ロクイチ報告とは?障害者雇用状況報告書の提出期限と注意点について解説
- 公開日:
- 2025.03.06
- 最終更新日:
- 2025.03.07

ロクイチ報告とは、障害者や高齢者を雇用している事業主が毎年6月1日に雇用に関する状況をハローワークに報告するために作成する報告書です。
正式名称を「高年齢者雇用状況等報告及び障害者雇用状況報告」といい、一定数以上の常用労働者を雇用している事業所に提出が求められます。
「ロクイチ報告を提出するように報告書が郵送されてきたが、作成の方法がわからない」と悩んでいる方もいるでしょう。本記事では、ロクイチ報告の概要や必要性と作成の方法を解説します。
目次
ロクイチ報告とは
ロクイチ報告とは、毎年6月1日時点の自社における「高年齢者および障がい者の雇用に関する状況」を報告書として作成し、本社がある地域を管轄しているハローワークに報告する作業です。6月1日現在の状況を報告するので、ロクイチ報告と呼ばれています。
作成された報告書は「障害者雇用状況の集計結果」としてまとめられ、全国の障害者雇用率として公開されます。また、行政は各企業がどのくらい高齢者や障害者を雇用しているかも把握することも報告書提出の目的です。
ロクイチ報告では、以下のような会社に「高年齢者雇用状況報告書」および「障害者雇用状況報告書」の提出が求められます。
- 高年齢者雇用状況報告書:常用労働者が31人以上の事業所
- 障害者雇用状況報告書:常用労働者数が43.5人以上の事業所
ただし、東京都のように常用労働者が20人の事業所に高年齢者雇用状況報告書を提出するように送付している自治体もあります。事業所を構えている自治体のルールを確認しておきましょう。労働局のWebサイトをチェックするのが確実です。
報告書は郵送で送られてきます。自治体によっては雇用している障害者や高齢者がいなくても、送付されるところもあります。
高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出手順
ここでは、高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出方法や手順を説明します。
高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出を初めて求められた事業所にもわかりやすく解説していくので、参考にしてください。
提出方法と提出期限
高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出先と提出方法、締切は以下のとおりです。
提出先:事業所の本拠地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)
提出方法:郵送・窓口への提出・電子申請
提出期限:7月15日
なお、高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出が求められる企業には、ハローワークから報告書用紙が郵送されてきます。記入要領が同封されているので、確認したうえで記入してください。
また、ユーザーIDとパスワードも同封されているので、電子申請の方は利用しましょう。提出書を紛失、破損した場合は厚生労働省のWebサイトからダウンロードも可能です。
作成前に確認すること
高年齢者・障害者雇用状況報告書を作成する前に、6月1日時点における以下の人数を把握してください。
- 常用雇用労働者数
- 定年到達者の人数
- 45歳以上の高年齢者のうち離職者の人数
- 障害者の人数
常用雇用労働者とは、週20時間以上勤務している労働者で雇用期間が定められていない者です。雇用形態は問われません。アルバイトでもパートタイムでも週20時間以上勤務しており、「雇用期間」がさだめられていない、もしくは見込みを含めて1年以上の期間雇用が続いている者は常用労働者です。
また、派遣社員のうち「常用型派遣」は常用雇用労働者にカウントされます。「登録型派遣」の場合は、派遣元が雇用者になるので含まれません。つまり、登録型派遣社員が10名、正社員が3名ならば、常用雇用労働者は3名となります。
さらに就業規定によって、65歳以上でも働ける仕組みが整備されている会社は、高年齢雇用状況を確認してください。慣例や実態は含まれません。例えば、「××さんは65歳で定年になったが、我が社は慣例で10年前から70歳まで大部分の方が働いている」といった場合は、含まれないので注意してください。
逆に「今まで誰も利用したことはないが、就業規則では、65歳以上でも働ける規則が定められている」場合は確認のうえ、記入が必要です。
雇用障害者数のカウント方法
障害者を常用雇用している企業は、以下の方法でカウントを行います。
- 週30時間以上勤務しており見込みを含め1年以上雇用が見込まれている労働者:1
- 週20時間以上30時間未満の勤務している労働者:0.5 (時短労働者)
- 週10時間以上20時間未満の勤務をしている労働者(条件付き):0.5 (時短労働者)
