障がい者雇用で社内ニート化を防ぐための対策とは
- 公開日:
- 2025.04.22
- 最終更新日:
- 2025.05.28

障がい者雇用で障がい者を雇い入れたが、切り出せる業務がなく社内ニート化してしまった(あるいはしてしまいそう)と悩む方もいらっしゃるかと思います。
社内ニート化した社員を抱えることは、社員本人のモチベーションややりがいをそぐことになるのと同時に、企業側にとっても大きな負担となります。
また、周りの社員も「なぜあの人は仕事をしていないのに、給料が支払われているのか?」とストレスを感じるようになり、働く意欲が低下します。
ここではこのような状況に陥ることを避けるために、「雇い入れた障がい者が社内ニート化してしまう理由」と、その理由に紐づけた解決方法について解説していきます。
・障害者を雇用する準備
・募集の方法 / 応募が殺到する企業の特徴
・障害者を雇用する際の選考、面接のポイント
・入社後の定着率を向上させるポイント
・多くの企業がつまずいてしまう、「適性に応じた業務の切り出し」 「配属部門の負担増加」などへの対策法
開催日時
2025-06-06 (金) 11:00-11:45
2025-06-13 (金) 11:00-11:45
2025-06-18 (水) 11:00-11:45
おすすめの対象の方
- 障がい者雇用に関わる担当者
- 障がい者雇用がうまくいくポイントを知りたい方
- 業務切り出しや定着率の向上などの対策方法に関心がある方
目次
雇い入れた障がい者が社内ニート化してしまう理由は?
雇い入れた障がい者の方が社内ニート化してしまう理由としては以下のようなものがあります。
・割り振れる仕事がない
・周囲の無理解によるもの
・特性とマッチしていない
・ただの「数合わせ」になっている
一つずつ見ていきましょう。
割り振れる仕事がない
一番の原因としては割り振れる仕事がない、つまり業務の切り出しができないことにあります。
障がいをきちんと理解していない場合、「障がい者を雇用したものの、割り振れる仕事がない」となることがよくあります。
「対人関係の仕事であるので、精神や知的に障がいを抱えている人に任せることが難しい」と上司が判断してしまったり、逆に「障がいを抱えているので大変だろうから、あまり負担をかけすぎてはいけない」と配慮しすぎたりしてしまうことが、このような事態を引き起こす原因となっています。
この「割り振れる仕事がない」といった悩みは、初めて障がい者を雇い入れる企業に特に起こりがちなものです。
周囲の無理解によるもの
また、理由の一つとして、「周囲の無理解によるもの」があります。
たとえば、精神に障がいを抱えていてコミュニケーションが難しい人に対して「コミュニケーションが取れないのは本人のやる気の問題だ」と考える人がいたり、車いすの人を雇い入れているにも関わらず棚の高い位置に必要な資料が片付けられていたり……といったものです。
また、教育制度が不十分で、障がい者に対してもそれ以外の人に対しても十分な働きかけができていないというケースも見受けられます。
特性とマッチしていない
「障がい者」と一口に言っても、その特性や得意分野・不得意分野は多種多様です。そうであるにも関わらず、「障がいを抱える人にはこの仕事を」として一律で同じ仕事を渡そうとすると、モチベーションや効率の低下を招きます。
例として、「システム構築の専門家として雇い入れたにも関わらず、実際には単純作業のみを割り振っている」「文章を読み込むことはまったく問題ないが人との会話や対面が難しいという特性を持っている人に対して、即時対応・対人必須の業務(お茶出しなどを含む)を任せている」などの場合です。
また、これは障がいを持つ人に限ったことではありませんが、「そもそもその業務を行うにはスキルが足りない」「マニュアルや伝達がきちんとしていない状況下で、この仕事ならばできるだろうと考えて仕事をさせている」という状況の場合は、仕事をこなせず、社内ニート化してしまう可能性が高くなります。
ただの「数合わせ」になっている
障害者雇用促進法および法定雇用率の設定は、本来は「障がいを抱える人であっても等しく活躍できる世界」を目指すために作られたものです。
しかし、しばしば、「法定雇用率を満たさなかったら障害者雇用納付金を徴収されたり、企業名が公表されたりするデメリットがあるから、ただ数合わせのために障がい者を雇用している」という企業も見られます。
