農園型障がい者雇用支援サービスとは?メリット、注意点を徹底解説
- 公開日:
- 2026.04.19
- 最終更新日:
- 2026.04.24
「農園型障がい者雇用支援」とは、企業が外部の農園を活用して障がい者を雇用するための仕組みです。職務の性質上、社内で障がい者向けの仕事を創出することが難しい企業にとって、有効な選択肢のひとつとして注目されています。
今回は、農園型障がい者雇用支援サービスの概要から、企業・障がい者それぞれにとってのメリット、導入の流れ、活用できる補助金・助成金まで幅広く解説します。

目次
農園型障がい者雇用支援サービスとは?
農園型障がい者雇用支援サービスは、外部法人から農園や農地を借り、障がい者雇用枠で働く方に仕事として農作業を行ってもらうためのサービスです。
農園型障がい者雇用支援サービスを運営している会社が、障がい者の紹介から仕事の支援、さらに収穫した農作物の出荷まで行います。そのため、安定的な就労環境と充実した業務内容を提供できます。
従来のオフィス環境での雇用が難しいケースでも、自然豊かな農園という環境で、それぞれの特性に応じた作業を行うことで、障がい者の方々の能力を最大限に活かすことができます。
また、企業にとっても法定雇用率の達成と、社会貢献活動の両立が可能となる仕組みです。
近年広まる「農福連携」の取り組み
農園型障がい者雇用支援サービスは、近年全国各地で確実に広がりを見せている「農福連携」の取り組みの一形態として位置づけられます。
農福連携とは、障がい者などが農業分野で活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みです。
農林水産省や厚生労働省も積極的に推進しており、農業と福祉の双方にメリットをもたらす持続可能な仕組みとして期待が高まっています。
農福連携の効果に関する調査データ
農福連携がもたらす効果は、データにも明確に表れています。全国で農福連携に取り組む福祉サービス事業所を対象とした調査(一般社団法人日本基金「農福連携に関するアンケート調査結果」2023年)によると、身体面・健康面では80.5%の事業所が「体力が付き長い時間働けるようになった」と回答しました。
精神面・情緒面においても59.1%の事業所が「物事に取り組む意欲が高まった」と回答しており、農作業が利用者の心身両面にわたってポジティブな変化をもたらすことが示されています。
さらに生活面・仕事への取り組み姿勢においても、「生活のリズムが改善した」「コミュニケーション力が高まった」「あいさつができるようになった」「複数の作業に取り組めるようになった」といった効果をあげる事業者が4割以上にのぼっており、農業という営みが、日常生活全般の自立や社会性の育みにも寄与していることがうかがえます。
参考:⼀般社団法⼈⽇本基⾦「農福連携に関するアンケート調査結果(2023年)」

農園型障がい者雇用支援サービスが注目される背景
農園型障がい者雇用支援サービスが注目される背景には、企業の障がい者雇用に対する課題解決へのニーズの高まりがあります。

2024年4月から法定雇用率が2.5%に引き上げられ、さらに2026年7月には2.7%への段階的な引き上げが予定されている中、多くの企業が障がい者雇用の拡大に向けた新たな方策を模索しています。
従来のオフィスワークや製造現場での雇用では、業務の切り出しや職場環境の整備、専門的な支援体制の構築などに課題を抱える企業も少なくありません。
こうした状況下で、農園型サービスは、障がい者の特性に応じた多様な業務を提供でき、かつ専門的な支援体制が整っているという点で、企業にとって魅力的な選択肢です。

