
- 2025-07-08 (火) 11:00-11:45
- 2025-07-17 (木) 11:00-11:45
- 2025-07-24 (木) 11:00-11:45
おすすめの対象の方
- 障害者雇用の人事担当者
- 2025年以降の障害者雇用促進法の改正に関心のある方
- 改正に備えた対策を学びたい方
障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは障がいのある方々がその能力を活かして働くことができる社会を目指すための法律です。
正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、事業主による障がい者雇用義務や、差別の禁止、合理的配慮の提供義務、職業リハビリテーションの推進などを定めています。
この法律の目的は、障がいのある方々の職業の安定を図ることにあります。
障害者雇用促進法によって障がい者雇用が義務化されている
障害者雇用促進法が企業に与える影響で最も大きいのが、障がい者雇用の義務化です。
2025年5月現在の法律では、法定雇用率は2.5%と定められており、常用雇用している従業員が40人以上の企業は最低1人は障がい者の方を雇用しなければならない決まりとなっています。
もし、障がい者の雇用が義務づけられていながら法定雇用率を達成できていない企業は、不足分1名あたり月額5万円の納付や行政指導が入るといったリスクもあるため、障害者雇用促進法は遵守していく必要があります。
障害者雇用促進法の歴史
では、障害者雇用促進法はどういった背景のある法律なのか、歴史をご紹介したいと思います。
1960年 身体障害者雇用促進法の制定
障害者雇用促進法の前身である「身体障害者雇用促進法」が制定されたのは、1960年のことです。
ただし、この法律は障がい者を雇用する義務はなく、対象も身体障がい者に限られていました。そのため、法律があっても障がい者雇用を促す効果はあまり見られませんでした。
1976年 障がい者の雇用の義務化導入
「障がい者の雇用の義務化」が導入されたのは、1976年のことです。法定雇用率制度が導入され、「雇わないといけない」という強制力が生まれました。
同時に障害者雇用納付金制度もはじまり、障がい者の就業を国ぐるみでスタートしたのです。しかし、対象となったのは身体障がい者のみで、就業できる障がい者は限られていました。
1987年 障害者雇用促進法に名称が変更
1987年には法令の名称が「身体障害者雇用促進法」から「障害者雇用促進法」へと変更となりました。
1998年 知的障がい者が対象に 2006年 精神障がい者にも支援が拡大
知的障がい者が法律の対象になったのは1998年になり、2018年には発達障がいを含む精神障がい者も正式に雇用が義務づけられ、より多くの障がい者に就業のチャンスが巡るようになりました。
このように、障害者雇用促進法は1960年に制定されて以降、改定を繰り返して現在に至ります。最新の改定は2026年の法定雇用率の引き上げです。これにより、障がい者がより働きやすい環境が整い、自立への道が開けると期待されています。
障害者雇用促進法の主な改正ポイント
障害者雇用促進法が制定されてから幾度も改正がおこなわれていますが、企業にとって重要なポイントを紹介します。
1. 法定雇用率の引き上げと対象企業の拡大
障害者雇用促進法の改正によって障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられ、対象となる企業の規模も拡大されています。具体的には、2024年4月に2.5%、2026年7月には2.7%に引き上げられます。
これに伴い、常時雇用する労働者が40人以上の企業が対象となり、2026年7月以降は37.5人以上の企業も対象となります。
関連:障がい者法定雇用率の引き上げはいつから?今後の予定となぜ上がるのか解説
2. 短時間勤務者の雇用率算定への算入
これまで法定雇用率の算定対象外とされていた、週所定労働時間が10~20時間未満の精神障害者や重度の身体・知的障害者も、2024年4月から算定対象に含まれるようになりました。
関連:【2025年最新】障害者雇用率の計算の仕方は?カウント方法と早見表で解説
3. 合理的配慮の提供義務化
企業は、障害者が他の従業員と平等に働けるよう、合理的配慮を提供する義務があります。
合理的配慮とは、障害者の特性や状況に応じて、職場環境や業務内容を適切に調整することを指します。
関連:合理的配慮とは?職場での具体例や企業の義務化について解説
4. 障害者雇用納付金制度の強化
法定雇用率を達成していない企業には、障害者雇用納付金の支払い義務があります。一方で、達成している企業には調整金や助成金が支給される制度が整備されています
関連:障害者雇用納付金とは?計算方法や申告期限などわかりやすく解説
障害者雇用促進法の対象になっている障がい者
障害者雇用促進法の対象になっている障がい者は、以下の3種類です。
- 身体障がい者:「身体障害者手帳」
- 知的障がい者:「療育手帳」(愛の手帳)など
- 発達障がいを含む精神障がい者:「精神障害者保健福祉手帳」
なお、手帳を所持していない場合は「障がい者」と定義されません。例えば、「発達っ障がいの特徴に当てはまっている項目が多いが、医師の診断では発達障がいではなかった」といった場合は、障がい者には該当しません。