このような、数合わせのためだけに障がいを抱える人を雇った場合、周囲が無理解であるうえに働きかける積極性もなく、「ただ座っていてくれればいい」という状況になりがちです。これは、企業にとっても障がい者にとってもマイナスになる社内ニート化を加速させるもっとも大きな要因のうちのひとつです。
障がい者雇用で社内ニート化を防ぐための対策
上記では、障がい者雇用で雇い入れた従業員が社内ニート化してしまう原因について取り上げました。
ここからはそれぞれの原因に対して、「ではどうすればこのような事態になることを避けられるか」の具体的な対策について解説していきます。
1つの仕事を細かく分けて業務切り出しをおこなう
業務の切り出しができれば、障がい者の方の社内ニート化の大きな対策となります。
私たちが「1つの仕事」と認識していることであっても、注意深くその仕事を見ていけば、実はその「1つの仕事」は「複数の仕事」から成り立っていることが分かります。
たとえば、リピーターに対して営業メールを出す仕事も、
「リピーターのデータをリスト化する」
「自社の商品ラインアップのなかから、リピーターが買ってくれそうな商品を選び出す」
「リピーターに出す営業メールの文面を考える」
「宛先を印刷または手書きする、配送手続きをする」
などの無数の小さい仕事から成り立っています。
このように「1つの仕事」を細かく洗い出すことで、「単純なリスト化は頼める」「郵便局へハガキを持っていく仕事を頼める」などのように、任せられる仕事を探せます。
事前研修を実施する
社内ニート化の原因である「周囲の無理解」は、事前研修によってある程度対策ができます。
たとえば、事前に「今度入ってくる人がどのような障がいを持っていて、どのような接し方をするべきか」「障がい者雇用の意味と考え方」などを共有するのです。このときには、「障がいを事前に理解しようと努めることは、一緒に働く人にとっても有益である」という点からもレクチャーするようにしましょう。
また、障がい者雇用の事前研修にいうと「周りの人が理解をするために勉強を」という点のみに注視してしまいがちですが、特に上層部は「周りの人」に寄り添う研修機会や姿勢を持つことも大切です。
障がいを抱える人をサポートする周りの人の本音やストレスをチェックして、彼らに過度のストレスがかからないようにします。
特性を理解し、キャリアアップの機会を作る
その人それぞれの特性に合ったキャリアアップ・スキルアップの機会を作ることも、社内ニート化を防ぐために非常に有用です。
たとえばその業務に役立てられる資格試験の案内を行ったり、その取得に報奨金を出したりするなどです。これらの働きかけは、積極的に仕事に取り組むモチベーションともなりますし、企業の業績アップにも繋がります。
またこの働きかけは、「企業側だけが行うもの」であってはなりません。障がい者自身が自分の特性を理解し、自分の能力を伸ばそうとする姿勢を持ってもらうことも重要です。
そのためには、あえて一つひとつのハードルを低くして、「ハードルを越えられた」「キャリアアップ・スキルアップができた」という実感を味わわせるようにするのが有効です。
まとめ
これまで「障がい者雇用と社内ニート化」について解説をしてきました。
今回の内容をまとめると以下の通りです。
・障がい者を雇用しても、十分に環境が整っていなければ社内ニート化してしまう可能性がある
・社内ニート化することは、障がい者自身にとっても、企業にとってもデメリットが非常に大きい
・社内ニート化を防ぐためには、様々な対策を実施する必要がある
障がいを抱える人の雇用には、たしかに難しさもあります。ただしっかりと対策をとることで、彼ら・彼女らの社内ニート化を防ぎ、自社にとって真に戦力たりえる人材として活躍してもらえるようになります。
衛藤 美穂(心理カウンセラー・夫婦カウンセラー)
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
福岡県出身。 アメリカの大学で心理学を学び、仕事の傍ら、自己啓発やカウンセリングのスキルアップを目指し、常に勉強すること10年以上。家族関係専門。
サンクスラボ入社前は不動産、メーカー、教育関係の仕事を経験。約2,500社以上の管理職、取締役に対して提案営業、問題解決等を行う。