2024年4月より週10時間以上20時間未満の勤務をしている常用雇用労働者のうち、重度の身体及び知的障害者、精神障碍者も0.5としてカウントできるようになりました。
また、重度身体及び知的障害者は、カウント数が2倍になります。
そのため、週30時間以上勤務している障害者の常時雇用労働者が1名、時短労働者が2名いる場合、カウントは2となります。また、時短労働者の重度の身体及び知的障害者が2名雇用されている場合は、カウントは2となります。
このほか、障害者としてカウントされるには「障害者手帳」を所持していることが条件です。障害の種類や程度によっては、主治医から「障害者手帳を保有する条件を満たさない」と判断され場合は、障害者としてカウントされません。
障害者雇用状況報告書を作成する前に、6月1日時点で障害者雇用枠で雇用をしている労働者に障害者手帳を保有しているか確認してください。「障害者手帳を返却していることを知らなかった」では許されないケースもあります。
提出しない場合のペナルティ
高年齢者・障害者雇用状況報告書を提出しない、もしくは提出したが虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。また、常用従業員数43.5名以上の企業は障害者雇用促進法により、法定雇用率である2.5%の障害者の雇用義務があります。
そのため、障害者の雇用義務が発生しているが障害者を雇用していない企業は、0人として提出しなければなりません。法定雇用率が達成できないうえ、一定の基準を超えると、ハローワークから障がい者を雇い入れるための「雇入れ計画作成命令」の提出が命じられます。また、雇用義務がある障害者1名あたり、5万円の「障害者雇用納付金」が発生します。
なお、高齢者雇用に関しては「努力義務」は定められていますが、高齢者を雇用しなかったからといってペナルティは発生しません。ただし、報告書は期日までに提出してください。
特に、「今年初めて65歳以上の労働者を雇用した」といった事業所は昨年とは書き方が異なるので、注意しましょう。
高年齢者・障害者雇用状況報告書を書く際の注意点
最後に、高年齢者・障害者雇用状況報告書を作成する際の注意点を紹介します。はじめて報告書を作成する事業所の担当者は参考にしてください。記入を間違えたからといってペナルティは発生しませんが、書き直しの手間がかかります。
高齢者雇用状況報告書を書く際の注意点
前述したように高齢者雇用状況報告書を作成する際は、就業規則を確認してください。歴史ある企業の場合、就業規則が作られた時代の定年が60歳だったというケースもあります。
就業規則で定年が60歳と定められている場合は、速やかに改善し、定年の改定・廃止を予定している年月を報告書に記入してください。近年は定年を定めない事業所も増えています。
また、「継続雇用制度」とは従業員が定年に達した後も希望すれば継続して働ける制度、「創業支援措置」とは、業務委託として従業員が働きたい場合に利用できる制度です。
例えば、定年した従業員を継続して雇用するのは難しいが、特定の仕事は依頼したいといった場合に実施できます。なお、「顧問契約」は「業務委託契約」とは異なるので、混同しないように注意してください。
このほか、過去1年間の離職者を記入する際は総数のほか、女性の人数を記入する欄があるので、忘れずに記入してください。
障害者雇用状況等報告書を書く際の注意点
障害者雇用状況等報告書を作成する場合は、前述したようにカウントの仕方に注意してください。特に、週10時間以上20時間未満の勤務をしている労働者のうち、法定雇用率にカウントされるのは、重度の身体および知的障害者と、精神障碍者だけです。軽度の身体・知的障害者はカウントされません。
また、障害者雇用状況等報告書を作成する際、事業所側は人数以外にも人数、障害種別、障害程度を把握しなければなりません。障害に関する情報はデリケートかつ個人情報です。取得に際しては利用目的を明確にするだけでなく、本人の同意が必要になります。
例えば、作成中の書類を誰でも見れるところに置いておかない、電子版で作成して保存する場合は、パソコンのセキュリティを厳重にするなどの対処が必要です。
特に、障害者手帳に関する情報は障害者本人も報告しにくいケースがあります。報告を求める際は第三者の目がないところで聞き取りを行う、文章で提出を求めるなど工夫しましょう。
まとめ
今回は、通称「ロクイチ報告」と呼ばれる高年齢者・障害者雇用状況報告書の概要や提出が求められている事業所の条件、作成方法などを紹介しました。
基本的な作成方法は書類が送られてくる際に添付されています。また、社会保険労務士にもサポートを依頼できます。
毎年報告が必要なので、担当者にとっては面倒な業務かもしれません。しかし、高年齢者・障害者雇用状況報告書を作成することにより、就業規則や雇用状況の見直しにもつながります。
特に、就業規則に関しては「作っただけでそのまま」といった事業所も多いでしょう。また、障害者を法律通りに雇用していれば、報奨金の対象にもなります。
この記事を書いた人
サンクスラボ編集部
サンクスラボ株式会社が運営するメディアの編集部 。 障がい者雇用にかかわる情報を日々お届けします。