また、週所定労働時間が週10時間以上働ける方が対象です。ただし週10時間~20時間までの勤務の場合は、障がいの種類によっては0.5人とカウントされてしまいます。さらに、週10時間までの勤務が認められているのは、重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者です。そのため、障害者雇用促進法に基づいた求人は、週30時間以上の勤務が多めです。
障がい者をどのような形であれ雇用さえすれば、法定雇用率を満たしたことにならないので注意が必要です。
また、障がい者からしても、障害者雇用法に基づく求人よりも一般な方と同様のスタイルで、雇用したほうが自分に合った働き方ができるといったケースもあるでしょ
障がい者雇用の現状
ここでは、障がい者雇用の現状や障がい者が多く勤務している職種について紹介します。
令和5年度の障害者雇用状況

障害者雇用状況は、厚生労働省により毎年発表されています。令和5年度の障害者雇用状況は、以下のとおりです。
- 雇用障害者数:64万2,178.人(前年比2万8,220人増)
- 実雇用率:2.33%(前年比0.08ポイント上昇)
- 法定雇用率達成企業の割合:50.1%(前年比1.8ポイント上昇)
報告を見ると、前年に比べてすべてのポイントや人数が増加しています。これは、企障がい者の雇用に積極的な企業が増えていることを示しているといえるでしょう。
その一方で、雇用率はまだ3%にとどまり、法定雇用達成率の企業も半分にとどまっています。
障害者雇用促進法は一定の効果があることはわかりますが、まだ解決が必要な課題も多いのが現状です。
障がい者の雇用が多い職種
障がい者も身体・知的・精神(発達)とさまざまな種類があります。得意な分野、不得意な分野も人によって異なるので、一概に「障がい者はこの仕事ならば働きやすい」と言い切ることはできません。
それを踏まえて、障がい者の雇用が多い職種は以下のとおりです。
- 製造業
- 小売業
- 事務作業
- 清掃業
- 専門職
製造業や小売業、一部の事務作業はやるべきことが決まっており、一度仕事を覚えれば、安心して仕事を任せられます。また、事務作業も特定のものはルーチンワークに近いので、障がいがある方も仕事を覚えやすい傾向があります。
このほか、清掃業はやるべきことが決まっているのと同時に、1人で作業できるのもメリットです。障がいの種類によっては、会話によるコミュニケーションを苦手とする方も多く、1人でもくもくとできる仕事は人気があります。
その一方で、発達障がい者や、病気や事故で中途障がい者となった身体障がい者の中には、経験や得意分野を活かして、SE(システムエンジニア)、経理など専門職で働いている方も多いです。
障がいがあるからといって、「単純作業しかできない」とは限りません。人によっては、健康な方と同等、それ以上の能力を発揮して会社に貢献できる方もいます。
しかし、障がいの程度や種類によっては、本人の努力や周囲のサポートがあっても安全に仕事をするのが難しい職種もあります。障がい者を雇用する場合は、一定の配慮は必須です。
障害者雇用促進法に基づいて障がい者を雇用する方法と注意点

ここでは、障害者雇用促進法に基づいて障がい者を雇用する方法と注意点を紹介します。はじめて障がい者を雇用する会社はもちろんのこと、障がい者がより働きやすい環境を整えたいと考えている企業も参考にしてください。
企業は合理的配慮の提供と差別禁止の義務を負う
障がい者を雇用するにあたり、企業は「合理的配慮の提供」と「差別禁止」の義務を負います。
合理的配慮とは、障がいのある人が他の人と平等に働けるように、必要な支援や調整を行うことです。一例を挙げると、「体が不自由な方がスムーズに動けるよう、手すりを付けたり車いすで移動しやすいようにする」「体調に合わせて時短勤務を認める」「音声読み上げソフト、手話を認める」などが該当します。
合理的な配慮は、個別対応が基本であり、原則として障がい者の希望に基づいて行われます。そのため、障がい者を雇用する際は、会社が可能なサポートがあるかヒアリングが大切です。
なお、合理的な配慮は、会社の負担にならない程度に行います。障がい者が希望するサポートが高額であったり、認めるのが難しかったりする場合は断っても問題ありません。また、合理的な配慮のために国が支給する助成金を利用することも可能です。
まとめ
本記事では、障害者雇用促進法の概要や歴史、法律に基づいて企業が障がい者を雇用する方法や注意点を紹介しました。
障がい者を雇用するのは、障がい者の自立、社会福祉等さまざなな観点から見て有益です。しかし、ただ雇用すれば終わりではありません。障がいを持った方でも、やりがいをもって働ける職場づくりが大切です。
障がい者を雇用する前に、ハローワークに相談したり研修を受けたりして受け入れ態勢を整えておきましょう。また、すべての企業が障がい者を雇用できる姿勢を整えておくことも大切です。
近年は民間の障がい者雇用をサポートするサービスも増えています。これらも活用して障がい者雇用を行っていけばスムーズな雇用につながります。
衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。
サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。