農園型障がい者雇用支援サービスを利用する企業側のメリット
農園型障がい者雇用支援サービスが企業にもたらす具体的なメリットは、以下の通りです。
・定着率が比較的高い
・地域貢献につながる
・環境整備にかかる費用・手間を削減できる
それぞれ詳しく紹介します。
定着率が比較的高い
農園型サービスでは、専門スタッフが日々の作業管理や体調確認を行うため、障がい者一人ひとりの特性に応じた細やかなサポートが可能です。作業環境や業務内容も障がい者雇用に特化して設計されており、安定して働き続けられる環境が整っています。
その結果、従来の自社雇用と比較して定着率が高く、安定した雇用により法定雇用率の継続的な達成が見込めます。長期的に働き続けられる環境が整っているため、企業にとって中長期的な人事計画が立てやすくなります。
地域貢献につながる
農園型サービスは、地域に根ざした農業を通じて障がいのある方々の就労機会を創出することで、実質的な地域貢献を実現します。
収穫された農作物を地域の福祉施設や子ども食堂に提供したり、地元の直売所で販売したりすることで、地域経済の活性化にも寄与します。
さらに、地域住民が農園での収穫体験や見学会などの活動を通じて障がいのある方々と交流する機会が増えれば、障がい者への理解が深まり、共生社会の実現に向けた大切なきっかけとなります。
企業としても、地域に開かれた農園運営を通じて、CSR活動の一環として地域社会との結びつきを強化できるメリットがあります。
環境整備にかかる費用・手間を削減できる
企業が独自に農園を開設する場合、農地探しや農業委員会との調整、土地の賃貸契約、ビニールハウスなどの施設建設など、膨大な初期投資と手間が必要です。特にビニールハウスの建設には数千万円規模の費用がかかることも珍しくありません。
農園型サービスを利用すれば、これらの環境整備はすべてサービス提供事業者が担うため、初期投資を大幅に削減できます。
また、農業技術指導員の確保や育成、農機具の購入・メンテナンス、作物の栽培計画の立案なども不要となり、企業は本業に集中しながら障がい者雇用を推進できる体制を構築できるのです。

農園型障がい者雇用支援サービスを利用する障がい者側のメリット
農園型障がい者雇用支援サービスの、障がい者の方々にとっての具体的なメリットは以下の通りです。
・ストレスの少ない環境
・自分のペースで働きやすい
・働きがいを感じやすい
それぞれ詳しく解説します。
ストレスの少ない環境
農園での作業は、オフィスでの事務作業のような複数の業務を同時進行するマルチタスクが少なく、一つひとつの作業に集中できる環境が整っています。
さらに開放的な屋外空間で、土や植物に触れながら作業することで、閉鎖的な室内環境で感じやすい圧迫感から解放され、心身への負担が大幅に軽減されます。
対人関係のストレスも比較的少なく、植物を相手にした作業が中心となるため、コミュニケーションに不安を抱える方でも安心して働くことが可能です。
自分のペースで働きやすい
農作業は明確な手順で進められる作業が多いため、知的障がいや発達障がいなど、障がい特性を持つ方が、個々の能力や特性を活かしながら働くことができます。
作業の進捗も個人差を認める柔軟な体制が整っており、その日の体調や気分に応じて作業量を調整することも可能です。
働きがいを感じやすい
農園での仕事は、種から育てた野菜が成長し、収穫という明確な成果として目に見える形で現れるため、強い達成感と充実感を得ることができます。
自分が育てた作物が実際に収穫され、商品として出荷される過程を体験することで、仕事への責任感と誇りが自然と芽生えます。
さらに、生産した野菜や花を企業のノベルティギフトとして活用したり、社員食堂で提供したりすることで、障がい者の方々も企業の一員として重要な役割を担っているという実感を持ちやすくなります。

