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ADHDの人が仕事でミスを減らすための具体的な対策は?

公開日:
2025.05.22
最終更新日:
2025.05.22

ADHDの特性を持つ方は、注意が散漫になりやすかったり、優先順位をつけるのが苦手だったりするため、職場でミスをしやすいと感じることがあるかもしれません。

しかし、特性をカバーする対策を行えば、ミスを減らし、仕事の精度を上げて効率よく働くことが可能です。

本記事では、ADHDの方が仕事でミスを減らすための具体的な対策をご紹介します。

ADHDの人はなぜ仕事でミスをしやすい?

ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ方は、以下のような理由で仕事のミスをしやすい傾向があります。

(1) うっかりミスが多い

・書類の記入漏れや計算ミス、誤字脱字をしてしまう
・メールの宛先を間違える、添付ファイルを忘れる
・仕事の細かい部分を見落としやすい

などといった、確認不足や認識不足から起こるケアレスミスが多い傾向にあります。

よく確認したら防げるものばかりですが、注意が散漫なばかりに気付かずに提出してしまい、怒られたり信用を失くしてしまうこともあるので気を付けたいところです。

(2) 期限管理が苦手

・締め切りを忘れてしまう
・作業の見積もりが甘く、間に合わなくなる
・直前になって慌てることになる

などの納期が決まっている仕事に対応することが苦手なことも多いです。

どのように進めていけば、余裕を持って仕事を終えられるのかという目処がうまく立てられず、期限が迫ってから慌てることになったり、納期の延長をお願いすることになってしまうケースもよくあります。

(3) 優先順位の判断が難しい

・どのタスクから手をつけるべきかわからなくなる
・緊急ではないが重要な作業を後回しにしてしまう
・目の前のことに気を取られ、大事な仕事を忘れる

やらなければならない仕事に取り掛からず、優先度が高くはないのに、目に留まったものから始めてしまうなど、やるべきタスクを優先できないことも珍しくありません。

また、集中力が続かず、会議中に上の空で重要事項を聞き逃してしまうなどの支障が出てしまうこともあります。

(4) マルチタスクが苦手

・複数の仕事を並行して進めるのが難しい
・一度にたくさんの指示を受けると混乱する
・一つの作業に集中していると、他のことを忘れてしまう

などの特徴もADHDの特性といえます。

マルチタスクが生まれるほど、仕事もミスに繋がりやすくなりますが、適切な環境づくりや対策を講じることで大幅にミスを減らすことができます。

ADHDの人向けの仕事ミス対策

前の項目では、ADHDの方によくある仕事のミスをご紹介しましたが、この項目では、仕事のミスを防ぐために効果的な対策を紹介します。

先ほどのよくあるミスに基づいて解決策を挙げていきます。

(1) うっかりミス対策

チェックリストの活用

作業の工程ごとのチェックリストを作成し、終わったら必ず1つずつチェックを入れて確認する習慣をつけていきましょう。

このように「やることリスト」を作って目に留まる位置に置いておけば、作業の抜け漏れを防ぐことが可能です。

「見える化」する

重要な予定やタスクは、カレンダーに書き出していきます。スマホのカレンダー機能を活用したり、手帳に書き写すのも手です。

その際、できたら1ヵ所だけでなく、目に留まる場所に複数貼り、さらに色分けや付箋を使って視覚的に管理すると、より効果が期待できます。

作業の間に一時停止時間を作る

書類などを作成した時は、完成後すぐに提出せず、一度見直す時間を確保するようにしましょう。

おすすめなのは、口に出して文章を読んでみることです。そうすることで、聴覚も活用して誤字や脱字に気付きやすくなります。

また、重要な書類の場合は、提出前に他の人にチェックしてもらうと、より安心できます。

(2) 期限管理対策

デジタルツールの活用

苦手な期限管理は、便利なデジタルツールを活用していきましょう。

例えば、Googleカレンダーやリマインダーを設定すれば、締め切りを忘れずに済みます。他にも、TodoistTrelloなどといったタスク管理アプリを活用して、仕事の進捗を随時把握しておけば締め切り前に慌てることもなくなります。

入力をする際は、スマホやスマートウォッチなどの音声入力でリマインドを設定するとその場ですぐに行えるので便利です。

「すぐやる」習慣をつける

急ぎでない仕事が来た場合、締め切りに余裕があるからと後回しにするのではなく、「すぐできることはすぐやる」と自分でルールを作るのも1つの手です。

おすすめなのは「5秒ルール」です。やるべきタスクが頭に浮かんだら5秒以内に作業に取り掛かるようにする方法です。

最初の一歩を踏み出すのが億劫になってしまうADHDの方は多く、手をつければそのまま進んでいける場合も多いので、まずは強制的に作業を開始できる状態にすると効率が上がります。

「5秒ルール」を取り入れてタスクを後回しせず、その場で片付けるようにすると、積み残しややり忘れが減っていくので、「やれるときにやる」を徹底していきましょう。

ポモドーロ・テクニックを活用してタスクをこなしていく

ADHDの方は集中力が途切れやすい傾向があるので、ポモドーロ・テクニックと呼ばれる25分作業をしたら5分休憩という行程を活用して集中力を維持する方法がおすすめです。

30分1セットとなるポモドーロ・テクニックを使いつつ、「午前中は○○、午後は△△」と時間帯ごとにタスクを決めていけば、集中力を保ったまま、その日に行う必要のあるタスクをこなすことができるでしょう。

(3) 優先順位の判断ミス対策

■タスクの重要度・緊急度マトリクスを作る

やらないといけない仕事がいくつか重なっていて、どれから手をつけたらいいか分からない場合は、仕事を「重要・緊急」「重要・非緊急」「緊急・非重要」「非緊急・非重要」に分けて分類していきます。

タスクの重要度を可視化できたら、「重要・緊急」に分類したものから順に進めていけばいいので迷わずに仕事を進めていくことができるので困らずに済みます。

「3つだけ」やるべきことを決める

やることがたくさんあると、タスクの量に圧倒されてうまく仕事を進められない場合は、1日の始めに、必ず達成すべき3つのタスクを決めるという方法もあります。

最重要事項を3つ決めて、その3つは勤務時間内にやることを徹底します。

それ以外の仕事は「できればやる」に分類しておけば、タスクを完了できたことで自己肯定感も上がっていきますし、プラスαで仕事が達成できたらやり甲斐も感じていけるでしょう。

(4) マルチタスク対策

ADHDの方はマルチタスクが苦手な傾向にありますが、それでも複数の仕事を並行して行わなければならない時も出てきます。

そういった場合は、

・一つの作業に集中できる環境を作る
・スマホの通知・PCの通知をオフにする
・ノイズキャンセルイヤホンをつけて外部の音を遮断する
・指示はメモに残す・録音する
・具体的な指示をメモや付箋に書いて渡してもらう
・メールやチャットで指示をもらうようにする

などの方法があります。

刺激となる情報が多いほど、注意散漫になってしまうので、自分のデスク周りに衝立をして視覚からの情報を制限したり、イヤホンを活用して聴覚をシャットダウンするのも効果的です。

タスクメモをデスクに貼るなどして、忘れてしまわないよう視覚でもチェックできるようにするのがおすすめですが、ADHDの方はワーキングメモリが少なくメモを取るのが苦手なケースも存在します。

苦手だと自覚がある場合、録音での音声メモを活用するか、具体的な指示をメモ書きしたものを渡してもらうようお願いするといいでしょう。

ADHDの特性を活かして仕事を効率化する

ADHDを持っていると働くのに不利益なのではないかと心配に感じることもあるでしょう。

しかし、ADHDの特性は決してマイナスに働くばかりではなく、むしろ以下のような強みを活かすことで、仕事の効率を高めることができます。

ルーチン化で仕事をスムーズに進める

何から手をつけるべきか悩んでしまうと、そこでストレスを感じたりエネルギーを使って疲れてしまいます。

そんな事態を避けるために、1日にやるべき仕事の流れをルーチン化し、迷わず仕事を進めていける環境を整えて無駄なエネルギーを使わないようにしましょう。

例えば「朝一番にメールをチェック→優先タスクに取り組む→午後は会議や調整業務」などと決めておけば、やるべきことに悩まさずにサクサクと業務を行っていくことができます。

向いている職種・環境を選ぶ

ADHDの特性を持つ方にとって、定時出勤・定時退社のような決まったリズムの仕事は苦手に感じることがあります。

一方で、クリエイティブな仕事や臨機応変な対応が求められる職種では、その特性を活かしやすい傾向があります。
過度なルーチンワークが負担になる場合は、自分の適性を考慮し、より働きやすい環境を求めて転職を検討するのも一つの方法です。

また、障害者雇用の制度を利用して配慮を受けながら働くことも可能です。

日本は障害者雇用促進法で、従業員数が40人以上の企業は最低1人の障害者を雇用しなければならないという決まりがあります。そのため大企業でも自分の特性に配慮してもらいながら働くチャンスもあるのです。

向いている仕事については「発達障がい(ASD/ADHD/LD)の方に向いている仕事は?」で解説していますのでご参考ください。

ADHDの人に向いている仕事のスタイル

ADHDの特性を活かせる仕事のやり方を選ぶことで、ストレスを減らし、生産性を向上させることができます。

どのようなスタイルが向いているのかを見ていきましょう。

(1) 短時間で成果が出る仕事

興味を持続することが難しい場合、短期間で成果が得られる仕事が向いています。

例えば、デザインやプログラミング、ライティングなどは、達成感を早く感じられるため、モチベーションを維持しやすい仕事です。

(2) 変化が多い仕事

ルーチンワークが苦手な場合、刺激が多く変化に富んだ仕事が適しています。

営業やイベント企画、ジャーナリズムなどの仕事は毎日違うタスクがあり、飽きにくくモチベーションを維持しやすいです。

(3) 明確な指示とルールがある職場

仕事の進め方が明確な環境では、迷わずに作業を進めることができます。

特にマニュアルやガイドラインが整っている職場では、ADHDの特性を活かしながら効率よく働くことができます。

まとめ

当記事でご紹介したように、ADHDの方でも、工夫次第で仕事のミスを減らし、効率的に働くことができます。

もう1度押さえておきたいポイントをまとめると、

・自分の特性を把握する
・苦手な部分をカバーするための対策を取る
・特性をカバーできる職種に就く

ということです。

苦手な部分があっても、自分に合った方法を見つければ快適に働くことも夢ではありません。
最初から完璧を求めず、少しずつ実践しながら、自分にとって最適な働き方を見つけていきましょう。

衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)

サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム

福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。

サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。

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