【当事者の声】農園型障がい者雇用支援サービスに期待すること・不安なこと
農園型障がい者雇用支援サービスの導入を検討する際は、実際に障がいのある方がどのような印象を持っているかも参考になります。そこで、障がいのある方68名を対象に実施した調査結果を紹介します。あくまで回答者の傾向を示す参考値ですが、サービスを検討する際の参考にしてください。
【調査概要】
調査方法:Webアンケート
調査期間:2026年3月16日〜2026年3月27日
調査対象:障がいのある方
有効回答数:68名
期待するのは「自分のペースで働けること」
■農園型障がい者雇用支援サービスを利用するとしたら、どのような点に最も期待しますか?
自分のペースや体調に合わせて働けること:32名 (47.1%)
ストレスの少ない環境で働けること:18名 (26.5%)
作物を育てることで達成感や働きがいを得られること:9名 (13.2%)
専門スタッフのサポートを受けられること:9名 (13.2%)
農園型障がい者雇用支援サービスに期待することとして最も多かったのは、「自分のペースや体調に合わせて働けること」で、約5割の方が選択しています。次いで「ストレスの少ない環境で働けること」が約3割という結果でした。
農園型の特徴である就労環境の柔軟さは、回答者が重視するポイントと重なる部分が多いといえます。
不安なことの上位は「気候」と「体力」
■農園で働くことを考えた場合、どのようなことに不安や難しさを感じますか?(複数選択可)
夏の暑さや冬の寒さなど、気候への対応:46名 (67.6%)
体力的に続けられるか不安:44名 (64.7%)
通勤のしやすさ:22名 (32.4%)
他の利用者やスタッフとのコミュニケーション:22名 (32.4%)
虫や土に触れることへの抵抗感:17名 (25.0%)
特に不安はない:4名 (5.9%)
農園で働くことへの不安としては、「夏の暑さや冬の寒さなど気候への対応」が約7割、「体力的に続けられるか」が約6割と、身体的な負担を心配する声が目立ちました。「通勤のしやすさ」や「他の利用者・スタッフとのコミュニケーション」もそれぞれ約3割の方が挙げています。
自由記述では「農業未経験でも務まるか不安」「スキルが身に付くかどうか」といった声もあり、就労を継続する上での成長機会を気にかける方も一定数いると考えられます。
利用を「検討したい」は約4割
■農園型障がい者雇用について、今後、利用を検討したいと思いますか。
やや検討したい:20名 (29.4%)
どちらともいえない:15名 (22.1%)
あまり検討しない:15名 (22.1%)
検討しない:11名 (16.2%)
ぜひ検討したい:7名 (10.3%)
今後の利用意向については、「ぜひ検討したい」「やや検討したい」を合わせると約4割の方が前向きな回答をしています。一方で慎重・否定的な回答も約4割おり、関心の度合いには個人差がある状況です。
農園型への関心を持ちつつも、体力面や環境面での不安がハードルになっているケースも少なくないと考えられます。受け入れ企業や支援事業者としては、こうした不安に対して事前の情報提供や見学機会を設けることが、ミスマッチの防止につながる可能性があります。

農園型障がい者雇用支援サービスを導入する流れ
農園型障がい者雇用支援サービスを導入するまでの基本的な流れは、以下の通りです。
1. 農園型障がい者雇用支援サービスを実施している業者をピックアップする
2. 各業者の実績を確認して、自社に合っているか確かめる
3. 資料を請求して複数の業者を比較検討する
4. 契約する業者を決定して導入する
5. 雇用している障がい者からヒアリングして、就業の状態を確認する
6. 必要ならば、業者に改善を求める
農園型障がい者雇用支援サービスを提供しているところは複数あり、それぞれサービスが異なります。自社の体制や求めているサポートが得られるのかしっかりと比較検討をして導入を決めるのが良いでしょう。
また、導入して終わりではなく、定期的に雇用している障がい者にヒアリングを行い、問題なく働けているか確認するようにしましょう。

農福連携の推進に活用できる補助金・助成金

農福連携を推進するにあたって活用できる、さまざまな補助金・助成金制度について解説します。
障害者作業施設設置等助成金
障害者作業施設設置等助成金は、障がい者が働きやすい環境を整備するための重要な支援制度です。
障がい者を常用労働者として雇用している、または新たに雇い入れる事業主が対象となります。
障がいを持つ方々が作業を円滑に行えるよう、施設の設置や改造、設備の整備を行う際に活用できる制度で、賃借による設置も含まれます。
支給率は対象費用の3分の2で、農業現場において障がい者が安全かつ効率的に作業できる環境づくりを経済的に支援します。
雇用就農資金
雇用就農資金は、若い世代の障がい者の農業分野への参入を促進する画期的な制度です。
49歳以下の就農を希望する障がい者を新たに雇用する農業法人などに対して、新規雇用就農者1名あたり年間最大75万円を最長4年間にわたって助成する仕組みです。
この資金により、農業法人は障がい者の雇用に伴う初期の負担を軽減でき、障がい者の方にとっても農業技術を習得しながら安定した収入を得る機会が提供されます。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、さまざまな理由で就職が困難な方の継続雇用を支援する包括的な制度です。
障がい者雇用では、「特定就職困難者コース」と「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の2つの助成金が検討できます。
特定就職困難者コース
特定就職困難者コースでは、ハローワークなどの紹介により障がい者を継続して雇用する事業主に対して助成金が支給されます。
支給額は障がいの程度や企業規模によって異なり、身体・知的障がい者の場合は中小企業で120万円、重度障がい者などの場合は240万円です。
農業分野においても、障がい者の特性に応じた業務配置を行いながら、長期的な雇用関係を構築できます。
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは、発達障がい者や難病患者の雇用を促進するための専門的な支援制度です。中小企業が発達障がい者などを雇用する場合、2年間で最大120万円の助成を受けることができます。
農作業は反復作業や細かな作業が多く、発達障がい者の特性を活かせる業務も多いため、適切なマッチングにより双方にメリットのある雇用が実現できます。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、障がい者雇用への不安を解消し、本格的な雇用につなげる橋渡し的な制度です。
障害者トライアルコース
原則3ヵ月間の試行雇用期間を設け、その間の雇用に対して助成金が支給されます。
農業分野では季節による作業内容の変化があるため、この期間を活用して障がい者の適性や能力を見極めることができます。
障害者短時間トライアルコース
精神障がい者などを対象に、週10時間以上20時間未満から開始し、段階的に労働時間を延ばしていく制度です。3ヵ月以上12ヵ月以内の期間で、無理なく就労時間を増やしていくことができます。

農園型障がい者雇用支援サービスを導入する際の注意点
2024年4月より、雇用が必要な障がい者の方の人数が増え、今後さらに法定雇用率は引き上げられます。農園型障がい者雇用支援サービスの受け入れ体制にも限りがあるため、企業としても受け入れ体制の整備を進めていくことが重要です。
農園型障がい者雇用支援サービスの導入と並行して、社内に障がい者を直接受け入れる体制も少しずつ構築していきましょう。

まとめ
今回は、農園型障がい者雇用支援サービスの概要や注目されている理由などを紹介しました。
障がいにはさまざまな種類があるため、マニュアルを作ってその通りに指導すればうまくいくとは限りません。また、障がい者の中には農業のようなマイペースで行う作業が最も向いているケースもあるでしょう。
ただし、障がい者雇用の枠をすべて農業に割り当てるのではなく、社内での受け入れ体制も並行して整備していくことが重要です。

記事監修者:衛藤 美穂
サンクスラボ株式会社 サテラボ事業部 カスタマーサクセスチーム
アメリカの大学で心理学を学んだ後、不動産、メーカー、教育と多岐にわたる業界を経験。 前職までに約2,500社以上の管理職・取締役に対し、提案営業やコンサルティングを通じて、現場の複雑な問題解決を支援してきた「企業課題解決」のプロフェッショナルです。
現在はサンクスラボにて、その豊富なビジネス経験と、10年以上にわたり研鑽を積んできたカウンセリングスキルを融合。 「企業の論理」と「障がい者従業員の心理」の双方を深く理解する稀有な存在として、障がい者雇用のサポートとセミナー(登壇歴2年)に従事しています。
■保有資格
MFCA認定プロフェッショナルコーチ:2023年取得
夫婦カウンセラー:2012年取得